記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
天草で起業するのは、マラソンに少し似ています。スタートの速さより、自分のペースで長く走り続けられるかが結果を分けます。天草で起業するなら、いきなり移住して勝負するより、熊本市内から車で通える立地を活かし、二拠点で地域とのつながりをつくりながら準備するのが現実的です。
「今からでは出遅れているのでは」「島に仕事なんてあるのか」。そう感じて足踏みしている方は、決して少なくありません。けれど天草は、本土と橋でつながった、通いながら関われる島です。その立地は、起業の準備を進めるうえで大きな意味を持ちます。
橋でつながる島、天草の姿

天草へは、熊本市内から車でおよそ2時間。宇土半島の先端にあたる三角から、天草五橋を渡って入ります。天草五橋は1966年に開通した5つの橋で、日本の道100選にも選ばれています。島でありながら、船に頼らず車で行き来できるのが、天草の大きな特徴です。
暮らしの規模も見ておきましょう。天草市の統計(住民基本台帳・令和8年6月時点)によると、市の人口は約6万9千人で、少しずつ減りながら高齢化も進んでいます。この数字は、裏を返せば顔の見える距離感で商いができるということでもあります。都会のように匿名の大量集客を狙うのではなく、名前を覚えてもらいながら続ける事業のほうが、天草の規模には合っています。
橋続きという立地は、準備の仕方も変えます。船の時刻に縛られず、平日に本業をこなしつつ週末だけ通う、という関わり方が現実的に成り立つからです。移住を最終ゴールに置いたとしても、まずは通うところから始められる余白が、天草にはあります。
使える支援は「方向が決まってから」の道具

天草には、移住や創業を後押しする制度がいくつもあります。令和8年度の移住支援金は、東京23区からの移住など所定の条件を満たす場合、2人以上の世帯100万円、単身60万円で、18歳未満の世帯員1人につき100万円が加算されます。受付状況や就業・起業などの対象要件は、申請前に天草市の最新案内で確認してください。
創業そのものを軽くする制度もあります。中小企業庁の認定一覧によると、天草市は産業競争力強化法にもとづく特定創業支援等事業の認定自治体で、所定の支援を受けて証明書を取得すると、会社設立時の登録免許税の軽減などを受けられます。受講内容や証明書の取得要件は、市の産業政策課で確認してください。
- 移住支援金:
東京圏からの移住などが対象。生活の土台を移すときの後押しになる制度 - 特定創業支援等事業:
指定の窓口で経営や財務の学びを一定回数受けると、設立時の税が軽くなる仕組み - 移住・定住の相談窓口:
空き家バンクや定住の奨励金など、住まいと暮らしを整える制度
ただ、これらの制度は使う順番を間違えると力を発揮しません。補助金や支援制度は、何を売るかの方向性が固まってから使う道具だと考えてください。行き先が決まっていない段階で窓口に相談しても、担当者も一般論でしか応じられないからです。
天草で活かせる仕事は「地域資源×自分のスキル」

天草には、水産や柑橘、天草陶石を使ったやきもの、キリシタン文化にまつわる景観など、外から見て価値のある資源がそろっています。とはいえ、資源をそのまま売るのは地元の生産者の仕事です。会社に勤めてきた方が入り込めるのは、その資源を「届ける」「見せる」「つなぐ」側です。
拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』では、起業のネタを選ぶときの3つのチェックを紹介しています。一人で始められるか、一人で続けられるか、大きなお金がかからないか、この3点で選ぶという考え方です。天草に当てはめるなら、3つ目の「大きなお金がかからない」は、地域資源と自分の会社員スキルの掛け合わせで満たせます。仕入れや設備に頼らず、すでにある資源に自分の得意を足すからです。
始め方は一つではありません。天草との距離の取り方で、大きく3つの進め方に分かれます。
- いきなり移住して構える型:
腹をくくれる人向け。ただし売るものが決まる前だと生活費だけが減りやすい - 熊本市内などから通う二拠点型:
勤めを続けながら関係を育てたい人向け。橋続きの立地を最も活かせる進め方 - オンラインで全国を相手にする型:
天草の商品や情報を島の外へ届けたい人向け。在庫や移動を抱え込まずに済む
会社員の経験と天草の資源を、まずどう組み合わせるか。この一点が決まると、通い方も売り方も一気に具体的になります。
通いを続けた会社員に起きやすい進み方

天草に通う40代の会社員が、事業の芽を見つけていくとき、きっかけは自分の中ではなく外から来ることが多いです。半年、1年と季節をまたいで通ううちに、地域の人手不足や後継者の不在、高齢化で回らなくなった作業が見えてきます。そうした現場を目の当たりにして、はじめて「自分の会社での経験が、ここでは役に立つのかもしれない」と気づく、という順番です。
ただ、気づいただけでは商売になりません。ここでつまずく方が多いのは、良かれと思ってあれもこれもと手を広げ、結局どれも中途半端になるパターンです。島の全部に応えようとすると、うまくいかないときの逃げ場がなくなります。
この段階で効くのが、外の視点で自分を見直す場です。起業18フォーラムの勉強会では、同じように地方で事業を始めた会員の進め方に触れられます。他の会員が「誰の、どの困りごと一つに絞ったか」を聞くうちに、自分も対象を一つに絞り直す。手を広げすぎていた事業を、届ける相手を決めてやり直す方が多いです。
島で名前で頼まれるようになるのは、一度きりの大きな仕事をとった先ではありません。決まった相手の困りごとに応え続け、通いはじめて2年目、3年目と関係を重ねた先に、季節ごとに決まって声がかかる関係が生まれます。夏はイベント前の準備、冬は棚卸しや発送の応援と、暦に沿って頼まれごとが戻ってくる形です。
まず土台を固め、それから窓口を訪ねる

準備の順番を間違えなければ、天草での起業はぐっと現実的になります。最初にやるのは、補助金探しでも物件探しでもありません。まず起業の全体像と自分に向いた形を学び、方向を定めることが先です。行き先が定まってから制度や窓口を使うと、同じ支援でも効き方がまるで変わります。
具体的には、次の順で進めると迷いにくくなります。
- ステップ1:
起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の全体像と自分に向いた形を整える - ステップ2:
天草に通いながら、地域の人手不足や困りごとを自分の目で確かめる - ステップ3:
方向が見えてきたら、支援の窓口を訪ねて使える制度を確認する
方向性が固まってきたら、動くのはここからです。天草市役所の産業政策課や地元の商工会、熊本県のよろず支援拠点を一つ訪ねて、創業相談の窓口があるか聞いてみてください。いきなり移住を決めず、まず通いながら関わる二地域居住から始めれば、失敗しても本業という帰る場所が残ります。

よくある質問

Q.天草で起業するには、移住しないとだめですか?
いいえ、移住は前提ではありません。天草は本土と橋でつながっているため、熊本市内などから車で通う二拠点のかたちで準備を始められます。まず関係人口として関わり、事業が回りはじめてから移住を考える順番でも十分に間に合います。
Q.天草で会社員が始めやすい仕事には、どんなものがありますか?
水産や柑橘、やきもの、観光といった地域資源を「届ける」「見せる」役割が狙い目です。生産そのものは地元の方の領域なので、通販の設計や発信、予約まわりの手伝いなど、会社での経験を掛け合わせられる裏方の仕事が入り口になりやすいです。
Q.天草の創業支援や補助金は、準備のどの段階で使えばいいですか?
何を売るかの方向が固まってからです。制度は行き先が決まった人にとって強力な道具ですが、決まっていない段階で相談に行っても答えは返ってきません。まず学びで方向を定め、それから移住支援金や特定創業支援等事業を確認する流れが安全です。
Q.本業を続けながら天草で起業を始める場合、まず何を確認すればいいですか?
最初に勤め先の就業規則で、会社の外で収入を得ることが認められているかを確認してください。そのうえで、天草の何の困りごとに応えるかを一つ決めます。制度や物件の話は、この二つがはっきりしてからで遅くありません。
天草で起業を形にしていく順番

天草での起業は、橋続きという立地を味方につけるところから始まります。いきなり移住して背水の陣を敷くのではなく、熊本市内などから通いながら、島の困りごとを自分の目で確かめる。そのうえで、起業の全体像を学んで方向を定め、最後に移住支援金や創業支援の窓口を使う。この順番なら、本業を続けたまま無理なく足場を築けます。
天草という地名を掲げた仕事は、会社の名刺とは違う手応えを持つはずです。橋の向こうで自分の名前が呼ばれる日は、今日の一歩の延長線上にあります。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
