定年間近の公務員が民間未経験から起業準備を始めるには、何から手をつければいい?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

地方公務員で、来年度に定年を迎えます。親の介護も重なって時間は限られていますが、再雇用だけでなく、自分で何か小さく始めたい気持ちがあります。

ただ、長く役所勤めだったので民間の経験がなく、何から始めればいいのか見当もつきません。どこから手をつければいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

総務省の労働力調査では、65歳以上の就業者数は年々増え続け、近年は過去最多を更新しています。定年後も自分の形で働く人は、もう特別な存在ではありません。

この数字が示すのは、定年が「終わり」ではなく「働き方の切り替え点」になっているという現実です。問題は、その切り替えをどう設計するかにあります。

「一気に始める人」と「小さく試す人」の違い

同じ定年前でも、退職後にいきなり店や事務所を構える人と、在職中から小さく試しておく人では、その後の安定感がまるで違います。

  • 退職金を元手に、いきなり大きく始める
  • 民間経験がないまま、設備や店舗から入る
  • 収入の柱が一本もないまま見切り発車する

一方で、在職のうちに小さく試しておくと、失敗しても痛手が小さく、手応えだけを持って定年を迎えられます。

  • 今ある経験を、お金をかけずに試す
  • 反応を見ながら、少しずつ形を整える
  • 定年後に本格化させる土台を先に作る
公務員の経験は「ノウハウ」と「場」で活きる

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に、小さな売り買いを物・サービス・ノウハウ・場や機会の4タイプに分ける考え方が出てきます。役所で培った経験は、このうち「ノウハウ」と「場や機会」で特に活きます。補助金や許認可の調べ方、住民向けの分かりやすい説明、地域の人をつなぐ段取りは、民間では意外と希少な力です。

  • 役所で得意だった手続きや調整を一つ挙げる
  • それを必要としそうな小さな事業者を思い浮かべる
  • 無料か低額で、まず一人に手伝いを申し出る

市役所で30年以上、補助金の窓口を担当してきたFさん(50代後半)も、介護と両立しながら何ができるか悩んでいました。自己流で資格取得を考えた時期もありましたが、起業18フォーラムで「経験はそのまま使える」と気づきます。知人の小さな農家に補助金申請のサポートを始めます。口コミで広がって、18か月後には複数の事業者を支える月12万円の仕事に育ちました。

Fさんの強みは、特別な資格ではありませんでした。長年の窓口業務で自然に身についた「制度を分かりやすく説明する力」と「人と人をつなぐ段取り」です。役所での経験を「つぶしが利かない」と思い込む人は多いのですが、外の世界から見れば、それはむしろ希少な専門性です。

大切なのは、定年というゴールを「終わり」ではなく「切り替え」として準備することです。再雇用を選ぶ場合でも、小さな試みを一つ持っておくと、暮らしの選択肢が広がります。介護で時間が限られていても、週に一度、できる範囲から始めれば十分です。

時間が限られていても、できることから一つずつで大丈夫です。

まず、役所の仕事で「これは得意だった」と思える業務を、一つだけ書き出してみてください。

民間経験がないことは、弱みではありません。役所でしか積めない経験は、外から見れば立派な専門性です。その一つを、今週のうちに身近な誰かに話してみてください。

話してみる相手は、地域の小さな事業者や知人で十分です。制度を分かりやすく伝える力が、定年後の小さな仕事の種になります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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