資格試験の問題(過去問)などには、著作権はありますか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

著作権について教えてください。資格試験の問題や過去問には、著作権はあるのでしょうか? 自分の勉強用にコピーするだけでなく、解説をブログに書いたり、いずれ自作の問題集として販売したりも考えています。

試験問題をそのまま転載してもよいものか、どこまでが許される範囲なのか知りたいです。

起業前質問集

● 回答

試験問題は原則として著作物にあたり、私的使用や適法な引用を除けばブログ掲載や教材販売には著作権者の許諾が必要だと考えてください。「過去問だから自由に使える」という思い込みが、いちばん危ない出発点です。

私は26年間で、資格やスキルを生かして独立したい方の相談を数多く受けてきました。その中で、過去問を教材に使いたいという声は珍しくありません。ただ、目的によって判断がはっきり分かれます。まずは「誰のために」「どう使うのか」を切り分けるところから整理していきましょう。

そもそも試験問題に著作権はあるのか

結論から言えば、多くの試験問題には著作権が認められます。理由は2つの層に分かれます。

1つは、文章で出題される個々の問題です。問題文に作成者の工夫や個性が表れていれば、それは言語の著作物になります。もう1つは、複数の問題をどう選び、どう並べたかという全体の構成で、これは編集著作物として保護されることがあります。

さらに、長文読解のように他人の小説や論文を素材として使っている問題では、その素材そのものにも別の著作権が残っています。試験問題は、いわば複数の権利が重なった状態だと考えておくと安全です。

許諾なしで使える2つの例外(私的使用と引用)

著作権者の許諾を得ずに使ってよい代表的なケースは、私的使用のための複製と、適法な引用です。この2つは性格がまったく違います。

許諾なしで使える2つの例外

  • 私的使用のための複製(著作権法30条):
    自分や家族など、限られた範囲で使うためのコピー。自宅での勉強用に過去問を印刷する程度がこれにあたります
  • 引用(著作権法32条):
    公表された著作物を、批評や解説の中で必要な範囲だけ取り上げる使い方。一定の要件を満たす必要があります

注意したいのは、私的使用はあくまで「個人の閉じた範囲」だということです。不特定多数が読むブログやSNSに載せた時点で、私的使用の枠からは外れます。

引用として認められるには、文化庁が整理しているように、いくつかの条件があります。公表された著作物であること、自分の文章が主で引用部分が従という主従関係が明確なこと、どこからが引用かカギ括弧などで明瞭に区分されていること、引用する必然性があること、そして著作権法48条にもとづく出所の明示です。要約して載せたり、内容を改変したりすると、この引用の枠を超えて許諾が必要になる点も覚えておいてください。

「試験目的の複製はOK」が過去問ブログに効かない理由

著作権の本を読むと、著作権法36条という規定が出てきます。これは「入学試験その他の試験又は検定の目的上必要と認められる限度で、試験問題として複製・公衆送信できる」というものです。試験の秘密を守るため、出題のときは事前の許諾がいらない仕組みになっています。

ここで誤解が起きやすいのですが、この36条は「これから行う試験の出題」のための規定であって、終わった過去問をブログや問題集に載せる行為には適用されません。

実際、市販の過去問題集は試験目的の複製ではないため、著作権者の許諾を得て作られています。営利目的の模擬試験などで他人の著作物を使う場合は、36条2項にもとづき通常の使用料に相当する補償金の支払いも必要です。「試験問題は自由に使える」と読み違えると、過去問集の販売で権利侵害になりかねません。

生成AI時代に出てきた新しい論点

最近は、過去問をAIに読み込ませて解説を作ったり、出題傾向を分析させたりする使い方が広がっています。ここでも基本の考え方は変わりませんが、新しい論点が加わりました。

文化庁の文化審議会著作権分科会は、2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」をまとめました。この中では、AIの学習のように著作物を情報解析の素材として使う行為は、著作権法30条の4により、非享受目的で必要と認められる限度なら原則として許諾なく行えると整理されています。

ただし、過去問の表現そのものを楽しむ目的が併存する場合、必要な限度を超える場合、著作権者の利益を不当に害する場合、特定の作成者の問題を集中的に学習させてそっくりな問題を生成させる場合は、この例外から外れる可能性があります。

ここから読み取れるのは、自分の勉強の効率化にAIを使うのと、AIで作った問題を商品として売るのとでは、リスクの重さが違うということです。AIが出力した過去問解説をそのまま教材として公開するなら、元の問題の権利処理は別途必要だと考えてください。

目的別に「安全に過去問を扱う」判断ステップ

では、独立準備として教材ビジネスを考えている方は、どう動けばよいのでしょうか。迷ったら、次の順番で確認するのが確実です。

過去問を使う前の確認ステップ

  • 使う目的をはっきりさせる:
    自分の勉強用か、ブログでの解説か、販売する教材かで判断が変わります
  • 実施団体・官庁に問い合わせる:
    試験を実施している協会や省庁に、転載や二次利用の可否を直接確認します
  • 判断に迷えば専門機関へ相談する:
    一般的な疑問は公益社団法人著作権情報センター(CRIC)の著作権Q&Aが参考になります

そして、ここで起業準備の方にお伝えしたいことがあります。過去問そのものを転載しなくても、教材ビジネスは十分に成り立ちます。むしろ価値があるのは、あなたが受験勉強を通して身につけた、解き方の順序やつまずきやすい論点の見抜き方です。

拙著『起業神100則』では、「名もなき強み」という考え方を紹介しています。資格の勉強で自然に積み上げた解法の感覚や教え方の工夫は、自分では当たり前すぎて気づきにくいだけで、同じ試験を目指す人にとっては立派な商品になります。他人の問題を借りるより、自分の言葉で書いたオリジナルの解説や練習問題のほうが、長く使える資産にもなります。

実際に、こんなケースがありました。

菅原さん(仮名・38歳・経理職)の場合

簿記の独学で苦労した菅原さんは、その経験を生かして学習サポートを会社の外で始めようと考えました。当初は過去問をそのままブログに並べていたのですが、本当に出題団体の許諾が要らないのか不安になったそうです。

転機は、起業18フォーラムの勉強会でした。他の会員から「問題そのものより、つまずいた箇所のメモのほうが読まれている」と指摘され、過去問の転載をやめて、自分が間違えた論点だけを自作の例題で解説する形に切り替えたのです。

2024年の春にnoteの有料記事を始め、翌年初めには月1万8千円ほどの収入になりました。権利の心配がなくなったぶん、安心して発信を続けられるようになったと言います。

過去問の扱いは、目的によって白黒がはっきり分かれます。自分の勉強のためなら気にしすぎる必要はありませんが、人に見せたり売ったりするなら、実施団体への確認をひと手間かけてください。判断に迷う場面では、セミナーでも具体的な進め方をお話ししています。今日できることは、自分が使いたい過去問の実施団体名を1つ調べておくだけで十分です。

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よくある質問

Q.国家試験の問題は国が作ったものだから、誰でも自由に使えるのではないですか?

国や公的機関が実施する試験でも、問題に創作性があれば著作物として保護されます。「国家試験だから著作権がない」という決まりはありません。商用利用や転載を考えるなら、実施している官庁や団体に可否を確認してください。

Q.ブログで「こんな問題が出ました」と要点だけ書くのも侵害になりますか?

問題文をそのまま写すのではなく、出題のテーマや傾向を自分の言葉で説明する範囲なら、著作物の表現を使っていないため問題になりにくいです。ただし、要約のつもりでも元の表現に近づけば引用や許諾の論点が出てきます。迷ったら自分の解説を主役にしてください。

Q.過去問を使った問題集を販売したいのですが、許諾はどう取ればよいですか?

まずは試験を実施している団体や官庁の窓口に、過去問の二次利用と出版の可否を問い合わせるのが出発点です。一般的な進め方が分からないときは、著作権情報センター(CRIC)の著作権Q&Aで基本を確認してから相談すると話が早くなります。

著作権に関するアドバイス業で独立を考えています。
● 質問 創作の事実確認(確定日付の付与)、侵害に関する相談、警告文の発案、交渉代行、弁護士仲介といったサービ

過去問は便利な素材に見えますが、人に届ける段階では権利のルールがついて回ります。安心して教材ビジネスを育てるためにも、まずは確認の習慣から始めてみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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