記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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高原の澄んだ空気のなかで、自分の小さな仕事を始める。そんな暮らしを思い描いて御代田町を調べはじめた方は、きっと一度は「こんな町で本当に食べていけるのだろうか」と立ち止まったはずです。憧れだけで動くのは無謀ではないか、という不安は当然のものです。
私はこれまで6万人を超える会社員の起業準備に向き合ってきましたが、移住して何かを始めたい人の悩みは、景色の良し悪しではなく「収入がひとつしかないと怖い」という一点に集まります。
御代田町は軽井沢の隣にありながら家賃を抑えやすく、移住して仕事を作るのに向いた条件がそろっています。この記事では、町の支援制度と現実的な収入の組み立て方を順に整理していきます。
御代田町はどんな町か:軽井沢の隣で移住者が増えている

人口が増え続けている数少ない町のひとつ
御代田町は長野県北佐久郡にある、軽井沢町の西隣の町です。町の発表では令和8年6月1日現在の人口は17,010人で、前年同月より増えています。全国の多くの自治体が人口を減らすなか、御代田町は2020年から2023年にかけて人口が増えた長野県内でも数少ない町のひとつに入りました。
総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告でも、都市部から地方への移住の動きが続いていることが示されています。増えているのは移住者と子育て世帯です。
増えている理由は、暮らしのバランスにあります。軽井沢ほど地価や家賃が高くなく、それでいて高原の自然と買い物のしやすさが両立しています。アクセスも悪くありません。御代田駅はしなの鉄道線にあり、軽井沢駅までおよそ14分です。軽井沢駅からは北陸新幹線で東京方面へつながり、御代田駅前からは池袋駅東口行きの高速バスも出ています。
移住して起業する人が使える支援制度

UIJターンの就業・創業移住支援事業補助金
御代田町には、東京圏などから移り住んで働く人や事業を始める人を後押しする補助金があります。令和8年度の御代田町UIJターン就業・創業移住支援事業補助金では、単身の世帯で60万円、2人以上の世帯で100万円が支給され、18歳未満の家族を連れて移住する場合は1人につき100万円が加算されます。子育て世帯ほど手厚くなる設計です。
ただし、誰でも自動的に受け取れるわけではありません。移住元や転入後の期間に条件があり、創業で申請する場合は、別に長野県の創業支援金の交付決定を受けていることが前提になります。金額や条件は年度ごとに見直されるため、最新の内容は町の窓口で確かめてください。
- 支給額:
単身60万円・2人以上世帯100万円・18歳未満の家族1人につき100万円加算 - 創業での申請:
長野県の創業支援金の交付決定が前提(地域課題の解決につながる事業が対象) - 相談窓口:
御代田町 産業経済課 商工観光係(移住と創業の相談を受け付け)
補助金や支援金は強力な後押しですが、使うのは方向が決まってからです。何を売るのかが見えていない段階で窓口へ行っても、担当者も答えに困ります。「何で食べていくか」を先に固め、補助金はそれを実現するための道具として後から使ってください。
御代田で現実的に始めやすい仕事の作り方

いきなり移住より「通いながら」のほうが失敗しにくい
高原での起業というと、カフェやゲストハウスを思い浮かべる方が多いものです。けれど、移住していきなり店を構えるのは、最も難易度の高い始め方になります。御代田町は移住・子育て世帯が増え続けている町なので、観光客向けの商売だけでなく、町に暮らす人や近隣の事業者に向けた仕事のほうが、現実には立ち上げやすい面があります。
まず勧めたいのは、東京の会社で続けてきた仕事をそのまま持ち込む形です。リモートで本業を続けながら御代田に住み、休日や夜の時間で地域に根ざした小さな仕事を育てる。最初から移住を決め込まず、関係人口として通ううちに人とのつながりを作っていく方法です。
収入をひとつに頼らない「複線化」という考え方
ここで効いてくるのが、収入の流れを複数に分けておく発想です。拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』。この中で、大きな蛇口を1本ひねるより、小さな流れをいくつも持っておくほうが安定する、という考え方を紹介しています。小さな流れをいくつも作っておくと、やがてその流れと流れが結びついて、思わぬ仕事につながっていきます。
たとえば、本業のスキルを活かしたオンラインの仕事をひとつの流れとし、もうひとつは地域の事業者向けの発信や事務の手伝いを置く。さらに、御代田の暮らしそのものを記録して発信する。この3つはばらばらに見えて、続けるうちに「町のことに詳しくて、外の仕事の進め方も分かる人」という一本の評判に育ちます。御代田のように移住者が増える町では、地域と外をつなげる役割そのものに需要が生まれます。
- 本業を持ち込む流れ:
会社で続けてきた仕事をリモートで継続し、移住後の生活の土台にする - 地域に向けた流れ:
近隣の事業者の発信・事務・運営の手伝いなど、町のなかで頼まれる仕事 - 暮らしを発信する流れ:
御代田での移住生活や子育てを記録し、同じ町に関心を持つ人に届ける
3つそろえる必要はありません。まずはひとつ、確実に手を動かせるものから始めれば十分です。
同じ条件の地方でよく見る進み方

移住相談会で「自分にできること」を言葉にする
御代田町のような人口17,000人ほどの町では、特定の誰かを想像させる作り話をするより、近隣で実際に起きやすい進み方を見たほうが役に立ちます。長野県内・近隣の40代会社員のケースを、よくあるパターンとしてお話しします。
転職や役職定年を機に「この先、会社の給料だけで大丈夫か」と考えはじめた方が、移住相談会に足を運ぶことがあります。そこで地元の事業者から「この土地で何ができますか」と聞かれ、本業で培ったスキルが地域でどんな価値を持つのかを、初めて自分の言葉にする。これが大きな転機になります。
最初は自己流で「東京の仕事をそのまま売ろう」としてうまくいかず、勉強会で対象を町の事業者に絞り直したことで、ようやく相手の困りごとと自分のスキルがかみ合いました。
数字より「頼まれる回数」が増えていく
こうした方の手応えは、月の売上が一気に跳ね上がる形では現れません。関係人口として町に通ううちに、地元事業者からの依頼が少しずつ増えていくという形で表れます。最初の半年は単発の手伝いが数件だったのが、一年ほど経つと「あの人に頼めば分かる」と名指しで声がかかるようになる。件数が積み重なって信頼に変わり、その信頼が次の依頼を連れてくる。
これは御代田に限らず、移住者が増える地方の町で繰り返し見てきた進み方です。派手な逆転劇ではなく、通った回数が仕事に変わっていく地道な流れだと考えてください。
御代田で一歩を踏み出すために、今できること

まず方向を整え、それから町の窓口へ
移住して御代田で起業する道は、順番を間違えなければ決して無謀ではありません。先に「自分は何で食べていくか」「どんな小さな流れを持てるか」を整えてください。起業18フォーラムでは、勤めているうちにこの土台を作る進め方を扱っています。
方向が見えてきたら、御代田町の移住相談や創業支援の窓口を活用し、関係人口として通うところから少しずつ近づいていく。一気に全部を移すのではなく、お試しで通う段階を挟むことで、暮らしと仕事の両方を確かめながら進められます。

会社の名刺で勝負してきた人にとって、自分の名前で掲げる看板は心細く感じるものです。けれど、御代田という土地の名を冠した小さな一枚は、会社から借りた肩書きとは違う重みを持ちます。まずは御代田町の産業経済課 商工観光係に一本、創業の相談ができる窓口があるかを尋ねてみてください。その電話が、高原での暮らしと仕事を地に足のついたものに変えていく最初の一歩になります。
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