商品を増やすタイミングはどう見極める? 季節の谷を埋める2本目の柱の育て方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

自分で作った雑貨をネットショップで販売しています。ひとつの商品がようやく売れ始めました。2本目はいつ、どう増やせばいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

最初にひとつ伺います。いま2本目の候補として頭に浮かんでいるのは、「自分が次に作りたいもの」でしょうか。それとも「お客様から頼まれているもの」でしょうか。

どちらと答えるかで、2本目の育ち方は大きく変わります。2本目の商品は、競合の品揃えからではなく、いまの商品を買ってくれたお客様の「ついでの困りごと」から選ぶのが、いちばん外しにくい増やし方です。増やす時期も、「売れ始めて何ヶ月たったか」という暦ではなく、1本目に2回目の注文や名指しの依頼が出始めたかどうかで判断します。

その前に、ご質問の裏にある気持ちに触れておきます。「1本に頼ったままで大丈夫か」という不安と、「広げて全部が中途半端になったらどうしよう」という怖さ。相談の場では、この二つの間で足が止まっている方によくお会いします。

1本に頼る不安のほうは、気のせいではありません。中小企業庁がまとめた2025年版小規模企業白書では、小規模事業者の経営課題として「受注・販売の拡大」や「人材確保」、「事業承継」などが重く扱われています。売上をどう確保し続けるかは、小さな商いに共通する長い宿題です。

だからこそ、2本目の柱を考えること自体は正攻法です。問題は、増やし方の向きだけです。

競合の棚を見て増やした2本目が動かなかった話

起業18フォーラム会員の浅倉さん(仮名・40代)は、ネットショップで名入れの入園・入学グッズを販売しています。最初の商品が軌道に乗ったのは、開店から半年ほどたった春のことでした。

勢いのあるうちに店を大きく見せたいと考えた浅倉さんは、人気店の品揃えを参考に、北欧調の生活雑貨や手帳カバーなど6品目を一気に追加しました。ところが、これがほとんど動きません。写真も説明文も丁寧に整えたのに、半年で売れたのは数えるほどでした。在庫と撮影の手間だけが増え、肝心の1本目の発送までが遅れがちになったそうです。

うまくいかない増やし方には共通点があります

浅倉さんのつまずきは、特別な失敗ではありません。2本目の相談を受けるとき、私はまず「その候補は、誰の顔を思い浮かべて選びましたか」と尋ねるのですが、答えに詰まる方の増やし方はだいたい似ています。

うまくいかない2本目の増やし方

  • 競合の棚から選ぶ:
    人気店の品揃えを参考に、自分のお客様が誰かを見ないまま品数を足す形
  • 作りたい順に足す:
    「次に作りたいもの」を優先し、誰にも頼まれていない商品が並ぶ状態
  • 勢いで一気に増やす:
    繁忙期の手応えのまま複数品目を同時に出し、どれも磨き込めない展開

共通しているのは、増やす先を「外」にばかり求めていることです。売れ始めた1本目のまわりには、次の商品のヒントを持ったお客様がすでに集まっています。見るべき場所は、競合の棚ではなく足元にあります。

拙著『起業神100則』に、「個人は競合分析よりも顧客分析」と書いたことがあります。隣の店ばかり見ていても、目の前のお客さまには届かないからです。この則がいちばん効くのが、まさに2本目選びの場面だと感じています。

浅倉さんが向きを変えたきっかけも、お客様の声でした。起業18の勉強会でこの話を聞いたあと、同梱カードで任意にお願いしていたアンケートを読み返したところ、自由記述の欄に「下の子の出産祝いに名入れのスタイがあれば一緒に頼みたかった」「祖父母への記念品も名前入りでお願いできたら」という声が、以前から届いていたことに気づいたといいます。

2本目は、ここから選び直されました。出産祝い向けの名入れスタイとタオルのセットです。入園・入学の春に注文が集中する1本目と違い、出産祝いは一年を通して注文が入ります。

切り替えから1年ほどで、月の売上はおよそ10万円になりました。いまは2本目が売上の3〜4割を安定して受け持ち、夏場に深かった売上の谷が目に見えて浅くなっています。セールで埋めていた閑散期に定価の注文が立つようになったことが、何よりの安心材料だったと浅倉さんは振り返ります。

2本目に動く前の点検リスト

浅倉さんの経験を、誰でも点検できる形に直します。増やしどきは暦ではなく、次の3つのサインで確かめてください。

2本目に動く前の点検リスト

  • 2回目の注文:
    1本目にリピートや名指しの依頼が出始めている
  • ついでの声:
    「ほかにもありますか」「これも頼めますか」と聞かれた記録が具体的にある
  • 回す余力:
    1本目の納品や発送を遅らせずに、新しい商品を磨く時間を取れる

3つすべてに丸が付くなら、増やしどきです。ひとつでも欠けているなら、2本目より先に1本目の足場を固めるほうが、結果的に近道になります。

丸が付くか自信がないときは、次のご注文へのお礼メッセージに「ほかに困りごとはありませんか」とひと言添えて、お客様に直接聞いてみてください。返ってきた言葉が、そのまま2本目の候補になります。

声を集める段階では、まだ何も作らなくて構いません。減るものはありませんし、聞かれたお客様も悪い気はしないものです。

候補が見えたら、最後に数字をひと組だけ確かめます。その候補が「1件いくらで、月に何件売れたら売上の3割を受け持てるか」を、一度だけ計算してみてください。月1万円の柱なのか3万円の柱になり得るのかが見えると、どれから出すかの迷いが消えます。

商品を増やすことは、店を外へ広げる作業のように見えて、実際はいちばん近くのお客様を深く知る作業です。1本目を信じて買ってくれた人の「ついで」に応える2本目は、最初から味方のいる場所で育っていきます。

最初の顧客をリピーターにするための方法を教えてください。継続顧客の作り方は?
● 質問 起業準備で初めての顧客にサービスを提供することができました。とても喜んでいただけたのですが、そのまま

2本目を出す日を、今週中に決める必要はありません。1本目が信頼を集めているあいだに、お客様の声は静かにたまっていきます。3つのサインがそろってから動いても、十分間に合います。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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