塾講師から独立する|教室を持たずに月謝を積み上げる順番

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「教室を借りるお金がたまるまで、独立はまだ先の話だと思っていました」。塾で教えてきた方から、そんな言葉を何度も聞いてきました。

けれど、やる順番を入れ替えるだけで、その「先の話」はぐっと手前に来ます。教室を持つより先に、月謝という受け皿を用意しておく。この記事では、教室を借りずに、勤めを続けながら月謝の器を先に作っていく道筋を、支援の現場で見てきた立場からたどります。

ポイント 塾講師の独立でつまずくのは集客ではない

集客より先に整える月謝が続く仕組みの土台

塾講師

塾講師の独立というと、多くの人がまず「生徒がどれだけ集まるか」を心配します。ところが、実際に足踏みする原因は集客そのものよりも、入ってきた生徒の月謝が翌月も翌々月も続く仕組みがないことにあります。単発の指導を1コマずつ売っている限り、売上は毎月ゼロから積み直しになります。

塾に通わせたい家庭が、どれだけお金を使っているかを見ておきます。学習塾は、経済産業省の特定サービス産業動態統計でも売上高や受講生数が長年調べられてきた、一定の規模を持つ市場です。目の前にあるのは、確かな需要です。

家庭の負担も具体的です。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表、2026年1月訂正版)によると、公立中学校に通う子ども1人あたりの学習塾費は、年間230,385円でした。これは塾に通っていない子どもも含めた全生徒の平均で、実際に学習塾費を支出した家庭だけの平均は年間約34万9千円です。

裏を返せば、それだけの支出が現に生まれている分野だということです。問われているのは、その支払いの一部を、あなたのところへどう定期的に向けるかです。

ポイント 教室の看板を外しても値段がつく指導力の正体

教室の看板を外しても値段がつく指導力の正体

塾講師

大手塾の教室長として集団授業を回してきた経験は、独立してからが本当の値どころです。拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』の第4章に、胴元化という考え方があります。自分が1コマずつ時間を切り売りする立場から、続く仕組みを持つ立場へ移っていく、という筋道です。

塾講師にあてはめると、これは「自分が教え続けること」と「月謝が入り続ける形を持つこと」を分けて考える発想になります。教室という箱ではなく、月謝という仕組みを先に持つ。そうすれば、生徒1人あたりの単価と人数を自分で設計できます。組織の看板がなくても選ばれる講師は、指導の腕だけでなく、この続く形を自分の手元に置いています。

ポイント 教室を借りるより先に月謝の受け皿を作る

教室を借りるより先に用意する月謝の受け皿

塾講師

順番はこうなります。まず、オンラインでも成り立つ指導の形を1つ決めます。次に、月謝を毎月受け取る申込みと決済の窓口を用意します。生徒を集めるのは、その受け皿ができてからです。器が先、生徒は後。逆にすると、集めた生徒を単発で消費して終わります。

この順番なら、夜と週末だけで受け皿を整えられます。教室の家賃という固定費を背負わないので、生徒が少ない時期も固定費を抑えやすくなります。月謝制にしておけば、1人が続けてくれるほど土台は厚くなります。単発の指導はその都度の収入で終わりますが、月謝という続く形にしておけば、収入は独立後も続いていきます。

ポイント 教室長から月謝制へ切り替えた神谷さんの記録

教室長から月謝制へ切り替えた神谷さんの記録

塾講師

大手進学塾で教室長を8年務めた神谷さん(38歳)は、独立を決めた当初、まず貸し教室を探していました。物件と集客ばかりを先に考えて、準備が半年ほど止まっていたそうです。「教室が持てないうちは無理だ」と、そこで足踏みしていました。

教える相手が変わったのは、先に独立した会員さんの勉強会がきっかけでした。その会員さんは、教室を借りずオンラインだけで月謝制を回していて、生徒が何人のときに月いくら入っていたか、値上げをどう切り出したかまで、具体的な数字で話してくれました。聞いているうちに、神谷さんは自分の順番が逆だったと気づきます。貸し教室の計画をいったん外し、オンライン指導と月謝の申込み窓口を先に整えることに切り替えました。

そこからの伸びは、生徒の数より単価の上げ方に表れています。独立から15ヶ月で、月謝は1人あたり1万2千円から、受験対策を組み込んだ2万2千円まで上がりました。値上げを切り出すとき、何人かは離れるだろうと覚悟していたそうです。ところが、独立時から通う4人は、値段が上がっても一人も欠けませんでした。

生徒はそこから9人まで増え、月謝を掛け合わせると月に19万8千円になります。月謝の本数を積み増すより、値段を上げても選ばれ続ける関係を先に作るほうが、教室を持たない独立では効いてきました

ポイント 独立の前に勤めのうちから仕込んでおく下準備

独立の前に勤めのうちから仕込んでおく下準備

塾講師

勤めているうちにやれることは、思ったより多くあります。今の職場で「どういう教え方が生徒に効いたか」を言葉にして残しておくこと。月謝の決済に使えるサービスの手数料を調べておくこと。どれも辞める前に済ませられます。まずは辞める前に、オンラインの模擬授業を1コマだけ録っておくところからで十分です。

気をつけたいのは、勤め先の就業規則です。準備の段階でも、勤め先に知られたくないなら、まずは服務規程の該当箇所に目を通しておきます。生徒を今の塾から連れ出すような動き方は、信用を壊すので避けます。器づくりを先に、生徒集めは辞める前後から。この線引きを守るほど、独立後の足場は安定します。

ポイント よくある質問

塾講師の独立を考える人からよく届く質問と回答

起業前質問集

Q.教室がなくても、生徒は集まりますか?

集めることは可能です。オンライン指導や体験レッスンから入り、月謝制で続けてもらう形にすれば、教室という箱は必須ではありません。まずは無料か低額の体験を1回だけ開いて、続けたいと言ってもらえるかを確かめるところからで十分です。

Q.勤め先に独立の準備を知られませんか?

準備の中身しだいです。指導の記録づくりや決済の下調べは勤め先の外の作業なので、就業規則の範囲で進められます。生徒の引き抜きにあたる動きだけは避け、集客は辞める前後から始めると、無用な摩擦を防げます。

Q.オンラインだけで月謝制は成り立ちますか?

成り立ちます。週1回の指導を月謝でまとめ、宿題の確認や質問対応を挟めば、対面に近い関係を保てます。地域に縛られないぶん、通いにくい家庭からの申込みも受けられます。

Q.最初の月謝は、いくらに設定すればよいですか?

相場から大きく外さないことが目安です。個人指導の月謝は1人あたり月1万円台から始め、受験対策など手のかかる指導は2万円台へ上げていく形が現実的です。安すぎると続けるほど苦しくなるので、続けられる金額から決めます。

ポイント 教室ゼロで月謝を積み上げる独立の最初の一歩

教室ゼロで月謝を積み上げる独立の最初の一歩

point

いきなり教室を探す必要はありません。今日できるのは、同じ塾講師から独立した先輩が一人でもいれば、最初の半年はどうだったかを会いに行って聞くことです。物件や集客の前に、月謝の受け皿をどう作ったかを一次情報として聞けます。生の話に勝る教材はありません。

教室という箱は、独立の入口ではなく、続けた先で必要になったら持てば間に合います。先に持つべきは、月謝という続く形のほうです。

講師業で起業する手順|「教える経験」を月収に変える4ステップ
講師として起業すると言うと、いきなり大きなホールで講演する姿を想像する方が多いのですが、実際の入り口はずっと小

あなたが教室で磨いてきた指導力は、組織の看板を外したときに初めて本当の値段がつきます。まずは月謝の受け皿を1つ、勤めを続けながら形にしてみるところから始めてみてください。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!