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起業を考えると、つい、小手先のテクニック、集客、お金などの〝目に見えること〟ばかりに意識が向いてしまいます。しかし、起業するにはそれだけでは足りません。忘れてはならない〝成功を左右する大きなポイント〟のひとつ、それは「理念」です。
今回は、起業するなら考えたい「理念」についてお話しします。有名起業家は、どのような理念のもとで創業したのでしょうか? 「心に響く理念と言葉」もあわせて紹介します。
起業に理念が必要な理由
理念とは、簡単に言えば「考え方」です。「なぜ」起業するのか、と言っても良いかもしれません。経営理念ならば経営に対する考え方であり、企業理念であれば「こういう企業であるべきだ」という考え方をあらわします。
経営理念は、起業して様々な迷いや困難に直面した際の羅針盤、判断基準になります。ここがブレてしまえば、判断や発信に一貫性がなくなり迷走してしまいます。お客様も不安、不信を感じてしまうかもしれません。
私のこれまでの経験では、理念で間違えてしまう人には、以下の2タイプが存在します。
ひとつは、理念などは一切考えず「お金が欲しい」「自由になりたい」「時間が欲しい」と考える人です。もうひとつは「世界平和」「貧困撲滅」「女性の社会進出」など、大きな(大き過ぎる!?)理念を掲げてしまった結果、何もできない人です。どちらももちろん大切なことですが、少しだけ考えてみて欲しい部分があります。
前者は、確かに、自分自身の目標やなりたい姿を追うことでモチベーションアップになります。しかし、創業時から「私がお金持ちになるために、あなた協力しなさい。商品を買いなさい」という姿勢が見え過ぎていたら、周りの人はどんな感情を抱くでしょうか。それよりも「お客様のために」「従業員と一緒に」と言われたい人が多いでしょう。
後者もとても大切なことで、今は企業(起業家)にとってSDGsや偏見・差別のない社会を意識することは不可欠と思います。ですが「まだ小さな一個人(法人)のあなたに何ができるのか?」を考えた時、世界平和や貧困撲滅を目指すのならば、理念を掲げて大したことをしないよりも、隣にいる人の幸せを実現し、それを広げていく方が現実的で、実現可能だろうと思うのです。
10段先のゴールを目指すなら1段目を見つけよう
掲げた理念が今の自分の実力(お金・知識・経験・人脈など)で考えた時、10段先の姿になっていることは少なくありません。ですが、本人がそこに気づかない場合、迷走することになります。原則、階段は1段ずつしかあがれないのです。
今注目のイェール大学助教授の成田悠輔さんが出演されたYouTube動画で、起業迷走中の女子大生にされたアドバイスは興味深かったです。
成田悠輔さんは「女性の社会進出に興味があるので絶対に自分で起業したいっていう気持ちはあります」と語った女子大生に対して、淡々と以下のようにアドバイスされました。
女性の社会進出ってことを目指すなら、起業とか中小企業より、むしろ大企業とか官庁とか 政治とか、そういう世界の方が深刻じゃないですか。中小企業の社長さんとかだと女性の割合って相対的には高くて、それがすごい低いのが上場企業みたいな大企業の社長さんとか 政治の世界の女性政治家とかそういうのが少ないわけですよね。だから女性の社会進出っていう問題に一番取り組むんなら、スタートアップみたいな世界よりはむしろエスタブリッシュメント側というか、権威側の方が問題は深刻なんじゃないかっていう気もするんですけどどうですか?
言われてみれば確かのその通りです。女性の社会進出を阻んでいるボトルネック部分の改革はスタートアップでどうにかできることではありません。彼女はアプローチを間違えているか、単にマーケティング的に女性を相手にしたビジネスをやりたいのか、ズレが生じてしまっているのかもしれません。(※実際、頭でっかちになってしまっているようでしたので、今の彼女に必要なことはインプットではなく、まずは自己との対話なのかなと感じました。)
自己利益が大事なのは当たり前。でも同時に「人のため」でありたい
起業直後は「人のため」と考える余裕はないかもしれません。しかし成功している有名起業家の中には、理念を大切にしてきた経営を感じさせる人もいます。
「国利民福」カルピス株式会社創業者・三島海雲
乳酸菌飲料で有名なカルピスは、1878年生まれの三島海雲によって創業しました。モンゴル人が体力に恵まれている理由は「白い汁にある」と考え、持ち帰って研究しカルピスを完成させました。
三島海雲は「国利民福」の精神を大切にしていました。国利民福とは「国の利益と民の幸福を常に考えて次号を行う」ということです。そして「私心を離れよ。そして大志を持て」とも言っています。自分の利益を追求するのではなく、もっと大きな国や人々のためになることを目標として掲げなさいという意味でしょう。
起業するときには、社会の利益どころか、自分の利益を確保するだけでも大変なことです。しかし、森ビル創業者の森泰吉郎も「儲けを無視することはできないが、儲けに走ると社会的な機能を忘れてしまう。お役に立ちたいという気持ちでやると多くの人々に報いて結果的に儲けにつながる」と言っています。
カルピスの経営理念は「魅力と価値のある商品や技術を提供して、心とからだの健康に役立ち、社会に貢献できる企業グループを目指します」です。創業者の理念を守り人々の心とからだの健康を優先してきたからこそ、人々に信頼され長く続く企業に成長したのではないでしょうか。
「先義後利」大丸創業者・下村彦右衛門正啓
大丸を創業した下村彦右衛門正啓は、1688年に生まれ19歳で大文字屋を開業します。当時から「先義後利」の精神を商訓としています。先義後利とは、義を先にして利を後にするものは栄え、利を先にして義を後にするものは辱められるという意味です。つまり「目先の利益にとらわれて客の信用をなくすような商売はするな」ということでしょう。
商売は、信用をコツコツ積み重ねていくことが長続きさせるコツです。信用は、たった一度の失敗でガラガラと崩れるものです。先義後利の精神は、現在の大丸の商訓として受け継がれています。
起業のヒントにもなる有名起業家の理念
起業するとき、勇気が欲しくなることがあります。そんなときに、背中を押してくれる有名起業家の理念を紹介します。
「Q・S・C+V」日本マクドナルド創業者・藤田田
この記事を読んでくださっている方で「マクドナルド」を知らない人はいないでしょう。しかし、マクドナルドが日本に上陸した当時はハンバーガーを知っている人は少数派で、日本で定着するか懐疑的な人も多かったことでしょう。
マクドナルドは「Q・S・C+V」をポリシーにしています。Qは品質、Sはサービス、Cは清潔、そしてVは価値です。「品質とサービスと清潔」は、すべての会社に共通して求められることです。最後の価値は、捉え方によって変わります。藤田田は「みんながダメだというから成功する」と言っています。「みんなが良いと言うことはそれだけ競争が多いから成功がおぼつかない」とも言っています。
起業するとき、多くの人に反対されると自信をなくしてしまうかもしれません。しかし、人と同じことをやっても魅力は少なくブランディングは難しくなります。せっかく起業するなら人の目を気にせず、自分がやりたいことを思い切りやったほうがいいのではないでしょうか。
「3つのDNA」ユニ・チャーム創業者・高原慶一朗
ユニ・チャームには創業当初から引き継がれている「3つのDNA」と呼ばれている理念があります。「変化価値論」「原因自分論」「尽くし続けてこそNO1」が3つのDNAですが、中でも「変化価値論」は創業者の「企業は経営者の器以上に大きくならない。器をどのように大きくしていくか考える必要がある」という言葉を受け継いでいます。
変化価値論は、自ら変化し自己成長に繋げ新価値を創造という意味です。起業すると、商品を発売できた、法人を作ったなど、ひとつのゴールを達成したような感覚になります。しかし、それはただのスタートであり、そこからが勝負です。
起業の覚悟が伝わる有名起業家の理念
最後に、有名起業家がどのような覚悟で創業したのかがわかる理念をご紹介します。
「不退転の意志」日本ハム創業者大社義規
日本ハムの経営理念の中に「高邁な理想をかかげ、その実現への不退転の意思をもって行動する」があります。不退転とは「あきらめないこと」をとても強く言いあらわした言葉です。
日本ハム創業者の大社義規は「うまくいかないときでも辛抱して持ちこたえていれば運が開けてくる」と言っています。
起業しても、順風満帆に進むとは限りません。「やっぱり起業は難しい」と諦めたくなることもあるでしょう。しかし「不退転の意志」を持っていれば、そこで堪える選択肢以外にも、「ではどうすれば生き残れるのか」「ダメージを小さくできるのか」を考えることができるようになります。
おわりに
理念と言うと「高尚な目標を掲げなくてはならない」と思うかもしれません。しかし日本ハムの創業者のような「決意」も立派な理念です。強いだけではなく柔軟な「諦めない」「何とかしよう」という気持ちは、起業に一番必要な理念かもしれません。
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