1円起業とは? 1円起業成功の共通点と基礎知識を解説

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「資本金1円で会社が作れる」と聞いて、本当に1円だけで起業できるのかと気になって調べている方は多いと思います。

結論から言うと、資本金は1円でも会社を設立できますが、登記費用などは別にかかり、2026年時点では電子定款と認証手数料の引き下げを使っても合計でおよそ16万円台が必要です。

そして、その会社を動かす運転資金は、資本金とはまた別に用意することになります。

つまり「1円起業」という言葉は、制度のキャッチコピーのようなものです。この記事では、なぜ1円で設立できるようになったのかという経緯から、実際にかかるお金、そして「どんな人なら1円起業が活きるのか」までを順番に整理していきます。

ポイント 「1円起業」とは? 最低資本金制度がなくなった経緯

資本金1円から会社を作れるようになった理由

50代

かつて株式会社を作るには、まとまったお金が必要でした。改正前の商法では、株式会社で1,000万円、有限会社で300万円という最低資本金が定められていたのです。思いつきで始められる金額ではありませんでした。なお現在は、有限会社を新しく作ることはできません。

この高いハードルを下げたのが会社法です。会社法は2005年(平成17年)7月26日に公布され、2006年(平成18年)5月1日に施行されました。このとき最低資本金制度が廃止され、出資額が1円でも株式会社を設立できるようになりました(出典:法務省・経済産業省「会社法の現代化について」)。「資本金1円から会社を作れる」という話は、ここを根拠にしています。

実は会社法より前から「1円会社」はあった

もう少しさかのぼると、会社法より前にも入口はありました。中小企業挑戦支援法の「最低資本金規制特例制度」が2003年(平成15年)2月1日に施行され、5年以内に資本金を増やすことを条件に、1円でも会社を作れる仕組み(いわゆる確認会社)が先に始まっていたのです。

その後、会社法の施行でこの特例は役目を終え、確認会社も増資の縛りから解放されました。1円起業はある日突然生まれた制度ではなく、起業のすそ野を広げる流れの中で整えられてきたものだと言えます。

ポイント 「1円で作れる」「1円でビジネスできる」二つの誤解

1円で起業という言葉に隠れた本当のコスト

1円起業

「資本金1円でよくなった」というのは、あくまで資本金の最低額がなくなったという意味だけです。会社という器を作る手続きには、別のお金がかかります。ここを取り違えると、後で「思っていたより必要だった」と慌てることになります。

2026年時点で、自分で株式会社を設立する場合の主な費用は次の通りです。電子定款を使い、2024年(令和6年)12月1日からの手数料引き下げの条件に当てはまると、紙の定款より大きく抑えられます。

  • 登録免許税:
    株式会社は15万円。資本金×0.7%がこれを上回る場合は、その額になります
  • 定款認証手数料:
    資本金100万円未満は通常3万円。2024年12月1日以降、発起人が全員自然人で3人以下・取締役会を置かない・発起設立といった条件を満たすと1万5,000円に引き下げられます
  • 定款の印紙代:
    紙の定款は4万円。電子定款なら0円

これらを合計すると、目安は次のようになります。電子定款と認証手数料の引き下げをともに使えた場合は、登録免許税15万円+印紙0円+認証1万5,000円でおよそ16万5,000円です。引き下げ条件に当てはまらず認証が通常の3万円なら約18万円、紙の定款で認証も3万円だと約22万円が目安になります(出典:日本公証人連合会、登録免許税法)。

このほか登記用の謄本代が数百円かかり、専門家に手続きを頼めば報酬が数万円から加わります。「約25万円」と語られてきた金額は、制度の見直しで少しずつ下がってきたわけです。

もう一つの誤解は「1円でビジネスができる」

費用と並んで多いのが、1円で事業が回せるという思い込みです。実際には、1円ではノート一冊もペン一本も買えません。スマホ1台で始めるとしても、端末代に数万円、月々の通信費にも数千円はかかります。

ですから、会社を動かすお金は、結局は代表者が会社に貸し付ける形などで用意することになります。最初から少し資本金を積んでおくのと、大きくは変わりません。資本金1円は「会社を作るときの最低ライン」であって、「事業に使えるお金」ではないと覚えておいてください。

ポイント 1円起業のメリットとデメリット

小さく始められる身軽さと、信用や融資面の壁

1円起業のメリット

1円起業は「お金をかけずに、小さく始める」という姿勢を表すシンボルのような言葉です。ここでは、その小さく始めることのメリットとデメリットを見ていきます。

メリット:身軽だから変化に強い

小さく始める一番のメリットは、身軽さです。事業がうまく回らないとき、すばやく方向転換できるのが小さな会社の強みになります。つぶれていく会社の多くは、市場やお客様の変化についていけずに業績を落とします。最初を軽くしておけば、撤退の判断も早くできますし、傷も浅くてすみます。

小さく起業する

デメリット:信用と融資で不利になりやすい

一方でデメリットは、信用の面です。資本金は会社の体力をあらわす数字でもあるため、「資本金1円です」と名乗ることが、かえって不安を持たれる場面もあります。金融機関は資本金を会社の安全性の目安として見るため、1円のままでは融資で不利になりがちです。

取引先によっては、金額がいくらであっても「法人格があること」を取引の条件にする会社もあります。そうした場合には、堂々と会社を作って差し出せばよいでしょう。ただ、それ以外の場面では、資本金1円の看板が役に立つことはあまりありません。それなら個人事業で十分なケースも多いのです。

ポイント 1円起業が活きる3つのケース

どんなときに1円起業が活きるのかを3つで整理

1円起業が活きる場合

では、資本金1円が弱みになりにくいのは、どんな場合でしょうか。これまで会社員からの起業を支えてきた経験からいうと、次の3つのケースで1円起業が活きやすいと感じます。

取引先が決まっていて、その要望で法人成りする場合

最大のデメリットが信用だとすれば、すでに信用がある状態で会社にすれば問題は起きません。個人事業のときから取引してくれている相手がいて、その先の要望で法人化するケースです。相手はあなたの仕事ぶりを知っていますから、資本金が1円かどうかで取引が止まることはまずありません。

運転資金がほとんどかからないBtoC・BtoBの場合

自宅でパソコン1台あればできる仕事も、1円起業と相性がよいです。たとえば個人向けのセミナーや、スキルシェアサイト経由で企業から案件を受ける働き方です。在庫も店舗も持たない事業なら、資本金の少なさが弱点になりにくいので、小さく法人化する選択もしやすくなります。

小さく始めて、赤字になりにくい事業の場合

融資を前提にする大きな事業は、資本金1円だと不利になります。借り入れが必要になる規模の事業に最初から手を出すなら、資本金の設計はもう一度考え直したほうがよいでしょう。逆に、自宅の費用を按分して経費にできるような、元手の軽い事業であれば、1円起業のメリットを素直に受け取れます。

  • すでに取引先がいて、その要望で法人成りする
  • 在庫も店舗も持たず、運転資金が軽い仕事
  • 元手が小さく、赤字になりにくい事業
会員さんの例:個人事業から「必要に迫られて」法人化

起業18フォーラムの会員さんに、Web制作を個人で請け負っていた別所さんという方がいます。独立から1年ほどは個人事業のまま、月20万円前後の売上で淡々と続けていました。転機は、継続発注をくれていた取引先から「請求書を法人名義にしてほしい」と相談されたことでした。

そこで別所さんは、資本金を大きく積むのではなく、手元で動かせる範囲の小さな金額で会社を作りました。信用はすでに取引の実績で積み上がっていたため、資本金の額が問題になることはありませんでした。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、いきなり大きく勝負せず、小さく始めて手応えを確かめてから次の一歩を踏み出すという考え方を紹介しています。別所さんの法人化は、まさにその順番をたどった一例でした。

ポイント おわりに:1円という数字に振り回されない

数字より「今の自分に法人格が必要か」で考える

1円起業のまとめ

1円起業は、制度の上では確かに可能です。ただ実際には登記費用がかかり、事業を回すお金は別に必要で、信用や融資の面では資本金1円ならではの弱さもあります。大切なのは「1円でできるか」ではなく、「今の自分の事業に法人格が本当に必要か」を見きわめることです。

個人事業で十分に回るうちは、無理に会社にする必要はありません。取引先の要望や事業の広がりで「法人であるメリット」が見えてきたとき、はじめて検討すればよいのです。今日できることは、いきなり会社を作ることではなく、まず手元でできる小さな仕事をひとつ動かしてみるだけで十分です。

初期費用ゼロで起業する方法はあるのでしょうか?
● 質問初期費用ゼロで起業する方法はあるのでしょうか?  ● 回答1円やゼロ円起業などの言葉が躍っていますが、あれは広告コピーであって現実ではありません。事実、今スマホを見ているだけでも、お金が掛かっているわけで「なるべくかけない」という言い方が正しいと思います。最も費用が掛からない起業のひとつとしては、デジタルコンテンツを販売するビジネスで起業することがあります。とは言っても、もちろんゼロ円ではありません。サーバー費用、各種手数料、ソフトウェア代、諸々はかかります。 起業費用をみると、起業家で...

1円起業という言葉に惑わされず、自分のペースで一歩ずつ進めていきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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