記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
アパレルの販売員として10年以上、店頭でお客様の接客をしてきました。会社の看板があるから売れているだけで、自分の名前で何かを売るなんて自分には無理だと感じています。
接客や販売の仕事しかしてこなかった会社員でも、自分の名前で稼ぐことはできるのでしょうか?

● 回答
会社の看板がないと売れない、と思い込んでいませんか。実は接客や販売の現場で積み上げた力ほど、自分の名前で価値になりやすいものです。お客様の表情を読み、その場で言葉を選んできた経験は、机の上では身につかないからです。
「看板で売れていただけ」という誤解
多くの接客業の方が、売れていたのは会社のブランド力のおかげで、自分には何も残っていないと考えています。けれど、同じ店で同じ商品を扱っても、指名で買いに来るお客様がつく販売員とそうでない販売員に分かれます。その差を生んでいるのは、看板ではなくその人自身の接し方です。
私はこれまで多くの会社員の起業準備に向き合ってきましたが、接客業の方が見落としているのは、自分の中にある現場力でした。店頭で毎日くり返してきた「お客様の迷いを言葉にして背中を押す力」は、そのまま売れる商品になります。足りないのは力ではなく、その力を置く場所への気づきです。
- 看板がないと無理という思い込み:
ブランドではなく自分の接し方で指名されてきた事実を見落としている - 資格や肩書きがないと売れないという誤解:
現場で磨いた判断力は資格より説得力を持つことがある - 接客は接客の場でしか役立たないという決めつけ:
人の迷いを解く力は商品選びや相談業など別の場でも通用する
お金が流れている場所に、自分を置く
強みがあると分かっても、それをどこで売るかを間違えると収入になりません。ここで効いてくるのが、すでにお金が動いている場所を選ぶという視点です。
拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に、起業を陣取りゲームにたとえる話があります。何もない更地で客を一から集めるのではなく、すでにお金が流れている場所に自分の商品を置く、という考え方です。接客業の方なら、お客様が服や物を選ぶときに迷う場所にこそ、相談という商品を置けます。
たとえばアパレルの経験があるなら、買い物に同行して服を選ぶ相談、写真でコーディネートを助言する相談など、すでに人がお金を使っている場面のすぐ隣に立てます。今の仕事で「お客様からよく聞かれること」を1週間メモに取り、同じ悩みが3回以上出たものに印をつけてみてください。そこが、あなたの商品を置ける場所です。
日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業した業種で最も多いのはサービス業の29.2%で、飲食店・宿泊業も14.5%を占めていました。接客やサービスの現場経験を起点に独立する人は、開業者全体の中でもっとも多い層です。現場で人と向き合ってきた経験は、独立の入口として決して弱い土台ではありません。
会員さんの実例:販売員から始めた室井さん
起業18フォーラム会員の室井さん(仮名・30代後半・婦人服の販売員・夫と子ども一人)は、最初「接客しかできない自分に売り物なんてない」と話していました。週末に物販を試したものの仕入れに迷い、2ヶ月ほどで手が止まってしまったそうです。
転機は、店頭で配っていた顧客アンケートに「あなたに選んでもらった服が一番しっくりきた」と書かれていたのを見つけたことでした。室井さんは体型に悩むお客様への服選びが得意だと自分で気づき、その力を物販ではなく相談に置き直しました。お客様が服選びで迷う場所、つまりSNSで「何を着ればいいか分からない」と発信している人に向けて、写真で助言する相談から始めたのです。
勤めながら週末に一件ずつ受け、半年で口コミが回り、12ヶ月目には月4万5千円ほどになりました。あなたが現場で「これは得意だ」と感じる瞬間を3つ書き出し、その力を必要としている人がすでにお金を使っている場所はどこかを考えてみてください。

自分の名前で売れないのではなく、力を置く場所をまだ見つけていないだけです。現場で誰かの役に立った場面を思い出すところから、その一歩は始まります。
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