記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
まわりに起業する人が出てくると、自分は口下手だし特別な才能もないので、起業には向いていないのかもしれないと感じてしまいます。起業に向いていない人というのは、本当にいるのでしょうか?
向いていないのなら、準備しても遠回りになるだけなのでしょうか?

● 回答
起業に「向いている人」と「向いていない人」が最初から分かれているという考えは、半分は当たっていて、半分は思い込みです。
向き不向きを性格だけで決めず、準備の順番や事業の形も含めて確かめることが大切です。情報収集で止まる型・勢いだけで走る型・小さく試して直す型の、どこに近いかを見ると、次の打ち手を考えやすくなります。
「向いていない」は才能ではなく準備の問題
中小企業庁の「2025年版中小企業白書」によると、2023年度の開業率と廃業率はいずれも3.9%でした。ただし、これは雇用保険の適用事業所をもとにした指標で、従業員のいない個人事業は含まれません。また、この数字だけで個人の適性や事業の生存率を判断することはできません。
統計が示すのは、事業の新陳代謝の大きさです。自分が続けられるかは、経験、資金、需要、健康や家庭事情、必要な許認可などを一つずつ確かめて判断します。
動けなくなる人に多い3つのタイプ
「向いていない気がする」と感じて止まっている人を見ていくと、才能の有無ではなく、進め方の癖で3つに分かれます。自分がどれに近いかを知るだけで、次の一手が変わります。
- 情報収集で止まる型:
本や動画を見比べているうちに時間だけが過ぎる、準備の量と質の取り違え - 勢いだけで走る型:
撤退ラインを決めずに先に会社を辞め、一度の失敗で戻れない進め方 - 小さく試して直す型:
手元で出して反応を見ながら直す、大きな損失を避けて需要を確かめやすい進め方
大きく構えすぎて動けなくなるケースも少なくありません。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業費用の中央値は600万円で、250万円未満で始めた人も20.1%いました。必要な資金は業種で大きく違いますが、固定費や設備を抑えて試せる形がないか検討する余地はあります。
動けない原因を才能のせいにしているうちは、打つ手が見つかりません。進め方の問題だと分かれば、向いていないと感じていたことの多くは、今日から手を入れられます。
「取り柄がない」人が見落としている強み
「そうは言っても、自分には本当に何の取り柄もない」と感じる方もいます。拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』では、「才能のない人は一人もいない」という考え方を紹介しています。離婚や事業の失敗、引っ込み思案な性格など、これまでマイナスだと思っていた経験ほど、同じ悩みを持つ人には独自の切り口になりやすいからです。
馬渕さん(50代・会社員)も、最初は「向いていない」側に自分を置いていました。それがいまは、一度頼んだ方がまた声をかけてくれて、月に5~6件の相談が続いています。常連さんと紹介が中心です。
もともとは「口下手で企画も苦手だから、自分に起業は向いていない」と思い込み、3年近く何も動かせずにいました。腹をくくったのは、勉強会で、同じ年代の会員さんが人前の苦手さを抱えたまま仕事を続けていると知った日でした。
その後の勉強会で、苦手な対面営業を外して、文章と一対一のやりとりで信頼を積むやり方に変えました。向いていないと感じていた部分の一部は、仕事の届け方を変えることで補えたのです。
あなたが「向いていないかもしれない」と迷っているなら、まず才能の話は横に置いてください。次にやることは、大きな決断ではありません。
気になっている選択肢が複数あるなら、今日はその中から1つだけ選んで丸をつけてください。
全部を並行して進めようとすると、どの型の人でも手が止まります。逆に、1つに絞れば、準備の順番はぐっと見えやすくなります。
選んだテーマを、来週いちど、小さく試せる形で1回だけ出してみてください。公開募集や有料提供をする場合は、勤め先の就業規則、必要な許認可、個人情報や消費者対応のルールも先に確認します。

向いているかどうかを気にできるのは、それだけ真剣に自分の働き方を考えている証拠です。その慎重さは、準備を始めた人の強みになります。
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