新島で起業するなら何から始める? コーガ石とサーフィンの島で需要を見つける手順

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

竹芝の桟橋から夜の船に乗り、翌朝に白い砂浜の島へ着く。サーフボードを抱えた人たちに混じって歩きながら、ふと「この島で自分の仕事を持てたら」と考えたことはないでしょうか。新島は東京都の伊豆諸島に浮かぶ有人離島で、島ぜんぶがコーガ石という珍しい石でできた、海とサーフィンの島です。

ただ、好きな島で暮らすことと、その島で食べていくことは別の話です。観光で訪れる楽しさのまま移住してしまうと、肝心の「何で収入を得るか」が宙に浮きます。会社に勤めながら新島に通うところから始めて、島の中で頼られる仕事をどう作っていくかを、これまでの起業支援の現場で見てきた流れに沿って整理します。

ポイント 新島という市場の輪郭をつかむ

人口とアクセスと島だけの資源を最初に押さえる

新島

まず、島の規模を数字で押さえておきます。東京都「住民基本台帳による世帯と人口」では、新島村の人口は2,336人です(2026年1月1日現在)。この規模の島では、お客さんの数より「島の中で誰に頼られているか」のほうが、仕事の続き方を左右します。高齢化率は40.5%です。内閣府の高齢社会白書で示される全国の高齢化率が29%台であることと比べても高く、暮らしの細かな困りごとが手つかずのまま残りやすい土地です。

人口とアクセスの実際

アクセスは、竹芝桟橋から東海汽船の大型船で夜に出て翌朝着く便と、高速ジェット船で約2時間20分の便があります。空からは調布飛行場の小型機で約35分です。日帰りは難しくても、金曜の夜に船に乗れば土日を島で過ごせる距離なので、勤めを続けながら通うリズムは作れます。

コーガ石とサーフィン、この島だけの素材

新島の固有性は、ほかの伊豆諸島とも違います。島全体が「コーガ石」と呼ばれる白い火山石でできていて、これは世界でも新島とその周辺でしか産出されない貴重な石です。長年「イタリアのリパリ島にも同様の石がある」と言われてきましたが、現地を調査した地質学者によってリパリ島の石は成分は似ていても質が異なることが確認されており、正確には新島固有の石材です。海岸沿いに点在するモヤイ像も、このコーガ石を彫って作られたものです。海ではサーフィンの大会が開かれ、国内外のサーファーが季節ごとに島を訪れます。

つまり新島には、石・海・サーフィンという、ほかの島では真似のできない素材があります。仕事を考えるときは、この素材に自分の経験を掛け合わせられないかという視点が出発点になります。

ポイント 知っておきたい支援の枠組み

離島振興と移住・創業の窓口の位置づけを知る

新島

新島村は、離島振興法にもとづく離島振興対策実施地域に含まれています。東京都は「東京都離島振興計画(令和5年度〜令和14年度)」を定めていて、大島・利島・新島・神津島など8町村9島を対象に、産業や暮らしの基盤づくりを進めています(東京都総務局・2023年)。

補助や窓口は、方向が決まってから使う道具

移住や創業に関する補助・相談の窓口は、島の中にもあります。ただ、これらは何で食べていくかの方向が見えてきたあとに使う道具です。「とりあえず相談に行く」だけでは、担当の方も答えようがありません。

新島は、2026年6月25日に衆議院を通過した有人国境離島法改正案により、特定有人国境離島地域への追加指定が進んでいます(2026年6月末時点で参議院審議中)。この改正案には新島・式根島を特定有人国境離島地域に追加することが盛り込まれており、法成立後は国境離島向けの支援制度を活用できる可能性が生まれます。ただし、どの支援が使えるか・どのような条件があるかは、法成立後に役場や担当窓口で最新情報を必ず確認することが重要です。同じ伊豆諸島でも、使える制度は島ごと・時期ごとに変わります。自分の島がいまどの制度の対象なのかを最初に確かめておきたいところです。

ポイント 新島で考えられる仕事の入口

島の素材と会社員経験を掛け合わせる入口の例

新島

島の素材に自分の手持ちを掛け合わせると、いくつかの入口が見えてきます。サーフィンの来島者に向けた撮影や送迎、宿の予約まわりの代行、コーガ石を使った小物の企画と発信、高齢の住民の暮らしを支える細かな代行。どれも「島の外の人にも届ける媒体を、最初から自分で持つ」ことが続けるための条件になります。

  • サーフィン来島者向けの撮影・動画と、宿や送迎をつなぐ案内
  • コーガ石やモヤイ像をモチーフにした小物の企画とオンライン販売
  • 高齢化が進む島の暮らしを支える、買い物や送り迎えの代行
  • 会社で身につけた事務・経理・広報スキルを、島の事業者に届ける裏方仕事
二拠点から始めるという選び方

いきなり移住しなくても、入口はあります。会社に勤めながら東京と新島を行き来し、来島者向けの発信やオンラインでできる裏方仕事から始める二拠点のかたちです。島で過ごす週末に手応えを確かめ、収入の柱が見えてきてから移住を判断すれば、暮らしごと崩すリスクは避けられます。関係人口として島と関わりながら、少しずつ仕事の根を張っていく進め方です。

ポイント 島で「名前で頼まれる」までの流れ

通いから始める人によくたどる2年目までの道のり

新島

島で仕事を持ちたいと考えて新島に通い始めるのは、30代から40代の会社勤めの方が多い印象です。たとえば、40代で都内の会社に勤めながら、サーフィンで何年も新島に通っていた方が、いつか島で仕事を持ちたいと考えたとします(仮定)。こうした方が最初にやりがちなのは、来島者向けの撮影やSNS発信を、見よう見まねで一人で始めることです。反応はぽつぽつあっても、収入として続く形にはなかなかなりません。流れができるのは、たいてい一人で抱えるのをやめたあたりからです。

他の島の会員の組み合わせが、参考になる

転機になりやすいのは、起業18フォーラムで、別の離島の会員さんが「撮影」と「宿の手配」と「物販」をどう組み合わせて回しているかを聞いたときです。一つの仕事だけで島の収入を立てようとすると無理が出る、という気づきが、他人の事例を通して腑に落ちる場面です。そのあと会員さん同士で意見をもらいながら、自分が新島で誰のどんな困りごとに応えられるかを一つずつ言葉にして、サービスの組み合わせを整理していく方が多いです。

整理がつくと、島の中での見られ方が変わっていきます。来島者を撮るだけの人から、「宿のことも送迎のことも、あの人に聞けばわかる」と言われる人へ。移住して2年目あたりになると、お客さんの数を数える段階はとうに過ぎ、名前で名指しされて頼まれる関係が増えていく。そういう地点に立つ方が多いです。

  • 一人で抱えず、ほかの島の会員の組み合わせ方を知るところから流れが変わる
  • 誰のどんな困りごとに応えるかを言葉にして、サービスを束ねる
  • 数を追う段階から、名前で頼まれる関係へと土台が移る

こうした道のりは、人口2,300人台の島だからこそ成り立ちます。狭い土地で深くつながった信用は、外から来た大きな看板では簡単に崩せません。

ポイント 狭い市場で一番になり、役場で需要を確かめる

島という小さな世界で立ち位置を決め最初の一歩を踏む

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拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に、すでにお金が流れている場所に自分の商品を置く、という考え方を紹介しています。新島は、市場としては確かに狭い島です。けれど、その狭さは弱点ではありません。島という狭い世界で「この分野ならあの人」と言われる一番の存在になれば、都会の大きな市場で埋もれるより、ずっと確かな足場になります。

来島者の撮影なら島で一番、宿まわりの段取りなら島で一番。範囲を絞って一番を取りにいくほうが、島では現実的です。大きく広げるより、狭く深く。この順番が、人口の限られた島で長く続く仕事の作り方になります。

その方向が見えてきたら、現地の窓口を道具として使っていきます。最初の一本として、新島村役場の産業観光課に電話をして、島でいま足りていない仕事や住民が困っていることを一つだけ聞いてみてください。観光ガイドには載らない、島のリアルな需要が見えてきます。

ポイント よくある質問

新島での起業準備でよく聞かれることへの個別回答

起業前質問集

Q.会社を辞めずに、新島で起業の準備を進められますか?

進められます。竹芝桟橋から金曜夜の船に乗れば土日を島で過ごせる距離なので、勤めを続けながら通う準備は可能です。来島者向けの発信やオンラインでできる裏方仕事なら、東京にいる平日でも手を動かせます。東京と新島を行き来する二拠点のかたちで、収入の柱が見えてから移住を判断すれば、暮らしごと崩さずに済みます。いきなり移住して退路を断つより、関係人口として関わるところから始めるほうが無理がありません。

Q.新島に、国境離島向けの起業支援金はありますか?

2026年6月25日、有人国境離島法改正案が衆議院を通過しました(2026年6月末時点で参議院審議中)。この改正案には新島・式根島を特定有人国境離島地域に追加することが含まれており、法成立後は国境離島向けの支援制度を活用できる見込みです。一方で、離島振興法にもとづく東京都の離島振興計画の対象であることは従来から変わりません。使える支援の内容や条件は法成立後に確定しますので、必ず最新情報を役場で確認してから計画を立てることが重要です。同じ伊豆諸島でも、使える制度は島ごと・時期ごとに異なります。

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新島で仕事を作ることは、好きな島を眺める側から、島に頼られる側へ回ることです。その回り方を、今日の一本の電話から確かめてみてください。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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