記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「定年退職してからゆっくり起業を考えればいい」と話す方が多いのですが、起業18フォーラムの相談現場で見てきた限り、その順番では半年経っても具体的な行動に進めない方が大半です。
50代後半の方ほど「定年前から積み上げる」「定年と同時にすでに収入源が動いている」という設計が現実的になります。
この記事では、50代後半の方が定年までの残り5年から7年で起業準備を進めるための「3つの収入源づくり」を、実際の会員さんの事例を交えて整理します。
50代後半の起業準備が「定年前スタート」で変わる理由

厚生労働省『雇用動向調査』(令和5年)によると、55歳以上の転職入職者は若年層と比べて転職前後の賃金変化で「減少」と回答する割合が高い傾向が示されています。具体的な減少幅は個人差がありますが、定年後の再就職で収入水準を維持するハードルは高いという傾向が読み取れます。
このデータが示唆するのは、定年後にゼロから起業を考え始めても、生活費の圧迫と精神的余裕のなさで判断が鈍りやすいということです。起業18フォーラムの26年・60,000人以上の支援実績では、定年後にゼロから起業準備を始めた方より、定年前に3年から5年かけて準備した方のほうが、起業1年目の生存率が高い傾向があります。
ここで会員さんの事例を紹介します。Bさん(56歳・男性・大手電機メーカー営業部長・妻子持ち・住宅ローン完済)は、定年まで残り4年というタイミングで起業18フォーラムに参加されました。最初は「営業しか経験がない自分に何ができるか分からない」という状態でしたが、半年後には「自分の中に売れるものが3つもあった」と気づくことになります。
50代後半に必要な収入源は1つではない
50代後半の起業準備で重要なのは、収入源を1つに絞らないという発想です。理由は2つあります。
- 1つに依存するリスク:
体力・健康面で予測できない変化が起きやすい年代 - 本業スキルの分解:
30年積み上げたスキルは本人が思うより多面的・複数の収入源に分解可能
Bさんが最初に立てた仮説は「再就職か顧問契約か」の2択でした。しかし起業18の勉強会で「営業スキルの棚卸し」をしたところ、営業マネジメント・新規開拓・既存顧客深耕という3つの強みが浮き上がりました。
収入源①:本業スキルを切り出した「教える系」収入

最初の収入源は本業スキルを切り出した「教える系」収入です。50代後半の会社員が30年積み上げたスキルは、20代後半から30代前半の若手社員にとって「知りたいけど社内では聞きにくいこと」の宝庫になります。
自分の中に当たり前にあるスキルこそ、外から見ると「お金を払ってでも教わりたいスキル」になっている可能性があります。営業の方なら新規開拓の声かけ方法・既存顧客との関係維持・提案資料の構造化、というように30年で当たり前になった動きを言語化することが第一歩です。
ここで拙著『起業神100則』にこう書いています。資格や肩書きには載らない「名もなき強み」を棚卸しすることが、結果としていちばん早く受注に届く道だ、という話です。50代後半の場合、職務経歴書には書きにくい暗黙知ほど価値があります。
- MENTAやストアカで月額プラン:
中位帯1万5千円から3万円で本業の業界知識を継続提供 - 業界縛りで価格決定権を持つ:
「○○業界向け営業の悩み相談」のように業界を絞ると単価が上がる - 本業との切り分け:
就業規則の確認・競業避止義務の確認を最初に行う
Bさんは月1万8千円のメンタリングプランをMENTAで開設し、半年目に月3名の継続契約者を獲得しています。本業の電機メーカー営業の経験を「BtoB営業の困りごと相談」として打ち出した結果でした。
収入源②:本業時代の人脈を活かした「紹介・仲介」収入

ふたつ目の収入源は本業時代の人脈を活かした「紹介・仲介」収入です。30年勤めた会社で築いた取引先・関係会社・元同僚・元部下とのネットワークは、定年退職と同時に切れるわけではありません。
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、兼業時の労働時間、健康管理、秘密保持、競業避止などを整理しています。定年前から準備する場合、就業規則の確認と利益相反の整理が前提になりますが、定年後に動かす収入源として人脈活用は現実的な選択肢です。
人脈の棚卸しは「過去5年に連絡を取った相手」「現在も年に1回は連絡を取り合う相手」を50名から100名リストアップすることから始めます。リストの中から「自分が紹介役に立てる相手」と「相手が困っている領域」を線で結ぶことで、紹介・仲介の機会が見えてきます。雇用契約を伴う社外活動と、個人事業として受ける仕事では労働時間管理や責任範囲の考え方が変わるため、契約形態と勤務先規程を分けて確認することが大切です。
具体的な紹介・仲介の例を3つ挙げます。
- 業界内マッチング:
中小企業の経営者と専門サービス提供者を繋ぐ紹介手数料モデル - 採用支援:
取引先の人材ニーズと信頼できる候補者をマッチング - 顧問契約:
30年の業界知識を週1回2時間の顧問アドバイスとして月額契約
Bさんは取引先の中堅電機メーカー2社と顧問契約を結びました。月額12万円(1社あたり)の契約で、月1回の経営会議オブザーバーと営業戦略アドバイスを提供しています。
収入源③:定年後の継続「ストック型」収入

3つ目は定年後も継続的に同額が入る「ストック型」収入です。教える系と紹介系がフロー型(毎月案件を取りに行く動き)であるのに対し、ストック型は1度仕組みを作れば翌月以降も同額が入る設計になります。
50代後半の方が定年前から準備しやすいストック型は次の3つです。
- 有料note・Brain・Substack:
業界知識を月額500円から1,500円で継続購読してもらう設計 - オンライン講座のサブスク:
StoresやBASEのコンテンツ販売機能で月額会員制を構築 - Kindle出版の印税:
本業の業界本を3冊から5冊出版すると合計月数万円のストック
Bさんは「BtoB営業マネジメント術」というテーマで有料noteの月額マガジン(月額980円)を始めました。定年前に半年で18本の記事を蓄積し、定年と同時に月額会員80名・月収約78,000円のストック型収入が動き始めています。
注意したいのは、ストック型は立ち上げから半年から1年は収入がほぼゼロという点です。教える系・紹介系の月収が安定してからストック型を積み上げる順番が現実的です。
定年までの5年で動かす行動順序

定年まで残り5年から7年というタイミングで、何から始めればよいかを順番で整理します。
- 定年5年前:
就業規則と競業避止義務の確認・自分のスキル棚卸し30項目作成 - 定年4年前:
教える系の小さなテスト(無料相談5件・有料相談3件)を実施 - 定年3年前:
人脈リスト100名作成・週1件の連絡再開・紹介事例の蓄積 - 定年2年前:
ストック型の仕込み(有料コンテンツ蓄積・SNS発信開始) - 定年1年前:
顧問契約2社の本格交渉・退職後のスケジュール設計
Bさんはこの順序で動いています。最初の1年は本業の繁忙期に重なってほぼ動けない時期もありましたが、起業18の勉強会に毎月参加することで「今月は何を進めたか」を月次でふりかえる習慣を作りました。

50代後半の起業準備は、定年後のゼロスタートではなく定年前の積み上げが現実的な選択肢です。まずは自分の本業スキルを棚卸しして「30項目書き出すワーク」から始めてみてください。本業時代の経験は、本人が思うより多面的で売れる形に分解できます。
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