「業務委託」の請負と準委任は何が違う? 契約前に確かめたい責任の分かれ目

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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取引先や知り合いの会社から、「この仕事、業務委託でお願いできないかな」と声をかけられることがあります。業務委託は民法上の一つの契約名ではなく、実務では請負、委任・準委任、またはそれらが混ざった契約として設計されます。成果の完成を約束する請負(民法632条)か、事務の遂行を委ねる準委任(民法656条)かで、報酬の条件も責任も変わります。

業務委託という名前だけを聞くと難しく感じますが、中身は意外とはっきりしています。二つ返事で引き受ける前にこの違いを押さえておくと、あとで「話が違う」と困らずにすみます。

厚生労働省は兼業に関するガイドライン(2018年策定・2020年および2022年改定)を示し、2024年11月1日にはフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)も施行されました。会社の外で仕事を受ける人を守る仕組みが整ってきたぶん、契約の種類を自分で見分けられることが、これまで以上に役立ちます。

ポイント 業務委託は「契約の種類」ではなく仕事の頼み方

業務委託という言葉の中身と雇用契約との違い

フリーランス

まず押さえたいのは、「業務委託契約」という名前の法律上の契約類型は存在しない、という点です。業務委託は、雇用のように会社から指示されて働くのではなく、外部の事業者として仕事を引き受ける頼み方の総称にすぎません。

会社員の働き方は、労働契約(雇用)にあたります。決められた時間、会社の指揮命令のもとで働き、その時間に対して給料を受け取ります。これに対して業務委託で受ける仕事は、あなた自身が一人の事業者として、自分の裁量で進めるのが建前です。相手の指揮命令を受けて働くなら、それは業務委託ではなく雇用に近づいていきます。

そして、その業務委託が具体的にどんな約束なのかを法律の言葉に置き換えると、請負、委任・準委任のどの要素が中心かを確認できます。一つの契約に両方の要素が含まれることもあるため、表題よりも業務範囲、完成条件、検収、報酬条件を見てください。

ポイント 請負と準委任を分ける成果責任と行為責任

民法632条と656条が分ける成果責任と行為責任

フリーランス

請負と準委任の違いは、「何にお金が払われるか」を見ると分かりやすくなります。はじめに請負から見ていきましょう。

請負(民法632条)は、仕事を完成させることを約束し、その完成した成果に対して報酬が支払われる契約です。Webサイトを1本作る、記事を納品する、図面を仕上げるなど、できあがりが決まっている仕事が当てはまります。成果が約束どおりでなければ、作り直しや代金の減額、損害賠償を求められることもあります(契約不適合責任)。

これに対して、準委任(民法656条)は、決められた事務を誠実に進めることに報酬が支払われる契約です。コンサルティングや顧問、調査、運用代行のように、成果そのものより「きちんと動くこと」が中心の仕事が当てはまります。受ける側は善管注意義務(善良な管理者としての注意)を負いますが、必ず成果を出すとまでは約束しません。

請負では完成と検収が報酬条件になることが多い一方、完成前に解除された場合や注文者の責めに帰さない事由で仕事が完成不能となった場合など、一定の条件を満たすときに、既に完成した可分部分から発注者が利益を受けるときは、その割合に応じた報酬を請求できることがあります(民法634条)。「請負か準委任か」に加え、何をもって支払われ、途中終了時にどう精算するかを確かめてください。

雇用も加えた典型例を並べると、それぞれの立場の違いが見えます。実際の契約は条項と運用全体で判断されます。

請負 準委任 雇用(会社員)
根拠 民法632条 民法656条 労働契約法・民法など
約束する内容 仕事の完成(成果) 事務の遂行(行為) 労働時間の提供
報酬の対象 完成した成果 誠実に進めた業務 働いた時間
主な責任 契約不適合責任 善管注意義務 指揮命令に従う
指揮命令 受けない 受けない 受ける
仕事の例 サイト制作・記事納品 顧問・調査・運用代行 会社の日常業務

ポイント 頼まれた仕事が請負か準委任かを見分ける

成果を約束する仕事か動くこと自体が仕事か

フリーランス

自分のケースがどちらなのかは、相手の頼み方の言葉に表れます。2つの典型で見てみましょう。

成果を約束するなら請負に近い

「このシステムを納品してほしい」「パンフレットを1冊仕上げてほしい」のように、できあがりが決まっている頼み方は請負に近い契約です。納期・仕様・検収、修正回数、中途解約時の精算条件を、引き受ける前にそろえておくのが安全です。

動くこと自体が仕事なら準委任に近い

「週に1回、相談に乗ってほしい」「この分野を調べて助言してほしい」のように、成果より関わり方が中心の頼み方は準委任に近い契約です。返事をする前に、報酬が「成果」に対してなのか「作業や時間」に対してなのかを一つ確かめてください。成果報酬型の準委任もあるため、頼み方だけでなく契約条項全体を確認します。

ポイント 契約書がなく指示されて働く危うさ

偽装請負のグレーゾーンと新法の書面明示義務

フリーランス

契約の種類と並んで気をつけたいのが、「形は業務委託でも、中身は雇用そっくり」というグレーゾーンです。

一人で受託していても、実態として発注者の指揮監督下で働いていれば、契約名にかかわらず労働者性が認められることがあります。一方、受託会社の従業員へ発注者が直接指示する形は、請負を装った労働者派遣に当たる可能性があります。厚生労働省の区分基準も契約形式ではなく実態を見ます。誰が仕事の順序、配置、勤務時間を管理するのかを確認してください。

取引条件を整える支えになるのが、2024年11月1日に施行されたフリーランス法です。対象となるフリーランスへ業務委託をする事業者には、委託内容・報酬額・支払期日などを直ちに書面やメールで明示する義務があります。

給付を受領した日から原則60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める義務は、従業員を使用する発注事業者など、法律上の「特定業務委託事業者」が対象です。自分の取引にどの規定が適用されるかを確認し、口約束で始めないことが大切です。

書面に残すのは面倒に見えて、いちばん確実な予防策です。委託内容・報酬・支払期日の3点は、必ず書面かメールに残してもらってください。「あとで決めよう」で走り出した仕事ほど、もめやすいものです。

ポイント 湯浅さんが13ヶ月で変えた「契約の立場」

時間単価から成果と継続契約へ移した13ヶ月

フリーランス

メーカーで資材の調達を担当していた湯浅さん(仮名・40代)は、知り合いの会社から「調達のコツを業務委託で教えてほしい」と頼まれ、会社の外での仕事を始めました。最初は稼働した時間ぶんを請求する形で、契約書もなく口約束のまま。忙しく動いたわりに手元に残らず、相手の指示で細かく動く場面も増えていました。

見直したのは、契約の「種類」でした。起業18フォーラムの実践報告会で自分の一年を棚卸ししてみて、報酬が時間の切り売りに寄っていたことに気づいたのです。

そこで湯浅さんは、単発で時間を売る形から、月ぎめで成果物と助言をセットにした継続契約へ組み替え、内容と報酬、支払期日を書面で交わすようにしました。13ヶ月目には、売上に占める「時間単価の単発契約」と「成果・継続契約」の比率が逆転し、継続契約が中心になっていました。同じ知識でも、契約の立場を変えたことで単価も安定感も上がったのです。

拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』に、「技能や時間の切り売りをしない」「雇われるよりも、雇う側の発想を持つ」という考え方を紹介しています。契約条件は、自分から変更を提案し、相手と合意して組み直すことができます。時間を売る立場にとどまるのか、成果や仕組みで受ける立場へ移るのか。その選択の入口が、請負と準委任の理解です。

私はこれまで26年、延べ6万人ほどの会社員と向き合ってきましたが、動けるうちに、できれば40代のうちに手をつける人ほど、契約の組み替えにも柔軟でした。年齢を重ねるほど、体力も気力も新しい形に挑みにくくなるからです。

ポイント よくある質問

業務委託の契約前に確認したい代表的な疑問と回答

起業前質問集

Q.請負と準委任は何で見分けますか?

完成した成果物に対して報酬を受けるのか、作業や助言の遂行に対して報酬を受けるのかを確認します。契約名だけでなく、完成責任、検収、報酬条件など契約全体で判断してください。

Q.契約書がなくても業務委託は成立しますか?

口頭でも合意が成立する場合はありますが、委託内容、報酬、支払期日、知的財産、中途解約の条件を確認できません。仕事を始める前に書面かメールへ残してください。

Q.発注者から勤務時間を指定されたら請負ですか?

契約名だけでは決まりません。仕事の順序や時間を誰が管理するかなど、実際の働き方によって労働者性や偽装請負の問題が生じることがあります。

Q.業務委託を受ける前に最低限何を確認しますか?

成果物や業務範囲、報酬、支払期日、検収、中途解約、知的財産、損害賠償を確認します。少なくとも委託内容・報酬・支払期日の3点は文字で残してください。

ポイント 契約の種類を確かめてから返事をする

業務委託を引き受ける前に確かめる契約の種類

point

業務委託を持ちかけられたら、まず完成責任を負う部分と、事務の遂行を委ねられる部分を分けてみましょう。そのうえで、成果物、検収、報酬、中途解約、知的財産、損害賠償の条件を文字で確認すると、負う責任を見通しやすくなります。

そのうえで、制度の全体像は公式の解説で確かめるのが確実です。開業や契約の前に、公正取引委員会か中小企業庁が出しているフリーランス新法の解説を一本、最後まで読んでおいてください。SNSで流れてくる断片よりも、確かな地図になります。

請負と準委任、そして偽装請負の線引きは、一度つかんでおけば次からは自分で判断できます。フリーランス新法で具体的に何が守られるのかは、次の記事で確かめられます。

業務委託は、ただ仕事を安く請ける手段ではありません。契約の種類を自分で選べると分かれば、受け身ではなく対等な立場から仕事を組み立てられます。まずは目の前の一件が請負か準委任か、そこから確かめてみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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