記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
共働きで小学生の子どもがいます。平日は朝の準備と夜の寝かしつけで一日が終わり、土日は習い事の送り迎えと家事でつぶれます。起業準備をしたい気持ちはあるのに、まとまった時間も自由に使えるお金も見当たりません。
こういう状況でも、何かを始めることはできるのでしょうか?

● 回答
まとまった時間とお金を先に用意しようとするから、いつまでも始められません。共働きで子育て中の方は、その二つが一度に揃うことはまずないからです。起業準備は、すきま時間と少額のお金を前提に組み直すと、今の生活のまま動き出せます。
私はこれまで延べ6万人の会社員と向き合ってきました。その中でいちばん多い相談のひとつが、まさにこの「時間もお金もない」という声です。とくに共働きで子育て中の方は、自分の自由になる時間が一日のどこにも残っていないと感じています。ただ、現場で見てきた限り、うまく動き出した方ほど、足りないものを数える前に「今あるもの」から始めていました。
「揃ってから始める」がいちばん危ない
共働きで子育て中の準備でつまずく方には、よく似た入り方があります。先に時間とお金をきれいに確保しようとして、結局その確保自体が終わらないのです。次のような考え方には、いったん立ち止まってほしいと思います。
- 子どもが大きくなって手が離れてから本気を出す
- 準備のための資金が貯まってから商品をつくる
- 平日は無理なので、週末にまとめて数時間とる
どれも一見まじめな計画に見えます。けれど、子どもが手を離れる頃には次の出費が待っていますし、資金は「いくら貯まれば十分か」の線引きができません。週末のまとめ取りも、子どもの体調ひとつで簡単に崩れます。準備の前提を「まとまり」に置くと、共働き世帯では永遠に出発点に立てないのです。
内田さんが、平日の20分から動き出した話
起業18フォーラム会員の内田さん(仮名・30代後半・夫婦ともにフルタイム勤務・小学生の子が一人)も、最初は同じところで止まっていました。「土日にまとめてやろう」と決めては、子どもの予定でつぶれる。その繰り返しで、半年たっても企画書の一行も書けていませんでした。
転機は、自己流の「週末まとめ取り」をいったん手放したことでした。フォーラムの勉強会で「朝晩30分の積み上げ」という考え方に触れ、平日の朝、家族が起きてくる前の20分だけを準備にあてると決めたのです。やることも「今日は誰に向けたサービスかを一行書く」とだけ絞りました。お金も、最初の数か月はほぼかけていません。手元のノートと無料のサービスだけで、子育ての合間に試作を回していきました。
こうして小さく続けるうちに、内田さんは平日の細切れ時間で進める形を身につけていきました。準備開始から10か月目には、最初の有料サービスが月3件ほど安定して入るようになり、勤めを続けたまま月5万円ほどの収入が立っています。まとまった休みも、まとまった元手も、結局一度も使いませんでした。
時間とお金は「小ささ」を前提に組み直す
では、共働きで子育て中の方は、何から手をつければいいのでしょうか。鍵になるのは、時間もお金も「最初から小さく見積もる」という発想です。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、月5万円という金額を一つの区切りとして紹介しています。月5万円は、自分一人が手を動かす範囲でちょうど届く大きさで、外注や大きな仕組みをまだ持たない人にとって現実的な最初の目標になります。
同じ本の中で、私は「4500日理論」という考え方も取り上げています。平均寿命まで生きても、自由に動ける日を睡眠や仕事や通勤で削っていくと、本当に自分の意思で使える時間は4500日ほどしか残らない、という計算です。時間は無限ではないからこそ、揃うのを待つのではなく、今日の20分を準備に回す価値があります。
共働き世帯の準備は、この「お金は月5万円から、時間は一日数十分から」という小さな前提に組み直すと、ぐっと動きやすくなります。
- 準備にあてる時間は、平日の決まった20〜30分にひとつ固定する
- 最初の元手は、手持ちの道具と無料サービスで回せる範囲にとどめる
- 最初の目標金額は月5万円に置き、外注や設備投資は後回しにする
ここで一つ気をつけてほしいのが、時間とお金を同時に攻めないことです。共働きで子育て中は、片方を動かすだけでも生活への負荷があります。まず時間の置き場所を一つ決めて、お金のかからない準備から入ると決めてください。順番をつけるだけで、家庭との両立がずっと楽になります。
共働きは「不利」ではない
共働きで子育て中という状況を、起業準備のハンディのように感じている方は少なくありません。けれど、私はそうは見ていません。総務省の労働力調査(2024年)によると、共働き世帯は1,300万世帯にのぼり、専業主婦世帯の508万世帯を大きく上回っています。共働きで子育て中という暮らしそのものが、いまの日本では多数派なのです。
そのぶん、同じ忙しさを抱える人の悩みが、あなたにはよく見えます。時短の工夫、夫婦での家事の分担、子どもの送り迎えの段取り。そこで身につけた知恵は、同じ立場の人に向けたサービスの種になります。足りない時間とお金を嘆く前に、その暮らしの中にある経験を、一度棚に並べてみてください。
- 平日の20〜30分を準備の定位置にする
- お金をかけない試作から始める
- 同じ立場の人の悩みを自分の経験から拾う
大きな決断は要りません。今夜、寝かしつけのあとに、明日の朝の20分で何を一行書くかだけ決めておいてください。それだけで、止まっていた準備が動き始めます。

今日できることは、明日の朝の20分の置き場所を決めるだけで十分です。まとまった時間とお金は、その先で少しずつついてきます。
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