記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
5年の海外赴任から戻ってきたばかりで、日本側の人脈がほとんどゼロになっています。同期は転職や独立で散り散り、取引先の担当者も顔ぶれが入れ替わっていて、起業準備を始めたくても誰に相談したらいいか分かりません。
何から考えれば、無理なく動き出せるでしょうか?

● 回答
帰任直後の「日本側の人脈ゼロ」という感覚は、海外赴任を経験した方なら多くが通る入口です。ただ、ゼロに見えているだけで実際は休眠している関係が背中側に積み上がっています。最初にやるのは新しい人探しではなく、過去の名刺やメッセージアプリに眠っている旧知の現在地を一人ずつ確認することです。
外務省が公表する海外在留邦人数の統計(令和7年・2025年10月1日現在)によれば、海外に在留する邦人の総数は129万8,170人。長期滞在者の中で民間企業関係者は大きな割合を占めています。同時に毎年、帰任して日本の現場に戻る方が一定数います。あなたが今感じている断絶は、決して珍しい個別事情ではありません。
「人脈ゼロ」の正体を3つに分解する
帰任直後の人脈空白感は、漠然としているうちは動きにくいので、まず分解します。帰任予定者から私のところに届く相談を重ねると、だいたい次の3層に分かれます。
- 休眠人脈:
かつての同僚・取引先・同業の知人で、連絡が途絶えているだけの関係 - 縦の断絶:
業界の先輩・尊敬していたメンター格の人との接点が消えた状態 - 同時代の空白:
帰任後の今、同じ立場で動いている同世代との接点がない状態
休眠人脈は連絡を入れれば多くが復活します。難しいのは縦の断絶と同時代の空白で、ここを埋めない限り起業準備の判断軸が定まりません。海外赴任から帰った会社員が起業準備で立ち止まる原因の多くは、新しい人に会えないからではなく、相談できる先輩格と並走できる同世代がいないからです。
縦の繋がりは「一人の師」より「複数のメンター」で組み直す
赴任前にお世話になった一人の先輩を頼り直そうとして、連絡が取れなかったり立場が変わっていたりして落ち込む方がよくいます。ここで方針を切り替えてください。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』にこんな言葉があります。会社員気質と決別する方法のひとつは、会社の外に尊敬できるメンターを「複数」見つけること。一人ではなく何人でも、と紹介しています。海外赴任から戻った方ほど、この複数メンター発想が効きます。縦の繋がりを一人に依存させずに複数で持つと、相手の都合や立場の変化に左右されにくくなり、相談の角度も増えていきます。
複数メンターは、業界のベテラン一人だけでなく、起業の先輩・自分より少し進んでいる伴走者・別業界で似た悩みを越えた経験者、と役割を分けて持つのがやりやすい組み方です。
海外赴任から戻った葉山さんが、人脈を組み直していった話
起業18フォーラムの会員さんで葉山さん(仮名・40代後半・男性・電機メーカーの海外営業職・妻と高校生子1人)という方がいます。アジア圏に5年駐在して帰任した直後、日本側の人脈はほぼ消えていました。同期は転職、取引先は世代交代、業界の集まりも顔ぶれが入れ替わっていたそうです。
最初の半年は自己流で動きました。古い名刺帳を引っ張り出して片端からメールを送り、返信があった人には会いに行って近況を交換する。これはこれで悪くなかったのですが、半年経っても起業準備の方向は定まらなかったそうです。話を聞いてもらえる相手は増えても、自分のアイデアを率直に評価してくれる人がいなかったからでした。
流れが変わったのは、葉山さんが起業18フォーラムに参加して、会員仲間に自分の準備内容をnoteで発信し、それを読んでもらってからでした。複数の会員さんから「海外で見てきた現場の話と、今のアイデアが繋がっていない」という指摘が同じタイミングで届き、自分一人では気づかなかった視点を初めて持てたと話してくれました。読んでもらって初めて分かる、というのが葉山さんの言葉でした。
そこからフォーラムの勉強会に通い、会員間個別相談で複数の先輩の話を聞き、海外で築いた現地パートナーとの関係を活かす形に方針を組み直していきました。15ヶ月目には、再会した旧知から2件、フォーラム経由の新規から3件、海外赴任時代の縁から1件と、延べ6名のお客様候補が並びました。
今日からの動かし方は、過去の名刺アプリを開くこと
新しい人に会いに行くより先に、休眠人脈を起こすほうが負担が少なく、最初の手応えに繋がりやすいです。葉山さんも結果的に、最初の1件は古い名刺帳から復活した旧知でした。
- 過去名刺アプリ/古い名刺帳を開く:
赴任前にやり取りしていた人の連絡先を一覧化する - 週に1名ずつ現在地を確認する:
今どこで何をしているか、SNSや会社の情報を静かに調べる - 連絡してもいい関係を選ぶ:
全員に連絡せず、当時よく話した人から自然に再開する - 会えた人の話を記録する:
業界の今・変わった顔ぶれ・新しいキーワードをメモに残す
5人くらい話を聞くと、業界の現在地と、自分の海外経験が日本でどう受け取られるかの肌感覚が戻ってきます。ここまで来ると、新規で会いに行くべき相手も自然と見えてきます。
並行して、起業準備を一緒に進められる同じ立場の仲間も探してください。同じ立場の会員仲間に自分の準備内容を見てもらえる場があると、孤独な判断を減らせます。海外赴任から戻った方は、業界の中で孤立しがちなぶん、別軸の繋がりが効いてきます。
今夜できるのは、過去の名刺アプリを開いて旧知5名の連絡先を一覧化するところまでで構いません。会いに行くのは、現在地を確認してからで遅くないです。

帰任後の3ヶ月で会える旧知が何名いるか、その一覧化が最初の現実的な作業になります。今夜のうちに、過去3年で名刺交換した方のうち海外赴任前から付き合いがある5名を書き出し、来週中に1名ずつ近況連絡を入れる予定を立てておいてください。
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