記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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2005年6月に会社法が改正され、資本金1円以上で会社を設立できるようになりました。それ以前は、株式会社ならば1,000万円、有限会社ならば300万円の資本金が必要でした。※現在は有限会社の新設はできません。
ただ、この意味は「1円で会社が作れる」ということではなく、資本金が1円以上で良くなったというだけのことです。会社を作るためには、登記費用や印紙代などの費用が掛かり、株式会社ならば約25万円が必要で、手続きを専門家に依頼するならば、さらに5万円以上の出費が必要になります。
同様に「1円でビジネスができる」という意味でもありません。1円ではノート一冊、ペン一本も変えず、何もできません。スマホ1台で起業するとしても、スマホ代は数万円、月々の支払いも数千円は掛かります。
つまり、1円では何もできないわけで、代表者が会社に貸し付ける形で資金を用意することになります。最初から資本金を積んでいるのと大して変わりはありません。「1円起業」とは「資本金が1円からでよくなった」という以外に大した意味はなく、小さく起業をスタートできるというイメージで語られる言葉だということです。
1円起業のメリットとデメリット
ここでは、1円起業のメリットとデメリットについてお話しします。
メリット:起業しやすい
1円起業とは、お金をかけずに起業する、小さく起業するという意味で使われるシンボリックな言葉であり、それ以上のものでもありません。実際、1円の資本金で会社を立てたところで、事業に使えるお金がないのですから、何のためにある会社なのかということになります。
ですので、ここでは敢えて、小さく起業するメリットという意味でお話します。小さく起業するメリットはたくさんあります。一番は「変化し易い」ということです。潰れていく会社の多くは、市場や顧客の変化に対応できずに業績不振に陥っていきます。小さく起業すれば柔軟さが維持できますし、撤退も素早く決断できます。
デメリット:信頼を得にくい
資本金は会社の元手であり、会社の体力です。わざわざ「資本金1円です」と宣言することに意味があるでしょうか? それなら個人事業でも十分でしょう。個人には資本金という概念はありませんし、わざわざ売上も貯金も公開する必要もありませんから、少なくても問題ありません。
しかし、中には、資本金がいくらであろうが、取引するために「法人格」が必要だと言ってくる取引先もあります。そんな場合には「1円」で堂々と会社を作って「これで良いですか?」と聞いてみましょう。そのような場合以外には役に立たない看板です。
1円起業成功例の3つの共通点
資本金1円で起業して成功するパターンはあるのでしょうか? ここからは、どういう場合に1円起業が活きるのか考えてみます。
取引先を掴んで、そこの要望で1円起業(法人化)する場合
1円起業の最大のデメリットは、信用を得にくいことです。取引してくれそうな会社に調査されて、創業1年目(実績なし)、資本金1円と知られてしまえば、取引してくれる企業は少ないでしょう。ですが、個人事業主時代の取引先がすでにあり、そこの要望で法人成りした場合は別です。
そのような場合には、とりあえず手持ちのお金で会社を作ったことを相手は知っていますから、信用問題は起こらないでしょう。
BtoCで運転資金が掛からない事業の場合
資本金1円という看板は信用がないことは上述した通りです。そして、1円ではコーヒー1杯飲めませんので、実質の運転資金は代表者のお金を使うことになります。
ですが、自宅事務所でパソコン1台で出来る仕事であり、取引先が企業でない場合、たとえば個人に参加してもらうセミナーであったり、BtoBでもスキルシェアサイト経由で企業案件を受ける場合には、1円起業でも問題になることは殆どありません。
小さなビジネスで起業している場合
似たような話になってしまいますが、1円の資本金では、融資を受ける際に不利になります。借り入れが必要になる大きな事業に手を出す場合には、考え直した方が良いかもしれません。
1円起業は、元手の掛からない、個人事業のように、生活費を按分して経費化しているものが多く、赤字になりにくい事業に適しています。
おわりに
結局は個人事業と大差がない1円起業ですが「法人であるメリット」を享受できる場合は検討してみましょう。
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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