トリマーが起業するとき最初に決めること|自宅サロンvsテナントの選び方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「いつか自分のサロンを持ちたい」。そう思いながら、勤務先のペットサロンで何年もトリミングを続けているトリマーさんは少なくありません。技術への自信はあるのに、「経営」「集客」「お金の話」になると、急に足が止まってしまいます。

その感覚はごく自然なものです。技術職としてのトレーニングを受けてきた以上、経営を誰かに教わる機会はほとんどなかったはずですから。

この記事では、トリマーさんが自分のサロンを起業準備として動かし始めるための考え方と手順を整理していきます。

ポイント トリマーの仕事経験がビジネスになる理由

大手チェーンが持てない信頼構築力が個人サロンの武器

トリマー

矢野経済研究所が発表した2024年度の国内ペット関連総市場規模は前年度比102.6%で、1兆9,108億円まで拡大しています。ペットを家族の一員として扱う「ペットの家族化」が日本でも加速し、トリミング市場への需要は着実に伸びています。

こうした市場の中で、トリマーさんが個人で起業するときに持ち込める強みは「技術力」だけではありません。

  • 犬・猫の毛質・体型・気性を瞬時に読む観察眼
  • 不安がりな動物を落ち着かせる「場の設定力」
  • 飼い主の言葉にない要望を汲み取るコミュニケーション力
  • 皮膚や毛並みの状態変化に気づく健康管理の目

飼い主が個人サロンに求めるのは「カットが上手い人」よりも「うちの子のことをわかってくれる人」です。その「わかってくれる感」を積み重ねる力こそ、大手チェーンには真似できない個人店の本質的な差別化要因です。

ポイント 起業準備を動かすステップ(会社員トリマー向け)

会社員トリマーが起業前に育てる知・人・金の力

トリマー

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』に「知・人・金の3チカラ」という考え方があります。起業準備を「知識・スキル」「人脈・信頼」「資金」の3つに分けて同時に育てていくというものです。トリマーさんの起業準備は、この3つが次のように当てはまります。

「知」:技術の外にある知識を補う

トリミング技術そのものはすでに持っています。補うべきは「経営の知識」です。

  • 第1種動物取扱業の登録手続きと要件の確認
  • 料金設定とコスト計算(材料費・光熱費・機材の減価償却)
  • 予約管理ツールの選定(AirリザーブやTimeTreeなど)
  • SNS発信の基礎(Instagramや動画プラットフォームの活用)

特に第1種動物取扱業の登録は、トリミングサロンの開業に法律上必要な手続きです。勤務先を退職する前から要件(半年以上の実務経験など)を確認しておくと、退職後に慌てずに済みます。

「人」:顧客候補を勤務中から育てる

個人サロンが最初につまずくのは集客です。勤務先での接客が許す範囲で、知人・友人のペットのトリミングをモニターとして引き受けたり、Instagramで施術の様子を発信したりすることで、開業前から顧客候補を積み上げられます。

開業前に「知人10人に起業準備の話をしてみる」ところから始めてください。口コミで広がる最初の指名客は、ほぼ必ずここから生まれます。

「金」:自宅サロンかテナントかで必要資金が変わる

自宅サロンであれば、内装費・設備費として50〜150万円程度から始めることが可能です。テナントを借りる場合は保証金・改装費込みで300〜500万円規模になることが多く、毎月の家賃も固定費として重くのしかかります。

  • 自宅サロン:初期費用50〜150万円・家賃ゼロだが近隣への配慮が必要
  • テナント:初期費用300〜500万円・集客しやすいが固定費が高い
  • 訪問型(モバイル):初期費用20〜50万円・機材の持ち運びが前提

自宅サロンで指名客を10人以上確保してからテナント移転を検討する段取りが、リスクを低く抑えた現実的な手順です。はじめての起業で固定費を抑えることが、長く続けるための前提条件になります。

ポイント トリマーならではの起業アイデア

専門性を絞るほど個人サロンが選ばれる理由

トリマー

トリミングサロンは「全犬種・全サービス対応」を目指すと、大手チェーンとの価格競争に巻き込まれます。個人が選ばれるには、「誰のどんな悩みを解決するのか」を絞ることが効きます。

  • シニア犬・皮膚ケア特化サロン(動物病院との連携も視野に入る)
  • 完全指名制プライベートサロン(1日2〜3頭限定・単価を上げる)
  • 往診型モバイルトリミング(移動困難な高齢者・遠方の顧客向け)
  • 犬種特化サロン(プードル・ダックス等の専門家ポジション)
  • トリマー養成・技術指導(経験を教える側へ転換)

「○○が得意」という専門性の打ち出し方が、価格より先に判断基準になります。たとえば、皮膚トラブルを抱えた犬の飼い主は「カットが上手い店」より「皮膚のことを相談できる店」を切実に求めています。

起業18フォーラムの会員Aさん(30代前半・女性・ペットサロン正社員・独身・トリマー歴6年)もこの考え方で動いた1人です。月収19万円のトリマーとして勤務しながら起業準備を始め、皮膚ケアが苦手な犬に特化したサロンをInstagramで発信しました。開業から8ヶ月で指名客13人・月収32万円まで到達し、現在は法人化を視野に入れています。最初の転機は「全犬種対応をやめる」と決めたことでした。

ポイント 技術があっても起業に失敗するトリマーのパターン

技術職ほど陥りやすい集客後回しの落とし穴

トリマー

技術に自信があるトリマーさんほど「腕さえよければ口コミで広がる」と思いがちです。ところがその前提が崩れたとき、開業後半年以内に方向転換を迫られることになります。

実際に個人サロンが苦しむ局面を整理すると、次のようなパターンが浮かびます。

  • 「集客はあとで考える」→ 開業当日から予約がゼロのまま続く
  • 「安くすれば来てくれる」→ 単価を下げた結果、利益が出ない
  • 「全犬種対応したい」→ ポジションが曖昧になり指名されない
  • 動物取扱業の登録を後回しにして開業できなくなる

特に「集客後回し」は多くの技術職に共通するつまずきです。トリミングの技術を磨くことと、顧客に見つけてもらうための発信は別のスキルです。開業の半年前からSNS発信を始め、「この人のサロンが開いたら予約したい」という人を1人でも増やしておくことが、開業日を無駄にしない最善策です。

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、トリマーの平均年収は約396万円と記されています。勤務先での収入を下回らないためには、単価・施術頭数・稼働日数の設計を起業準備の段階から計算しておくことが欠かせません。

ポイント まずは「自分が選ばれる理由」を1つ見つける

「誰の何を解決するか」を明確にする起業の第一歩

トリマー

トリマーとして起業準備を始めるとき、最初にやることは広告の出稿でもロゴの作成でもありません。「自分は誰の、どんな困りごとを解決できるか」を1文で言えるようにすることが、最初のステップです。

その答えが出たら、Instagramで発信してみてください。100投稿して、どんな写真や文章に反応があるかを観察する。そこから口コミが生まれ、最初の指名客がやってきます。

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● 質問 サービスのターゲットを絞ったほうがいいとよく聞きますが、絞れば絞るほど対象が少なくなって、逆に売れな

ペット市場はこれからも成長を続けます。トリマーさんが持っている観察眼と信頼構築力は、個人サロンにとって一番の財産です。動き出すタイミングは、今がベストです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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