記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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徳島県名西郡神山町。人口は4,600人ほどの小さな山あいの町ですが、IT企業のサテライトオフィスが集まる場所として全国に名前が知られるようになりました。「こんな町で本当に起業できるのか」と感じる方もいるかもしれません。けれど神山町には、よそから来た人や新しい挑戦を静かに受け止めてきた土壌があります。
ここでは、神山町で起業を考え始めた方に向けて、最初の一歩からの流れを順を追って整理します。町の特徴をつかみ、自分の事業の形を小さく試しながら育てていく道筋が見えてきます。
神山町という土地の成り立ちを知る

神山町は徳島市から車で40分ほど。四方を山に囲まれ、鮎喰川が町の中心を流れています。かつて林業や農業で栄えたこの町も、人口減少と高齢化からは逃れられませんでした。
神山町の人口は近年、4千人台で推移しています。総務省統計局「人口推計」などの公的統計からも、地方の小規模自治体では人口減少と高齢化が続いていることが分かります。1950年代の2万人規模だった時期と比べると、神山町も大きく人口が減っています。
転機は2010年でした。名刺管理サービスで知られるSansanが、古民家を改装してサテライトオフィスを開いたのです。移住と企業誘致を後押ししてきたのは、地域に根ざして活動してきたNPO法人グリーンバレーでした。以来、IT・クリエイティブ系を中心に十数社が拠点を構えています。
移住してくるのは30代を中心とした働き盛りの世代が多く、子育て中の家族連れも目立ちます。会社を辞めずに二拠点で関わり始め、半年から1年ほどかけて少しずつ生活の軸を移していく人も少なくありません。
20代でサテライトオフィスに勤めながら空いた時間に自分の事業を試す人もいれば、40代で長年の経験を活かして地域資源の事業に乗り出す人もいます。こうした多様な関わり方の積み重ねが、起業を考える人にとっての追い風になっています。
自分の事業が町に合うかを見極める

起業の手順として最初にやるべきは、派手な計画づくりではありません。自分のやりたいことが、この町の暮らしや人の流れと噛み合うかを確かめることが先になります。神山町に集まってきた事業を眺めると、ある傾向が見えてきます。
ひとつは、場所を選ばない仕事です。Web制作、デザイン、執筆、オンライン教育といった、通信環境さえあれば成り立つ業種は神山町と相性がよく、多くの移住者がこの形で活動しています。もうひとつは、地域の資源を活かす仕事です。農産物の加工、古民家を使った宿泊や飲食、林業に関わる新しい試みなどがあります。
町の人口規模を考えると、町内だけを相手にした商売は規模が限られます。だからこそ町の外とつながる事業の形を最初から描いておくことが大切になります。地元で暮らしながら、仕事の相手は全国に持つ。神山町で続いている起業には、この二重構造がよく見られます。いわゆる関係人口として町に関わりながら、東京と神山町の二拠点で事業を進める形も現実的な選択肢です。
まず小さく試してから事業の形を決める

神山町のような小さな町で起業するとき、いきなり大きな設備や店舗を構えるのは危険です。最初は手持ちのもので回せる最小の単位から始め、手応えを見ながら少しずつ育てていきましょう。この進め方なら、町の規模にも自分の資金にも無理がありません。
たとえば飲食をやりたいなら、まずは週末だけの間借り営業や、イベント出店から試す方法があります。宿泊業を考えているなら、空き家の一室から小さく貸し出してみる手もあります。最初から完成形を目指さず、実際にお客さんの反応を確かめながら事業の輪郭を整えていくのです。失敗してもやり直せる大きさにとどめておくことが、長く続けるための土台になります。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』にも書いたのですが、一年目に大切なのは大きく賭けることではなく、小さく試して反応を確かめる回数を増やすことです。地方での起業ほど、この考え方が効いてきます。神山町で根を張った事業の多くも、最初は一人や二人の手仕事から始まっていました。
神山町ならではの環境を味方にする

神山町の強みは、新しいことに挑戦する人を受け入れてきた歴史です。神山まるごと高等専門学校の公式情報でも、テクノロジー・デザイン・起業家精神を教育の柱に掲げていることが示されています。町ぐるみで起業家を育てようとする空気が、この学校の存在からも伝わってきます。
移住者が多い土地は、よそ者への距離が近いという利点もあります。サテライトオフィスで働く人、自分で事業を起こした人、もともと町で暮らしてきた人。立場の違う人どうしが緩やかにつながり、情報や仕事が回っていきます。起業の相談相手や、最初のお客さんが、この人のつながりから生まれることも少なくありません。
地方で自己流のまま始めて、3ヶ月目あたりまで空回りで過ごす方は少なくありません。集客を地元の口コミだけに頼り、町の外に向けた発信が後回しになるパターンです。一方で、起業18フォーラムの勉強会で学び直し、「届けたい相手にどう知ってもらうか」を最初に設計してから動き出した方は、二拠点のまま安定して仕事を回せるようになっていきます。神山町のような町では、この差が事業の続き方を分けます。
使える制度を知り、順番を間違えない

地方での起業を考えると、補助金や創業支援の制度が気になるところです。徳島県や神山町には、創業や移住を後押しする相談窓口や支援策が用意されることがあります。制度は時期や要件で変わるため、利用を考える場合は町や県の最新情報を確認しておくと安心です。
ただし注意したいのは順番です。補助金ありきで事業を決めてしまうと、本当にやりたいことから離れてしまう恐れがあります。制度はあくまで、進む方向が定まった後に背中を押してくれる道具です。まずは自分の事業の核を固めることが先になります。
何から手をつければいいか、どんな順序で準備すればいいかを起業18フォーラムの動画やセミナーで整理してから、移住相談の窓口や具体的な補助金の申請へと進みましょう。方向性が定まらないうちに窓口を訪ねても、担当者も答えようがありません。基礎を学んで進む先を決めることが、結果的にいちばんの近道になります。

神山町は、小さくても外に開かれた町です。いきなり移住して全てを賭けるのではなく、まず関係人口として通いながら、自分の事業の芽を一つずつ確かめていく。その積み重ねの先に、この町で長く続く仕事の形が見えてきます。
神山町の起業まとめ

神山町での起業は、町の小ささを弱点ではなく、挑戦を受け止める土壌として活かすところから始まります。場所を選ばない仕事か地域資源を活かす仕事かを見極め、最小の単位から小さく試し、町の外とつながる形を描く。制度は方向が定まってから使う道具と心得る。この順番を守ることが、神山町で事業を根づかせる近道になります。
よくある質問

Q.神山町で起業するのに、移住は必須ですか?
必ずしも移住が前提ではありません。サテライトオフィスのように、二拠点で関わりながら事業を進める形もあります。ただ、地域の資源を活かす事業や人のつながりを土台にする場合は、暮らしながら関わるほうが進めやすい場面が多いでしょう。
Q.人口4千人台の町で、お客さんは足りるのでしょうか?
町内だけを相手にすると規模は限られます。だからこそ、町の外とつながる事業の形を最初から描いておくことが大切です。神山町で続いている起業の多くは、暮らしは町内、仕事の相手は全国という二重構造を持っています。
Q.資金が少なくても始められますか?
最小の単位から小さく試して育てる進め方なら、限られた資金でも始められます。週末営業や空き家の一室からといった形で手応えを見ながら広げれば、失敗してもやり直せる大きさにとどめられます。
Q.補助金はいつ調べればいいですか?
制度があること自体は早めに知っておいてかまいません。ただし申請は、事業の方向性が固まってからにしましょう。補助金ありきで事業を決めると、本来やりたいことから離れてしまう恐れがあります。基礎を学んでから窓口へ進む順序がおすすめです。
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