記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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個人で起業をするというと、とても「大きなことを成し遂げなければならない」と感じるかもしれません。
しかし、個人で起業するハードルは、一般的に考えられているほど高くはなく、準備をしっかりと行えば誰にでもできます。
今回は、個人が起業するための準備や手順について詳しく解説します。
個人起業のハードルは高くない
「起業は難しい」と考えている方は多くいますが、実は個人で起業するならハードルは全く高くありません。大勢を巻き込んでやる起業の方がよっぽど大変です。
その理由を見ていきましょう。
初期費用を抑えた起業が可能
どのような形で起業したいかにもよりますが、多くの場合、以前ほど初期費用を掛けずとも起業できるようになっています。多額の設備投資を必要とする事業を立ち上げる場合には、確かに初期費用は嵩みます。在庫を必要とする場合もそうです。
しかし、スキルやノウハウを提供するビジネスであれば初期費用をかけなくても起業できますし、ネットショップであれば店舗も不要で、自宅を使って起業することができます。パソコンとスマホがあれば、特に設備投資も必要なく、スタッフを雇わずとも一人でできますし、発送などは外注スタッフでも十分間に合います。
以前は、起業と言えば、店舗やオフィスを借りるための家賃や、大規模な設備投資がつきものでしたが、今は全く状況が変わっています。
副業からの起業が可能
続いて、個人でする起業のハードルは高くないと言える理由は、副業から起業することができるという点です。
ここ数年、働き方の多様化が進み、従業員の副業を認める企業も出てきています。そのため会社員として働きながらネットショップを運営したり、オンラインセミナーなどを開催して、副収入を得る人がどんどん増えています。
まずは副業として始めて、徐々に大きくしながら起業するという方法は、もはや起業法のスタンダードと言っても過言ではありません。
多くの場合、副業はネットを利用してできるので、時間や場所を選ばずにできますし、週末や朝晩の時間で十分に回すことができます。起業のために退職するというのは、もう昔の話です。
世界の人を顧客にできる
一昔前は、起業して顧客を得るというのはとても大変なことでした。広告を打って、営業活動をして、チラシを配って、自社商品を宣伝しなければなりませんでした。
しかし、今は安価なネット広告を利用することもできますし、SNSや動画で費用をかけずに宣伝ができるようになりました。
商圏は起業した場所に限らず、日本中、世界中に広げることが可能です。特別な資格や技術がなくても、不特定多数の人に対して宣伝できるため、個人起業のハードルは以前に比べて格段に低くなっているのです。
個人起業に必要な初期費用の目安
これから起業したいという方にとって気になるのは、やはりどのくらいの初期費用が掛かるのかということでしょう。
では、個人で起業するのに必要な初期費用の目安について見ていきましょう。
個人事業主として起業する場合
個人事業主として起業することを考えているのであれば、業種にもよりますが、多くの場合は初期費用を非常に安く抑えることができます。商品を仕入れるための費用や、名刺、印鑑などの購入費用、パソコンやソフトウェアの購入費用くらいです。
個人事業開業の手続き自体は、税務署に開業届を提出するだけで完了で、法人登記と異なり、手続きには費用も掛かりません。
法人として起業する場合
株式会社や合同会社などの法人を設立するのであれば、個人事業よりは高額な初期費用が必要となります。法務局への登記、定款や登録事項証明書の提出、印紙代、司法書士への書類作成の依頼料などがかかるからです。
株式会社の場合、登記手続き全体にかかる費用が25万円前後、合同会社の場合には6~10万円前後の費用がかかります。さらに法人の実印を作るのに2万円程度、売上にかかわらず法人住民税が年7万円発生します。
個人起業に必要な知識や資格はある?
個人で起業する際には、資格は必要ありません。自分ができること、好きなことをやれば良いので、資格のために時間とお金を使うことはあまりお勧めできません。
起業する分野での資格
サラリーマンの方は、起業する前に「もっと勉強しておこう」「資格を取っておこう」と考えがちです。ですが、昨日今日に取得した資格で仕事が舞い込むほど、世の中甘くはなく、その考えは正しいとは言えません。
国家資格なら別ですが、民間資格では大した信用、信頼にもつながりませんので、早くビジネスを稼働させ実績を積むことの方が先です。
国家資格の場合には独占業務があったり、所属する協会や横のつながりから仕事の紹介があったりしますが、それだけで食べていくことはできません。実績、人間性を向上させ、顧客獲得力を育てていく必要があります。
民間資格の場合にも、所属する団体などから認定講師の仕事が来ることもありますが、そこに依存するとその団体のビジネスに組み込まれることにつながり、起業で自由に自分の意志で働くことからは遠ざかっていきます。やはり大切なのは、資格ではなく顧客獲得力なのです。
また、資格取得のための勉強は、起業後に開始すれば、ビジネスのための教育研修という扱いにできる場合もあり、お得という考え方もあります。
マーケティング
上述のように起業するのでしたら「顧客獲得力」が最も大切です。ぜひ、マーケティングの知識を身につけておきましょう。
どんな商品・サービスを作るか、どのような方法で集客するか、価格設定はどうするかなど、考えるべきことはたくさんあります。顧客の属性を分析して、適切な価格設定を行い、会社の業績を伸ばしていくためにも、効果的なマーケティング戦略を立てられるようにしましょう。
会計・税務
個人事業主であれ法人であれ、利益を上げた場合には税金を支払わなければなりません。税金をきちんと納めるためには、税務の知識が必要となります。
確定申告を行うことはもちろん、どうすれば節税できるかについての知識も必要となるでしょう。加えて、決算書を読むためにも、ある程度の会計の知識が必要となります。
会計士のように深い知識は必要ありませんが、どの程度の資金を投入してどのくらいの利益が上がっているのか、どの分野にもっと資金を使うべきなのかという点は理解できるようにしたいものです。
ITスキル
どのような形で起業するとしても、ネットを使って低コストで仕事をするために必要となるのがITスキルです。タッチタイピングに始まり、表計算、SNSなど、慣れるべきスキルは数多くあります。
今ではITスキルの多くもYouTubeで無料で学ぶことができるので、時間を見つけて少しずつ勉強してくと良いでしょう。
個人起業の始め方4ステップ
では「起業しよう」と思い立った場合、どのようなステップを踏んで進めるのでしょうか?
起業に必要な4つのステップを見ていきましょう。
1.アイデアをまとめる
まず、事業の基礎となるアイデアをまとめます。誰に何をどのように、いつどこで売るのか、簡単で良いので書き出してみましょう。
準備を進めながら、より具体的に作り込みできますので、最初から完璧にしなくても大丈夫です。
次に、起業をする目的、次に実現したいと思っている目標を明確にします。起業は「HOW」だけではなく「WHY」も重要ですね。
起業は続けていかなくては意味がありませんので、明確なビジョンとモチベーションが必要です。
2.事業計画を立てる
アイデアがまとまったら、事業計画を立てます。事業計画というと大げさですが、ここでは自分のアイデアを実現するための具体的な行動計画と予算と考えましょう。
買うもの、借りるもの、作るものの整理、そして、商品作りなどの行動計画と期限、商品名や価格、など考えるべきことはたくさんあります。競合他社の状況などもチェックしつつ、実現可能な計画を立てましょう。
3.資金、設備・人材の確保
行動計画を立てたら、次は資金と設備の準備、人材の確保です。
副業から始める場合には大きな問題にはなりませんが、起業準備に投資する予算、パソコンなどの設備、手伝ってくれる仲間や外注先が必要になります。
お金をケチって何から何まで自分でやろうとしたり、性能の悪いパソコンを使ったり、すべて時間の無駄につながります。出来栄えも悪くなってしまえば、得られる成果も変わってしまうことになります。
今は不確定要素だらけの時代ですから、従業員を雇うなどの固定費を掛けることは避け、アウトソーシングをうまく活用しましょう。最初は小さく、身軽にスタートしましょう。
4.開業手続き/各種届出
ここまで準備ができれば、あとは開業手続きや届け出を行います。個人事業主、株式会社、合同会社といった形態から、自分に合ったものを選びます。
起業する業種によって必要な届け出が変わってくるので、事前に調べておくことが重要です。司法書士などの専門家の力を借りるのであれば、家の近くに事務所がある人や、知り合いの紹介がスムーズでしょう。
個人起業で注意すべきリスク
個人起業のハードルは高くないものの、リスクがないわけではありません。
ここでは、個人起業で注意すべき3つのリスクについて見ていきましょう。
1.資金繰りがうまくいかなくなるリスク
副業から始めれば問題ありませんが、個人で起業する場合、最も注意すべきなのは資金繰りです。個人起業に限らずですが、会社にとって資金繰りは非常に重要です。
特に独立する場合には、個人で資金力がそもそもありませんから、想定外の出費が重なると厳しくなりますし、売掛金が予定どおり回収できないということもあり得ますので、資金繰りはある程度余裕をもって行うことが重要といえます。
最初は、想定したよりも売上が伸びないこともあります。起業するために使うイニシャルコスト、起業してからのランニングコストは、なるべく抑えましょう。
2.法律に違反するリスク
会社に勤務していれば、事業が法律に違反してしまいそうな場合には、関係部署や専門家が面倒を見てくれるはずです。しかし個人で起業すると、そのようなチェックが働かず、法律を知らずに破ってしまっていたということもあり得ます。
資格や許認可の更新を忘れていたり、知らないうちに改正されていた法律への対応が遅れていたりすることもあり得ます。
3.健康を害するリスク
別のリスクとして大きいものは、健康を害するかもしれないということです。
起業したばかりの社長は、忙しく働かなければなりません。どうしても自分の体や心のケアがおろそかになりがちです。さらに顧客からクレームがきたり、重大な決定を下さなければならなかったりすると、他の人に振れないので、精神的に病んでしまう可能性もあります。
起業する際には、こうしたリスクについても、事前に想定しておく必要があります。
個人起業を成功させるポイント
個人で起業ようと考えると不安があるかもしれませんが、起業には成功させるポイントがあります。起業成功のポイントを2つ解説します。
1.情熱を傾けられるもので起業する
起業で大切なもののひとつに「モチベーション」があります。
自分が情熱を傾けられる分野、製品、サービス、要するに「好きなことで起業」すれば、何があってもポジティブでいられます。あきらめずに努力を続け、起業を成功させる原動力となるでしょう。
2.計画的に始める
起業は、今持っているものすべてを捨てて人生をかけるというものではありません。最初は副業からはじめ、徐々に規模を大きくしていくという方法を選べば、リスクもほとんどありません。
利益が出るようになってから、取扱製品を増やしたり、レンタルオフィスを借りたりすれば、低リスクで業績を伸ばしていくことができるのです。
起業は入念な準備が大切
個人で起業するのは怖い、不安だと感じている方も少なくありませんが、重要なのは情熱と周到な準備です。リスクマネジメントをしっかり行えば、成功させることができます。
計画的な起業準備で、新たな自分の可能性を開花させましょう!
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起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全12冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。
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