職定年で給料が下がる前に、起業準備を始めるべき? 50代の動き出し方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

来年、役職定年を迎えます。役職も給料も下がると聞いていて、このまま定年まで会社にいるだけでいいのかと不安です。何から手をつければよいかも、正直まったく見えていません。

同じ立場の人がどう動き出しているのかも含めて、今のうちに起業の準備を始めておくべきでしょうか?

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● 回答

役職定年が見えてきた今は、起業準備を始めるのにむしろ向いたタイミングです。役割が外れて時間に余白が生まれ、それでいて会社という収入の土台はまだ残っているからです。失う側面だけを見ると不安になりますが、起業準備の視点では、得るものの方が大きい時期です。

起業18フォーラムの会員に、Sさん(仮名・55歳・損害保険会社の管理職)という方がいます。子どもはすでに独立し、奥さんと二人暮らしです。来年に役職定年を控え、給料が下がることへの不安から相談に来られました。最初は焦りのあまり、自己流で高額な起業塾に申し込んだものの、ノウハウばかりが増えて手が止まっていたそうです。

転機は、起業18フォーラムの勉強会で「自分が会社で頼られてきたことは何か」を書き出したことでした。30年の保険業務のなかで、Sさんは取引先から契約内容の整理や見直しの相談を何度も受けていました。その経験を小さなサービスにしてみよう、と方向が定まったのです。

役割が外れた時間こそ、起業準備の資源になる

役職定年は、一定数の会社で導入されている仕組みです。人事院の令和5年民間企業の勤務条件制度等調査では、事務・技術関係職種の従業員がいる企業のうち、役職定年制がある企業は16.7%でした。役職定年年齢は部長級、課長級ともに55歳とする企業の割合が最も高く、Sさんのような立場の人は決して珍しくありません。

役職が外れると、管理業務や会議の時間が減ります。その空いた時間を「居場所を失った」と受け取るか、「準備のための時間が増えた」と受け取るかで、その後の数年は大きく変わります。

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に、月5万円と月10万円の境界線という考え方が出てきます。まずは会社の外で月5万円。役割が外れたぶんの時間があれば、十分に届く範囲です。

まず、役職定年で空くことになる時間が週に何時間あるか、手帳でざっと数えてみてください。その時間の総量が、起業準備にあてられる元手になります。

定年後の姿から、今日やることを逆算する

動き出すコツは、定年後にどうなっていたいかを先に決めて、そこから今日やることを逆算することです。たとえば「65歳のとき、会社の外に月10万円の収入と数人のお客様がいる」と決めれば、今年やるべきことは「頼られてきた経験を1つのサービスにする」と見えてきます。

  • 役職が外れた喪失感のまま、定年までただ時間をやり過ごす
  • 焦って高額な講座やノウハウを買い集め、行動が止まる
  • 退職金や再雇用の条件が決まってから考えようと、準備を先送りする

拙著にも書いたのですが、才能のない人は一人もいません。30年勤めた人には、その年月でしか積み上がらない経験が必ずあります。問題は才能の有無ではなく、その経験を言葉にして、小さく試したことがあるかどうかです。

  • これまで社内外から頼られた相談を、思い出せるだけ書き出す
  • そのうち1つを、知人や元取引先に向けた小さなサービスにする
  • 役職が外れて空く時間を、週単位で起業準備にあてる枠として確保する

今週のうちに、これまで「あなたに相談したい」と言われた場面を5つ書き出してみてください。そこに、定年後の仕事のたねが眠っています。

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Sさんは在職のまま準備を続け、18ヶ月目には会社の外で月12万円ほどの収入が安定しました。役職定年は、終わりの合図ではありません。次の働き方を、自分の手で設計し直す合図です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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