50代会社員が「老後資金」のために始める起業準備|月10万円のストック型収入を1本作る順番

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

50代に入ると「あと何年、いまの会社で働けるか」と「老後の暮らしはどれくらい不足するか」を同時に考え始めます。

手取りは伸びにくくなり、退職金や年金の数字を見るたびに足りない気がする。会社員のまま老後資金を補う準備として、月10万円のストック型収入を1本だけ育てる、という現実的な道を順番に整理しました。

ポイント 50代の老後資金不足は「数字」で見ると動ける

老後不足額と退職金制度減少の現実

不足額は1週間で言葉にできる

老後の不安は、漠然としているうちが一番重く感じます。金融庁が令和元年に公表した試算では、夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯で毎月およそ5万5千円が不足し、平均寿命まで生きる前提で約1,320万円から1,980万円が足りないとされています。この数字が「老後2000万円問題」と呼ばれた根拠です。

数字には続きがあります。厚生労働省の2018年調査によれば、退職金給付制度を持つ会社の割合は80.5%まで下がっており、2003年の86.7%から年々目減りしています。勤め先に退職金制度はあるか、いくら出るか、企業年金はどうか、この3つを書き出すだけで不足額の輪郭が一気に見えてきます。

不足額が見えれば、月いくらの収入をどのくらいの期間で作ればよいかが計算できます。50代の起業準備は、ここから始まります。

「あと4,500日」の重みを腹落ちさせる

起業18フォーラムでお話を聞いていると、50代の会員さんがいちばん変わるのは「自由に動ける時間の残量」を数字にしたときです。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に「4500日理論」という考え方が出てきます。平均寿命80歳までの自由時間は、睡眠と会社員時代の通勤・勤務時間を引くと約4,500日しか残らない、という計算です。

50代後半の方なら、自由に動ける残時間はさらに短くなります。資格取得に何年もかける時間はもうない、というのが正直な現実です。

ここで腹をくくれた人ほど、「学ぶための準備」ではなく「小さく試して稼ぐための準備」へ切り替えていきます。

ポイント 月10万円が老後資金の「現実的な目標値」になる理由

月5万円と月10万円の境界線と意味

時間管理

『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』には、月5万円と月10万円の間に明確な境界線があるという話が出てきます。月5万円は一人で手を動かせる範囲、月10万円からは仕組み化や外注の発想が必要になる、という線引きです。

50代会社員の老後資金準備としては、この10万円ラインが目標として現実的です。仮に65歳まで月10万円を10年継続すれば1,200万円。退職金や年金とあわせれば、老後2000万円問題の輪郭はずいぶん和らぎます。

50代会社員にとっての月10万円の意味

  • 10年継続で1,200万円。老後不足額の半分以上をカバー
  • 仕組み化を学べる規模感。70代以降も続けやすい
  • 退職前に「会社外でも稼げた経験」が残る心理的安心
  • 月5万円を二本立てるよりも仕組み化が早い

数字を眺めるだけでは動けません。次の章で、月10万円までの具体的な順番に踏み込みます。

ポイント 「金の卵」より先に「銀の卵」を作る順番

銀の卵を金の卵より先に作る理由

老後資金というと、不動産投資・株式・新NISAといった「資産そのもの」に飛びつきたくなります。ただし投資は、まとまった元本がなければ金融庁の試算が示すような不足額を埋める速度には届きません。

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に「金の卵と銀の卵」という考え方が出てきます。金の卵が不動産などの資産、銀の卵が「自分がいなくても回る仕組み」です。著書の中では、まず銀の卵(仕組み)を先に作ってから金の卵(資産)に投資する順番が推奨されています。

50代会社員にこの順番が向いている理由は単純です。給与と並走して仕組みを育てるなら、失敗しても本業の収入で回復できます。元本を投じる投資は、回復できる時間が短い世代ほど慎重に。

最初の1本目に向いている形

仕組みを作る、と聞くと身構えますが、最初は受講料数千円のオンライン講座、定期購読型のニュースレター、月会費制の小さなコミュニティなど、毎月決まったタイミングで売上が立つ形であれば十分です。

50代の最初の1本に向く「銀の卵」の例

  • 会社で20年蓄えた専門スキルの「教える系」オンライン講座
  • 月980円〜2,980円の月額制ニュースレター
  • 業界経験を活かした月額制の少人数コミュニティ
  • 過去の失敗・回復談をもとにした有料メールセミナー

月10万円の目標であれば、月3,000円×35人、月980円×100人、といった現実的な計算が立ちます。最初は「いま会社で持っている知識」を整理して文章にするだけでスタートできます。

ポイント 起業18フォーラムの会員Kさんが12ヶ月でたどった道

52歳経理マンの12ヶ月実践記録

起業18勉強会

スタート時点と転機

起業18フォーラムの会員Kさんは、52歳の男性で大手メーカー経理部の課長職。妻と社会人になった娘との3人暮らしで、退職金は1,500万円ほど見込めるが「これだけでは妻と老後を過ごすのは厳しい」と感じていた方です。スタート時点は会社員月収58万円・本業以外の収入ゼロ・確定申告の経験なし、という状況でした。「経理は得意だが、これを売り物にできるとは思わない」と何度もおっしゃっていたのが印象的です。

転機は、3ヶ月目にフォーラム内で「中小企業の経営者から経理アドバイスを月5千円で受けられたらありがたい」という声を耳にしたことでした。Kさんは「自分が30年やってきた経理は、独立直後の小規模経営者にとっては値千金なのか」と気づき、月額3,300円の経理相談ニュースレターという形で1人目を受けました。

月別の歩み
  • 1ヶ月目:自己紹介ページとサンプル原稿を2本作成
  • 3ヶ月目:知人経営者1人目の月額契約。月3,300円
  • 6ヶ月目:紹介で4人。月13,200円
  • 9ヶ月目:継続15人。月49,500円
  • 12ヶ月目:継続28人+単発相談スポット数件で月10万円超え

Kさんの場合、退職予定の60歳まで残時間があり、銀の卵を仕込んでから退職金を金の卵に回す順番が見えています。

Kさんが意識的にやめたこと

Kさんは「最初の半年で資格を取り直そう」と話していましたが、4,500日の話を聞いて方針を変えました。資格取得の費用と時間は仕組みづくりの後ろに回し、最初は「会社の経理で身についた手順を文章化する」だけに集中したのです。学び直しは銀の卵が動き出してから、必要な部分だけピンポイントで足せば十分でした。

ポイント 50代会社員が陥る3つの「やってはいけない」

時間と元本の浪費を防ぐ3原則

50代

時間と元本を奪う典型パターン

50代の起業準備でいちばん気をつけたいのは、時間と元本を一気に失う動き方です。会員さんから届く相談の中にも、似たパターンが繰り返し出てきます。

  • 退職金を見込んで高額な「シニア起業塾」へ前払いする
  • 未経験の不動産・FX・暗号資産に老後資金を投じる
  • SNS発信の起業コンサルに数十万円を契約してから内容を確認する

中小企業白書(2002年)では、個人事業主の廃業率は1年目で約37.7%、3年目で約62.4%とされており、いきなり大きな投下をすると回収の難しさが増します。50代の起業準備は、退職金や定期預金には極力手を付けず、月収の範囲で小さく仕込むのが鉄則です。

代わりに置きたい行動

3つの「やってはいけない」を裏返すと、行動の指針が見えてきます。退職金には触らず、月の小遣い範囲で銀の卵を1本仕込み、必要に応じてフォーラムや書籍で学びを足す、という順番です。

50代会社員の安全運転リスト

  • 初期投資は月の自由になるお金の範囲
  • 失敗しても給与で取り返せる規模からスタート
  • 退職金は銀の卵が動いてから手を付ける順番
  • 家族には金額と期間を最初から共有しておく

ポイント 50代から始める「老後資金×起業準備」の1週間アクション

今週から動ける現実的アクション

会社員

帝国データバンクの2024年調査では、新設法人代表の起業時平均年齢は48.4歳と過去最高水準になっており、50代の起業はもはや特殊な選択ではありません。起業18フォーラムでも50代会員の比率は年々増えており、退職前の準備として現実的な選択肢になっています。

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老後の不安は、頭で考えているうちが一番大きく感じます。退職金の見込みと年金の試算、家計の不足額をノート1ページに書き出すだけで、必要な月額が「月10万円」前後に着地することがほとんどです。残り時間と必要金額が言葉になれば、最初の1週間で動ける範囲が見えてきます。会社員のまま、月の小遣いでできる小さな仕込みから、ゆっくりとはじめましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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