起業準備を始めるとクレジットカードやローン審査に影響する? 開業届提出前の注意点

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

起業準備を始めて開業届を出すと、今使っているクレジットカードやこれから組みたい住宅ローンの審査に何か影響が出るのでしょうか。

会社員のうちに、優先して整えておいたほうがいいことはありますか?

起業前質問集

● 回答

開業届の提出だけで、今のカードやローンが自動的に解約・一括返済になるわけではありません。ただし、契約条項や利用状況、属性変更後の審査によって取扱いが変わることはあります。新しく申し込むカードやローンは、その時点の属性と各社の基準で審査されます。

起業準備中の会員さんからよく聞くのは「今使っているカードが急に使えなくなるのでは」という不安ですが、まずは契約中の商品と新規申込を分けて考えます。

この違いを知っておくと、何を急いで、何を急がなくていいかがはっきりします。ここでは一般的な審査の仕組みと、会社員のうちに整えておきたいことを、蓮見さんという会員さんの例とあわせて紹介します。

影響が出やすいのは「今のカード」より「これからの審査」

個人事業主になったあとの新規申し込みでは、会社員と同じ勤続年数や給与だけでなく、事業所得や申告実績などが確認材料になります。審査基準は商品・会社ごとに異なり、個人事業主であることだけで結果が決まるわけではありません。契約中のカードも、会員規約に沿った属性変更の届け出が必要です。

ここで大事なのは、「今のカード」と「これから作るカード・組むローン」を分けて考えることです。同じ「審査」という言葉でも、意味がかなり違ってきます。

会社員時代と独立後で変わる審査の見られ方

勤めている状態で申し込むときと、個人事業主として申し込むときでは、審査担当者が見ているポイント自体が変わります。表にすると、次のような違いです。

審査で見られる点 会社員時代 独立後
収入の見方 勤続年数・額面年収 確定申告書の所得(売上から経費を引いた額)
安定性の判断材料 雇用契約の有無 複数年分の申告実績の推移
参考にされる資料と期間 商品ごとの申込書類・審査基準 商品ごとの申告書類・審査基準

個人事業主は経費を計上できるぶん、確定申告上の所得は額面の売上より低く出やすいという特徴があります。節税を優先しすぎて所得を極端に低く抑えると、審査の場面ではかえって不利に働きやすくなります。

属性が変わったらカード会社への届け出が必要

多くのカード会社の会員規約では、勤務先や年収が変わったときにその旨を届け出るよう定められています。開業届の提出そのものが届け出の対象になるかどうかはカード会社ごとに扱いが異なるため、心配な場合は会員規約やマイページの案内を確認しておくと安心です。

ちなみに、CICでは、申込情報は照会日から6か月、クレジット契約の内容や支払状況などは契約期間中および契約終了後5年以内など、情報の種類によって保有期間が異なります。何もかも一律に5年間残るわけではありません。

誤解しやすいポイント

  • 開業届を出した瞬間にカードが止まる、は誤解:
    開業届の提出では自動停止しない一方、カード会社の判断による条件変更の可能性
  • 年収を偽って自己申告する:
    確定申告の所得と更新審査の不整合を招く自己申告
信用力を先に「ストック」として整えておく発想

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』では、預貯金の残高だけを見てひたすら貯め込もうとする「ストック思考」より、お金の出と入りの流れを見て収入の柱を増やしていく「フロー思考」への転換を勧めています。信用についても、支払期日を守り、必要な契約情報を正しく届け出るという積み重ねが基本です。カードやローンは、会社員のうちに増やすこと自体を目的にせず、本当に必要なものだけを返済可能性まで確認して申し込みます。

開業後に申し込む場合は、個人事業主として求められる資料を確認し、事業と家計の返済計画を整えてから動きます。職業や年収などの申告内容を実態と違えて申し込んではいけません。

蓮見さんの場合

起業18フォーラムの会員さんに、蓮見さんという30代後半の男性がいます。物流会社で倉庫管理を担当しながら共働きで働き、週末を使って起業準備を始めたばかりの方でした。

準備を始めた当初、蓮見さんは「開業届を出したら、今使っているカードが使えなくなるのでは」という不安から、半年近く提出のタイミングを決められずにいました。あるとき、信用情報や個人事業主の審査に関する公的な資料をいくつか読み比べ、「変わるのは新しく組む契約のほうで、今の契約がすぐどうにかなるわけではない」と自分なりに整理できたことが、動き出す一歩になりました。

その後、蓮見さんは起業18フォーラムのオンライン勉強会に参加し、事業用の口座とカードを開業届の提出前に作っておくという他の会員の進め方を聞いて、自分の順番を具体的に固めました。開業届を出してから半年ほど経ちますが、審査に落ちたわけでも、生活の決済で困ったわけでもなく、これまでどおりカードを使えているとのことです。

新しく住宅ローンを組む予定がある場合

すでに住宅ローンを返済中の場合も、契約上の届け出事項があれば確認します。これから新規申込や借り換えをする場合、必要な確定申告書の年数や所得の見方は金融機関・商品ごとに異なるため、開業時期を決める前に候補商品の公式要件を確認します。

フラット35も取扱金融機関の審査があり、申込時には前年の所得などを申告し、公的証明書や確定申告書などの追加書類を求められることがあります。「2期あれば必ず申し込める」「直近1期だけで決まる」とは限りません。

今のうちに整えておきたい3つの行動

  • 今使っているカードの更新時期を確認する:
    開業届を出す前に一度確認する更新月
  • 事業用の口座や決済手段を分ける必要性を確認する:
    商品条件の比較と現在の職業・収入の正確な申告
  • 大きな借り入れは返済計画から考える:
    開業前後の収入変化を含む無理のない返済額の確認

今日、今すぐ動くとしたら、まずは今契約しているカード会社の公式サイトやマイページで、属性変更の届け出について案内があるかどうかを確認してみてください。それだけで、漠然とした不安の輪郭がだいぶはっきりします。

勤めているうちに積み上げた信用力は、辞めた瞬間に消えてしまうものではありません。開業届を出す前に整えられるものは整え、順番を守って進めていけば、審査の不安に振り回されずに準備を続けられます。

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● 質問 起業準備を始めるにあたって経費を家計と分けたいのですが、開業届をまだ出しておらず屋号もない今の段階で

審査への不安は、開業届を出した日にまとめてやってくるものではありません。落ち着いて手順を踏めば、今の暮らしを崩さずに次の準備へ進めます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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