親の介護が始まっても起業準備を続けた40代の話|介護離職しないための在職起業という選択

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

厚生労働省「雇用動向調査」(2024年)によれば、介護・看護を理由に2023年に離職した人は約9.3万人にのぼります。特に男性は45〜49歳、女性は55〜59歳に集中しており、ちょうどキャリアが充実している時期に離職を迫られるという現実があります。そのほとんどが「退職してから起業しよう」と考えるのですが、この順番には大きな落とし穴があります。

今回は、要介護の母親と同居しながらも在職中に起業の収入軸を立ち上げた田中さん(仮名・40代後半・製造業)の話を通して、介護と起業を両立させる考え方と手順を整理していきます。

ポイント 「退職してから起業」という計画が崩れる理由

収入がゼロになった状態で起業準備と介護費を同時に背負う危うさ

介護

田中さんが起業18フォーラムに相談に来たのは48歳のときでした。製造業で品質管理を20年間担当してきたベテランで、月収38万円の安定した生活を持つ一方、要介護の母親と同居して在宅介護を支えていました。月に数回、通院補助や入浴サポートが必要で、職場での残業中に緊急の呼び出しが来ることも珍しくありませんでした。

「いっそ退職して、介護に専念しながら在宅でできる仕事を立ち上げようと思っている」と話していました。品質管理のノウハウを活かしたコンサルティングを始めるという構想で、「退職→介護が落ち着いたら準備→独立」という流れを想定していました。

「退職後起業」の3つの落とし穴

  • 収入がゼロになった状態で介護費用(月5〜10万円)と生活費が同時にかかり続ける
  • 資金が減るほど「早く稼がなければ」という焦りが判断を歪め、安値受注に陥りやすい
  • 介護が長期化した場合、起業の準備に使えるエネルギーが想定より大幅に少なくなる

退職後に起業を目指す人の多くが「時間ができてから動く」という発想で退職を先行させます。しかし、収入がなくなった途端に「早く稼がなければ」という焦りが思考を乗っ取り、冷静な判断ができなくなります。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にこんな言葉があります。「時間が余っている人なんていないよ。時間をやりくりして捻出するんだよ」という考え方です。退職すれば時間が生まれるという前提は、経済的な不安という新しいプレッシャーで相殺されてしまいます。

ポイント 田中さんが選んだ「在職起業」という道

月収を守りながら在職中に収入の第2軸を立ち上げる手順

介護

起業18フォーラムでのやり取りを重ねた田中さんは、方針を変えました。「退職後起業」ではなく、在職のまま収入軸を作ってから退職を検討するという順番に切り替えたのです。

田中さんのテーマ選びは明快でした。製造業で20年間積み上げてきた「品質管理・工程改善」のノウハウをそのまま商品にすることです。新しいスキルを学び直す必要がなく、すでに実績のある領域で勝負できます。最初のターゲットは、仕事上のつながりで知り合っていた中小製造業の経営者2人でした。

準備開始から6ヶ月後、田中さんは最初のコンサルティング契約を月3万円で獲得しました。さらにその後、もう1社と月5万円で契約。在職のまま月8万円の事業収入を得る状態を10ヶ月目に実現しました。

「辞める前に月8万円が入ってきたことで、気持ちが変わりました。退職したあとに稼げるかどうかずっと不安でしたが、もう稼げているという状態になって、やっと自信がついた」(田中さん)

田中さんは現在、在職のまま月収38万円+起業収入月8万円を継続中です。退職のタイミングは、事業収入がさらに積み上がったときと決めていて、今は焦っていません。

田中さんの体験談(5点)

  • 属性:40代後半・製造業品質管理担当・要介護の母と同居
  • スタート時状況:月収38万円・介護と仕事の板挟みで限界・起業経験ゼロ
  • 時系列:起業18フォーラム参加3ヶ月目にテーマ確定・6ヶ月目に初契約・10ヶ月目に月収8万円達成
  • 転機:「退職後起業」から「在職起業」への方針転換。資金不安ゼロの状態で準備を進められた
  • 現在地点:在職のまま月収38万円+起業月収8万円。退職タイミングを自分のペースで検討中

ポイント 介護中でも在職起業を進める3つの考え方

介護と起業の両立を可能にする思考の枠組みと実践ステップ

介護

介護と仕事の両立は消耗します。その状態で起業の準備を進めるのは「体力的に無理ではないか」と感じる人も多くいます。しかし田中さんのケースが示しているのは、「まとまった時間がなくても少しずつ進められる」という事実です。

以下の3つの考え方が、その実現を支えていました。

介護中でも在職起業が進む3つの考え方

  • 「今の仕事の延長」をテーマにする。新スキル習得よりも既存ノウハウの商品化に集中する
  • 「月3万円から」でいい。最初から大きな収入を目指さず、小さな実績を積み上げる感覚で動く
  • 「隙間15分」を積み上げる。通院の待合室・昼休みの10〜15分を準備時間として設計する

「月3万円のコンサル契約が取れた」という事実が、その後の行動量を大きく変えます。まず小さな実績を一つ積むことが、次の一手を決める自信の源になります。

「今の仕事で成果を出してきた場面」を紙に書き出すことから始めてください。A4用紙1枚に10個書き出すだけで、起業テーマの候補が見えてきます。

介護が長期化している人ほど「落ち着いてから動こう」と先送りしがちです。しかし介護に終わりが見えないなら、「介護しながら動く」ことを前提に設計するしかありません。

介護という制約があるからこそ、退職前に収入の土台を作る「在職起業」という道が現実的な選択肢になります。田中さんのように在職のまま動き出すことで、退職後の不安を大幅に減らすことができます。

起業18フォーラムには、田中さんと同じように介護と向き合いながら事業の土台を作ってきた会員さんが大勢います。一人で抱え込まず、同じ経験をした人の話を聞くことが、次の一歩を踏み出す力になります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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