起業準備中に解雇通告を受けたら転職は不利? 回避策と派遣登録の判断軸

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

私は風景写真を撮るのが好きで、その趣味をビジネスにしたいと考えています。現在正社員として勤めていますが、会社に自分のホームページの存在が知られてしまっており、いまは趣味サイトとして公開しているだけの状態です。マネタイズをした時点で就業規則違反になると会社から警告も受けています。

もし違反を理由に解雇された場合、派遣会社に登録して働こうと考えているのですが、就業規則違反で解雇されたという経歴は転職時に不利になりますか? また、派遣であれば起業準備は問題ないでしょうか?

起業前質問集

● 回答

解雇されるリスクは可能な限り回避するのが正解です。なぜなら、解雇という履歴書の傷は、転職活動でも、その後の起業の社会的信用面でも、想像以上に長く尾を引くからです。

正社員にこだわる必要はないという質問者様の判断は正しいです。起業準備で大事なのは当面の収入と準備時間の確保ですから、雇用形態の選択肢を広く持つこと自体は良い構えです。ただ、解雇とそれ以外の退職はまったく別物です。解雇の経緯は、採用面接や派遣登録の場で説明負担が重くなり、同じ条件の応募者がいる場面では不利に働くことがあります。派遣会社への登録でも、退職理由をどう説明するかは軽く見ない方が安全です。

厚生労働省は2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、2025年3月には解説パンフレットの改訂版も公表しています。

裁判例を踏まえると、就業時間外の会社外活動は原則として認める方向で検討することが適当とされています。一方で、労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、会社の信用毀損、競業による利益侵害がある場合は、企業が禁止・制限できる余地もあります。「社会の流れは解禁」と「自分の会社で許可されている」は別問題で、ここを混同したまま強行突破して解雇された会員さんを、私は何度も見てきました。

解雇の原因が起業準備でも、職務怠慢でも、転職活動では退職理由の説明を避けにくくなります。履歴書の書き方だけで済む話ではなく、面接で経緯を聞かれたときに、信頼回復の説明が必要になります。

解雇を回避する三つの基本対策

26年・60,000人の支援現場で見てきた事例から整理すると、在職期間に起業準備をする方が解雇通告まで進んでしまうケースは、ほぼ次の三つの境界線を踏み越えています。逆に言えば、この三線を守り続ければ、警告止まりで終わらせることは十分可能です。

  • 勤務時間と会社設備の分離:
    社用PC・社内回線・業務メールアドレスを起業準備に1ミリも使わない。勤務時間内に個人サイトの更新画面を開かない。これだけで解雇リスクは大きく下がります。
  • 名義と実態をずらさない:
    家族を代表者にすれば安全という考え方は危険です。実態として自分が経営判断や顧客対応をするなら、就業規則や届出ルールを確認し、収益化の時期を退職後に寄せる構成が安全です。
  • マネタイズの一時凍結と「ポートフォリオ」運用への切替:
    質問者様のように警告を既に受けている場合、ホームページからの収益化導線(広告・販売リンク)を一旦撤去し、撮影実績の「ポートフォリオ」として運用する。退職後にすぐ動けるよう構造だけ整えておきます。

質問者様の状況はまだマネタイズ前の警告段階ですから、ポートフォリオ運用に切り替えればグレーゾーンから完全に降りられます。マネタイズの再開は退職日以降に統一しておくこと。これだけで、解雇通告のリスクはかなり下げられます。

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』にも書いたのですが、在職中の起業準備で大事なのは「会社に迷惑をかけないこと」と「会社に貸しを作っておくこと」の両輪です。攻めるべきは退職後で、在職中は守りに徹する。それが結果として、退職後の独立スピードを早めます。

派遣で繋ぐという選択肢の現実

派遣会社が起業準備OKかどうかは、登録会社によって本当にバラバラです。大手の数社では、就業規則に「他社業務に従事する場合は事前申告」と書かれているケースが多く、無申告だと派遣契約解除の理由になります。一方で、中堅以下では「就業時間外であれば不問」とする派遣会社もあります。

登録前の問合せ電話で「起業準備中で個人事業の収入が並行する見込みがあるが、登録に問題はないか」を一言確認しておくと、後のトラブルを防げます。問合せの段階で渋い反応の会社は外す。これだけで派遣先トラブルの大半が事前に避けられます。

会員さんの実例:警告後にポートフォリオへ切替えて独立したAさん

広告会社勤務だったAさん(30代男性)は、風景写真のブログを自己流でマネタイズ申請しようとして、就業規則違反の警告を会社から受けました。当時の彼は「解禁の流れに乗っているのだから問題ないはず」と、社内のグループウェアで申請に動いたところで上長に止められた経緯があります。

その後、起業18フォーラムに参加されて、勉強会で「在職中はポートフォリオ化、退職後にマネタイズ統一」の手順を学び、ホームページから販売リンクと広告コードを全削除。撮影実績の見せ場として運用し直しました。同時に、退職後の収入源として、地元の観光関連団体の素材撮影と、結婚式の前撮りロケ撮影を狙う構造に組み直しました。

11ヶ月目に円満退職し、フリーランス写真家として独立。退職時にはホームページからすぐに販売リンクを復活させ、観光協会から受注を獲得しました。24ヶ月目で月収32万8千円、現在は地元の写真スタジオと業務提携を結ぶところまで来ています。自己流の解禁論で押し切らず、いったん完全に守りに入って退職後に一気に切り替える。これがAさんの転機でした。

もし強行突破して解雇されていたら、独立直後に観光関連団体や取引先からの信用確認で受注が止まっていた可能性は十分にあります。地方の取引先ほど、前職での退職理由を間接的に調べることがあるのです。

解雇/自主退職/派遣/起業独立の選択肢比較
  • 解雇された場合:
    退職理由の説明負担が重くなる・転職面接で経緯を聞かれる可能性・派遣登録時にも不利に働く場合がある・住宅ローンや事業融資の審査でも説明を求められる可能性
  • 自主退職した場合:
    「一身上の都合」記載で済む・転職面接でも自分のストーリーで説明可能・派遣登録もスムーズ・退職金や有給消化も交渉可能
  • 派遣で繋ぐ場合:
    登録会社の起業準備可否は事前確認必須・時給収入だけで生活費が回るか試算が前提・派遣先での残業や転居要請が起業準備時間を圧迫する場合あり
  • 退職後すぐ起業独立する場合:
    最低6ヶ月の生活費+初期投資の自己資金が貯まっているか・退職前に最初の顧客が3件以上確保できているか・健康保険と年金の手続きを退職前に確認済みか

派遣で繋ぐ案そのものは悪くないのですが、解雇前提ではなく、円満退職後の選択肢として組み立てる方が後々ラクです。解雇から派遣登録のルートは、退職理由を説明する場面で不利に働く場合があります。質問者様の場合は退職タイミングを自分でコントロールできる位置にいるのですから、解雇させない方向で動くのが得策です。

万が一、警告を超えて懲戒解雇に進んだ場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。とはいえ、日頃の勤務態度や成績がきちんとしていれば、警告止まりで終わるのが普通です。本業に迷惑をかけない構えを徹底すれば、解雇通告の段階まで進む可能性自体がかなり下がります。

退職タイミングを自分で握る

質問者様の場合、いま最も大事なのは「解雇という選択肢を会社に渡さないこと」です。マネタイズの一時凍結、ポートフォリオ運用への切替え、退職後に向けた顧客リストの仕込みを並行で進める。辞めさせられて派遣に登録するより、自分のタイミングで辞めて起業準備を加速する方が、結果として早く軌道に乗ります。

解雇か派遣かの二択思考から一度離れて、退職時期を自分で握る前提で組み直してみてください。半年後の自分が一番ラクに動ける構造を、いまから準備していきましょう。半年あれば、いまの位置から十分に組み直しが効きます。

ポイント よくある質問

解雇回避と派遣登録についてのよくある質問集

起業前質問集

Q1.就業規則違反でも、本人が自主退職届を出せば「会社都合」にならない?

会社側が懲戒解雇手続きを進める前に自分から退職届を出し、会社が受理すれば、形式的には「自己都合退職」になります。もっとも、懲戒手続きが進んでいる段階では会社が受理しない場合もあります。警告を受けた段階で、円満退職に向けた話合いを上長と先に始めることが現実的な防衛策です。

Q2.派遣会社の登録時、過去の退職理由を必ず聞かれますか?

登録面談での質問は派遣会社によって差があります。職歴自体の記載は必要ですが、退職理由を面談で深く掘られない派遣会社もあります。ただし派遣先企業が決まる段階で、経歴や退職理由の説明を求められる場合はあります。

Q3.家族を事業代表者にすれば、就業規則違反は完全に避けられますか?

事業の名義と運営実態が一致していれば適法ですが、実態として自分が経営判断や顧客対応をしていれば、就業規則違反と判断される余地は残ります。代表者を家族にする場合は、家族が実際に商品管理や顧客対応の一部を担う構造にしておく必要があります。

Q4.退職後に前職から損害賠償請求をされる可能性は?

就業規則違反が会社に具体的な損害を与えていなければ請求の根拠は薄いです。ただし、顧客情報や業務ノウハウを持ち出した場合は別問題です。退職時に貸与PCの全データを返却し、業務関連の連絡先を私物デバイスから完全に消去しておくと、後々のトラブルを未然に防げます。

いまの警告段階で進路を組み直せるのは、質問者様にとってむしろ好機です。守りを固めて時間を稼ぎ、退職後の最初の3ヶ月で勝負を決める構造を、いまから一緒に組み立てていきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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