資格も専門技術もない50代の「伝える力」は社外で売り物になる?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

製造業で生産管理を20年ほどやってきた50代前半です。資格も専門技術もありません。得意と言えるのは、若手に工程を説明することと、部門間の段取りをつけることくらいです。

こんなものが、会社の外で売り物になるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「資格も専門技術もありません」というご相談の一文に、つまずきの原因が表れています。売り物を資格の有無で数えている限り、20年続けてきた仕事の中身が候補に入ってこないからです。

説明や段取りが得意な方ほど、自分の力を安く見積もりがちです。頭の中は、だいたい次のような言葉で埋まっています。

  • 誰でもできる気がする:
    社内では当たり前の動きで、値段がつく想像ができない
  • 形に残る証拠がない:
    資格証のような見せられる裏づけがなく、名乗り方も浮かばない
  • 会社の看板頼みに思える:
    話が通るのは肩書のおかげで、個人では相手にされないと感じる
値段がつくのは資格ではなく困りごとの解消

実態は逆です。中小企業の現場からは、「新人に仕事を教えられる人がいない」「部署同士の言い分がぶつかって工程が進まない」という声を繰り返し聞きます。

若手に教える力と部門間の段取りをつける力は、資格がなくても、すでにお金が支払われている仕事の中身そのものです。

研修会社も業務改善のコンサルタントも、突き詰めればこの2つを商品にしています。買い手が対価を払うのは資格証ではなく、翌日から現場が動くという変化に対してです。

とはいえ、社内の言葉のままでは相手に届きません。「生産管理20年」ではなく、「初めての人が動けるように工程を説明する」「立場の違う部署の間に立って日程をまとめる」と、相手の困りごとの言葉に置き換えてはじめて伝わります。

55歳で社内の役割に区切りが来る役職定年の現実

今のうちに動いたほうがいい理由は、数字にも表れています。人事院の令和5年民間企業の勤務条件制度等調査によると、役職定年制がある企業は16.7%で、その年齢は部長級・課長級とも55歳が最多です。

50代前半なら、区切りまで数年という方も多いはずです。肩書が外れても現場の困りごとは残るからこそ、社内の動きを外の言葉に置き換える棚卸しには、早く手を付けるだけの価値があります。

  • 頼まれごとの仕分け:
    これまで頼まれてきたことを挙げて、業界の経験・日常の役割・趣味の3つの層に分けて眺める
  • 買い手の言葉への置き換え:
    社内用語を捨てて、「誰のどんな困りごとを消すか」で自分の仕事を言い直す
  • 社外の1人への確認:
    転職した元同僚や後輩に、いま何に困っているかを聞いて手応えを確かめる

仕分けの物差しは、社内でどう評価されたかではなく、社外の誰の困りごとを消せるかに置いてください。

この進め方は、拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』で紹介しています。アイデアの種をまず30本ほど挙げ、業界・日常・趣味の3つの層に仕分けてから絞り込むと、自分では気づけなかった売り物の候補が浮かび上がります。

説明資料の相談が延べ30件を超えた有田さんの18ヶ月

起業18フォーラムの有田さん(仮名・50代前半・製造業の生産管理)も、参加した当初は「資格がない自分には何もない」が口癖で、会社の外の収入はゼロでした。

流れが変わったのは、転職していった後輩に頼まれて、取引先向けの工程説明資料づくりを手伝ったときでした。「有田さんの資料で、初めて役員に話が通りました。あれは、うちの会社にない技術ですよ」という一言に、本人がいちばん驚いたと言います。

その驚きを起業18フォーラムの勉強会に持ち込み、頼まれごとの仕分けを通じて、自分の売り物を「現場が動く説明資料づくりと部門間の調整」に定めました。毎月の実践報告会で件数を報告しながら、相談を1件ずつ引き受けていったのです。

18ヶ月目に説明資料の相談が延べ30件を超え、翌年からは2社との有料の定期相談に切り替わりました。派手な金額ではありません。それでも、積み上がった件数が、そのまま次の紹介につながっています。

年齢を理由に見送る必要はありません。起業そのものに年齢は関係ないというのが、支援の現場での実感です。ただ、50代では体力、60代では気力が落ちやすいのも見てきた事実で、判断が早いほど選べる形は広がります。

今週、転職した元同僚か社外の後輩を1人選び、「いま仕事で何に困っているか」を聞くために声をかけてみてください。その答えの中に、あなたの説明と段取りが刺さる最初の相手がいます。

メーカー勤務の自分に売れる強みなんてある? 技術職が見落とす視点とは
● 質問 メーカーで品質管理やデータ分析の仕事をしてきましたが、特別な資格もなく、社外で通用する強みが自分にあ

私が見てきた限り、50代から立ち上がっていく方に共通するのは特別な資格ではなく、頼まれごとに1件ずつ応えてきた記録でした。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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