記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
いま住んでいるのは賃貸のマンションで、空いている一室をそのまま作業場所にして、勤め先とは別に仕事を受けようと考えています。
ただ、契約書に「居住用」と書かれていた記憶があり、この部屋で商売をしていいのかどうかが分からないまま止まってしまいました。
開業届を出す前に、どの書類のどこを確かめておけばよいのでしょうか?

● 回答
この部屋で商売をしていいかどうかは、どの書類のどこに書いてあると思いますか? 国土交通省の賃貸住宅標準契約書は第3条で使用目的を「居住のみ」と定めていて、賃貸住まいの判断はまずこの一文から始まります。分譲マンションを買って住んでいるなら、判断のもとになるのは管理規約の用途の定めです。
相談を受けていると、多くの方が「気づかれるかどうか」から考え始めます。順番が逆になっています。契約と規約が何を禁じているのかを先に読めば、そもそも隠す必要のない範囲がどこまでなのかが見えます。
まず開くのは賃貸借契約書の使用目的
民間の賃貸住宅で先に見るのは、大家さんの気分ではなく契約書の条文です。国土交通省が普及を進めている賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・令和6年12月一部改訂)では、第3条に「乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない」と置かれています。
同省の解説によれば、この契約書は住宅の賃貸借を対象にしているため使用目的を居住のみに限っており、特約を結べば居住と併せて他の目的に使うこともできます。
民法616条は、借りた人に契約で定めた用法に従う義務を課しています(594条1項の準用)。居住用として借りた部屋を無断で事務所に変えれば、家賃を払っていても用法違反を問われる余地が残ります。
手元の契約書を開いて、「使用目的」または「用途」という見出しの条文を探してみてください。そこに居住用とだけあるのか、居住兼事務所まで認められているのかが、第一の分かれ目になります。
分譲マンションで重なる管理規約の用途制限
分譲マンションになると、管理規約という別の書類が重なります。国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)は第12条で、区分所有者は専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならないと定めています。2025年10月に改正された最新版でも、この用途の定めは改正項目に入っていません。
同じ規約のコメントでは、住宅としての使用かどうかを居住者の生活の本拠がそこにあるかどうかで判断し、生活の本拠として必要な平穏さを保つことを求めています。生活の場であり続ける限り、机とパソコンが1台増えたことだけを取り上げて用途違反とされるとは限りません。
分譲マンションを借りて住んでいる方には、契約書と管理規約の両方が同時にかかります。管理規約は、入居時に不動産会社から受け取った書類一式か、管理組合の窓口で確認できます。
- 民間の賃貸:
賃貸借契約書の使用目的条項が起点。相手は大家さんと管理会社 - 分譲の賃借:
契約書に加えて管理規約も適用。相手は大家さんと管理組合 - 分譲の所有:
管理規約の専有部分の用途が起点。相手は管理組合と理事会
実務で線が引かれるのは来客・看板・郵便物の3点
条文を読んだあとに残るのは、何をもって住宅としての使用を超えたと判断されるのか、という疑問だと思います。これまで受けてきた相談を並べてみると、揉めごとになるかどうかの分かれ目は、だいたい次の3点に集まります。
- 来客:
不特定の人が繰り返し出入りする状態。教室・サロン・整体など - 看板:
玄関や外壁への表示、集合ポストへの屋号掲示など外から見える営業表示 - 郵便物:
自分宛以外の荷物や書類が日常的に届く状態。宅配の頻度が跳ね上がるケース
来客がなく、外に看板を出さず、届くのが自分宛の郵便物だけであれば、生活の本拠であるという実態は保ちやすくなります。ただし、この3点に触れないことは、契約や管理規約の用途制限を上書きする免除条件ではありません。パソコン1台で完結する受託や執筆でも、最終的には実際の契約書、管理規約、貸主や管理組合の判断を確認します。
そのまま進めていい人と先に伝えたほうがいい人
ここまでを踏まえると、契約書に居住用としか書かれていない場合は、来客・看板・郵便物の有無だけで自己判断しないことが大切です。予定する仕事の内容を整理し、貸主や管理会社へ事前に伝えて、使用が認められる範囲をメールなど記録の残る形で確認します。
教室を開いたり、施術のベッドを置いたり、手伝いの人が通ったり、会社をつくって本店所在地に部屋の住所を使ったりするなら、始める前の確認は欠かせません。来客・看板・郵便物のどれに当たるかを整理したうえで、契約上の承諾が必要かを貸主や管理会社へ確認してください。
開業届の納税地と外に出す住所は分けられる
もうひとつ、よく混ざるのが税務署への届出の話です。国税庁が2026年7月時点で公開している個人事業の開業・廃業等届出書の様式には納税地の欄があり、住所地・居所地・事業所等から選ぶ形になっています。自宅を納税地にしても、その届出が大家さんや管理組合へ通知される仕組みはありません。開業届を出した事実そのものが契約違反になるのではなく、問われるのは部屋の使われ方です。
そのうえで、取引先や利用者に示す住所と、税務署に届け出る納税地は、必ずしも同じでなくてかまいません。ただし通信販売のように、法律で事業者の住所や連絡先の表示が求められる取引もあります。自分の商売がその表示にかかるかどうかは、外に出す情報を決める前に確かめておくと安心です。
拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備を180日で4つのステージに分けて進める設計を紹介しています。契約書と管理規約を読む作業は、走り出す前に足元を固めるステージ0にあたります。
米倉さんが確認の順番を整理するまで
都内の賃貸マンションに住む米倉さん(30代前半・男性)は、Web制作会社で受託案件の進行を担当しています。もともとは、部屋で仕事を受けていいのかが分からず、契約書を開かないまま半年ほど止まっていました。
動き出したのは、勤め先の取引先だった中小企業の担当者から、個人的にサイトの更新を頼めないかと打診されたときです。断る理由が部屋のことしか残っていないと気づき、起業18フォーラムの勉強会に参加しました。契約書の読み方が話題に出たのをきっかけに、帰宅してから自分の賃貸借契約書と管理規約を一条ずつ突き合わせ、使用目的条項から先に読み直しました。
契約書には居住用としか書かれていませんでした。そこで米倉さんは、来客を入れないこと、玄関にも集合ポストにも屋号を出さないこと、届く郵便物は自分宛だけであることを整理したうえで、管理会社に電話で説明しました。
返ってきたのは、その範囲なら申し出は不要という回答です。勉強会に出てから4カ月目に最初の受注が入り、いまは月々の保守を3社から受けています。最初の1社との取引は25カ月続いています。
今日は、賃貸借契約書の使用目的の条文と、分譲なら管理規約の専有部分の用途を、もう一度読み返すところから始めてください。そのうえで大家さんや管理会社に話すときは、いまの暮らしと、これから増える仕事のぶんを分けて説明すると話が早く終わります。
- 変わらないところ:
生活の本拠は自宅のまま。来客も屋号の表示もなく、届く郵便物は自分宛だけ - 変わるところ:
部屋の一角を作業に使う時間の長さと、取引先とやり取りする回数
この事例で管理会社が実際に口にしていたのは、生活の場が事業所へ変わることへの心配でした。ただし、この回答を別の物件へそのまま当てはめることはできません。生活の場のまま仕事の一部を持ち込む場合も、実態を順序立てて説明し、その物件での回答を記録に残します。住所の出し方まで含めて整理したい方は、次の記事も参考にしてください。

どの選択肢が自分の部屋に合うのかは、契約書と管理規約を読み、貸主や管理会社からその物件について回答を得て決めます。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
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