趣味を仕事にしたいけれど値段をつける自信がない? 最初の一歩の決め方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

手芸が趣味で、作ったものを「売ってみたら?」と言われることがあります。自分でも仕事にできたらと思うのですが、お金を取れる気がしません。

趣味で作ったものにお金をいただくのは図々しい気もしますし、いざ値段をつけようとすると、いくらが正しいのか分からなくて手が止まってしまいます。どうやって値段をつければいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

先に申し上げると、最初の値段は、計算で正しく決めるものではありません。正しい金額を探そうとして止まっている人が、実はいちばん多いのです。相場を調べ、原価を足し、時給で割り戻す。そうやって出てきた数字を前にしても、「本当にこの値段で払ってもらえるのか」という不安は消えません。値段への自信は、机の上の計算ではなく、最初の一人が実際にお金を払ってくれた経験から生まれてきます。

「お金を取れる気がしない」という感覚は、よく分かります。私はこれまで延べ6万人の会社員と起業の準備に向き合ってきましたが、趣味を仕事にしたい方のほとんどが、商品の出来よりも先に、この値付けの場面でつまずきます。ですから、まずはその気持ちの正体を分けて見ていきましょう。

「お金を取れる気がしない」を3つに分けてみる

ひとことで「自信がない」と言っても、中身はだいたい3つに分かれます。自分がどれに当てはまるかが見えると、対処の方向が違ってくるからです。

  • プロじゃない型:
    資格も実績もないのにお金をもらうのは早い、と感じているタイプです。
  • 図々しい型:
    趣味で楽しんで作ったものに対価を求めるのは、なんだか厚かましいと感じるタイプです。
  • 正解探し型:
    いくらが正しい値段なのか分からず、調べるほど決められなくなるタイプです。

3つに共通しているのは、自分の中だけで答えを出そうとしている点です。プロかどうかも、図々しいかどうかも、正しい金額がいくらかも、頭の中で考えているうちは永遠に決着しません。判断する材料が、自分の外にしかないからです。

規模の感覚を、ひとつ数字で押さえておきましょう。日本政策金融公庫の「2023年度起業と起業意識に関する調査」(2024年公表)では、本業のかたわら事業を営むパートタイム起業家のうち、月商が50万円未満の人が92.8%を占めていました。

趣味から始めた人の多くは、最初から大きな商いをしているわけではありません。そのぶん、最初の値段に重い責任を負わせる必要もないのです。小さく付けて、小さく試せばいい段階だということです。

では、最初の値段はどう決めればいいか

正しい一発の金額を狙うのをやめて、「払ってもらえるかどうかを確かめる値段」を置く、と考え方を切り替えてみてください。やることは、それほど多くありません。

  • 同じものの相場をざっと見る:
    似た作品が、どのくらいの幅で売られているかを上下5件ほど眺める程度で十分です。
  • 材料費に手間を少し乗せる:
    材料費だけでは赤字になります。作る時間への気持ちを、控えめでいいので足します。
  • 相場の真ん中あたりに置く:
    高すぎず安すぎず、まず一度払ってもらえる位置に仮の値段を決めます。

大事なのは、その値段を正解として確定させないことです。あくまで「最初の一人に確かめてもらうための仮の値段」です。実際に払ってもらえれば、その金額は妥当だったと分かります。逆に、欲しいけれど高いと言われたなら、そこから調整すればいいだけです。机の上の計算では出てこなかった答えが、たった一度の取引で見えてきます。

起業18フォーラム会員の水谷さん(仮名・40代・事務職)も、ここで長く立ち止まっていた一人でした。手芸が趣味で、編んだ小物を友人に褒められても、「お金をもらうなんて」と笑ってかわしてきたそうです。相場を調べては「自分のはこんな値段をつけられるものじゃない」と引っ込め、半年ほど一つも世に出せずにいました。

流れが変わったのは、知人の子どもへの贈り物として小さなポーチを頼まれ、「材料費だけでいいから」と渡そうとしたときです。相手が「ちゃんと払わせて。これだけ手がかかっているものを、タダみたいな値段で受け取るほうが落ち着かない」と、きちんと代金を置いていきました。

そのとき水谷さんは、自分の中だけで決めかねていた「払ってもらっていいのか」という問いに、初めて外から答えが返ってきた気がした、と話してくれました。値段をつけていい、と腑に落ちた瞬間だったそうです。

そこから水谷さんは、相場の真ん中あたりに仮の値段を置いて、まず身近な人に声をかける形で売り始めました。今では受注制で月に数点を作り、材料費に手間を乗せた値段でも「むしろ安いくらい」と言ってもらえる常連さんが、ぽつぽつと増えてきています。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書いたのですが、最初のお客様は、たった一人でいいのです。その一人を徹底的に満足させられれば、起業は9割うまくいったようなものだと、私は考えています。値段の自信も同じで、一万人に問う必要はありません。目の前の一人が払ってくれた、その一度の事実が、あなたの値付けを支える最初の根拠になります。

今日できることは、信頼できる身近な一人に「試しに一つ作らせて」と声をかけてみることです。無料で渡すのではなく、仮の値段を添えて差し出してみてください。その人が払ってくれるか、いくらなら払うかという反応こそ、いくら調べても出てこなかった、あなたの値段の手がかりになります。

完璧な料金表を作ってから動こうとすると、たいてい何も始まりません。先に一人へ届けて、その反応を見ながら値段を育てていく。趣味を仕事にする入り口は、たいていそういう順番になっています。

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お金を取れる自信は、性格や才能の問題ではなく、払ってもらえた経験があるかどうかの差です。その最初の一度を、どうか自分から取りにいってみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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