淡路島で起業する始め方|観光と食の動線を活かす手順と支援制度

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

淡路島で起業したいと考えるとき、多くの人がまず「移住してから何で食べていくか」を悩みます。けれど淡路島の場合、その順番は逆のほうがうまくいきます。

兵庫県の淡路島は、神戸からも大阪からも日帰りで通える距離にありながら、観光・農業・食という太い資源を持つ島です。パソナグループの本社機能移転で島の経済が動き出し、観光客の流れも年々太くなっています。

この記事では、26年・60,000人の起業相談で見てきた視点から、淡路島という島の経済の特徴、会社員が通いながら準備する手順、3市の支援制度、起業18フォーラムの会員さんが歩んだ道筋まで、順に紹介していきます。

ポイント 淡路島の経済が「お金の流れる場所」に変わってきた

パソナ移転と観光復調で太くなった島の動線

淡路島

淡路島で起業を考えるなら、まず島の経済がどう動いているかを知ることが出発点になります。淡路島は淡路市・洲本市・南あわじ市の3市で構成され、総務省統計局の令和2年国勢調査をもとにした県集計では、3市合わせた人口は約12.7万人です。瀬戸内海で最も大きな島でありながら、本州とは明石海峡大橋でつながっています。

この島の経済を語るうえで外せないのが、パソナグループの本社機能移転です。2024年時点で淡路島へ移った社員は約1,300人規模となり、島外からの通勤者なども含めた関連勤務者は約2,000人規模と報じられています。

移転に合わせて、ニジゲンノモリやHELLO KITTY SMILEといった観光・飲食施設が次々と開業しました。閑散としていた西海岸エリアに人の流れが生まれ、観光客向けのレストランや体験施設が島の新しい顔になっています。

観光の数字も回復しています。淡路島の宿泊者数は2024年に2019年比113%まで戻り、宿泊客の発地別では近畿以外からの割合が30.7%まで広がりました。遠方からわざわざ訪れる人が増えているということです。

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』で、起業を「陣取りゲーム」にたとえる考え方を紹介しています。すでにお金が流れている場所に、自分の商品をそっと置く発想です。淡路島は今、観光客と移住者という二つのお金の流れが太くなっている島で、その動線のどこに自分が立つかが起業の起点になります。

ポイント 3市の創業支援と知っておきたい制度

登録免許税の軽減と商工会の創業セミナーを整理

淡路島

淡路島で会社をつくるなら、3市が用意している創業支援制度を「道具」として知っておくと役に立ちます。淡路市は産業競争力強化法にもとづく創業支援等事業計画について中小企業庁の認定を受けており、淡路市商工会が窓口相談・創業セミナー(eラーニングを含む)・個別指導を行っています。

この創業セミナーは「特定創業支援等事業」に位置づけられています。一定の要件を満たして市の証明を受けると、会社設立時の登録免許税の軽減が受けられます。株式会社なら資本金の0.7%で計算される登録免許税の最低額が15万円から7万5,000円に、合同会社なら6万円から3万円に半額になります。

洲本市・南あわじ市も含め、3市はそれぞれ商工会・商工会議所と連携した相談体制を持っています。淡路市では新規起業者向けの補助金制度もあり、その利用には創業セミナーの受講が条件になっています。

  • 特定創業支援等事業の証明:
    セミナー受講などの要件を満たすと登録免許税が半額になる
  • 商工会・商工会議所の窓口相談:
    事業計画の壁打ち相手として無料で使える
  • 市の創業者向け補助金:
    セミナー受講が条件になる制度もあるため早めに確認

ここで気をつけたいのは順番です。こうした制度は「何を売るか」の方向性が固まったあとに効いてくる道具です。まだ事業の中身が見えていない段階で窓口に行っても、担当者も答えようがありません。制度はまず情報として頭の片隅に置いておけば十分です。

ポイント 観光×農業×食の動線に商品を差し込む

観光・農業・食の三資源と会社員が始めやすい入口

淡路島

淡路島には、観光・農業・食という三つの太い資源があります。淡路玉ねぎに代表される農産物、瀬戸内の海産物、それらを使った食のブランド。そして年々増える観光客。この三つが重なるところに、会社員が始めやすい起業の入口があります。

観光客の流れに乗せる

パソナ系の施設や観光スポットが集める来島者は、体験や土産にお金を使います。島の食材を使った加工品をオンラインと現地の両方で売る、農園や工房の体験プログラムを企画する、観光客向けの写真・動画コンテンツを作る。観光客という流れに自分の商品を差し込む発想なら、ゼロから需要を生む必要はありません。

島の定住層を相手にする

淡路島には約12.7万人の定住層がいます。観光客だけでなく、島で暮らす人の困りごとを解決する事業も成り立ちます。高齢化が進む地域では、暮らしのサポート・配食・移動支援といったニーズが現実にあります。観光の波に左右されにくいのがこちらの強みです。

会社員スキルをそのまま持ち込む

事務・経理・広報・Webマーケティング・ECサイト運営。勤め先で身につけたスキルは、島の事業者にとって不足しがちな部分です。島の生産者や飲食店の販路づくりを手伝う形なら、神戸や大阪に勤めながらでも始められます。

  • 島の食材×EC:
    淡路の農産・海産物を加工し、現地とオンラインの両輪で売る
  • 観光客向け体験事業:
    農業・漁業・ものづくりの体験を企画し、来島者の動線に置く
  • 島の事業者の販路支援:
    会社員スキルで生産者・店舗のWeb集客や販路を代行する

いきなり移住しなくても始められるのが、淡路島の地理的な強みです。神戸・大阪から日帰りで通える距離だからこそ、勤めを続けながら関係人口として島に関わり、手応えを確かめてから移住を判断する順序が組めます。

ポイント 会員さんの歩み|通いながら島の食を商品にした道筋

自己流の壁から学び直して立て直した会員さんの一例

淡路島

起業18フォーラムの会員さんに、神戸の会社に勤めながら淡路島の食を商品にしようとした40代の方がいました。仮名で永井さんとします。学生時代を淡路島で過ごし、島の食材への思い入れが強い方でした。

永井さんは最初、自己流で動き始めました。淡路の特産品を仕入れてネットショップに並べたのですが、商品点数を増やすことばかりに気を取られ、6ヶ月目に入っても月収は数千円のままでした。

転機になったのは、起業18フォーラムの勉強会で「誰の、どんな場面に売るのか」を問われたことでした。永井さんはそこで初めて、自分が「淡路島の食材」という入口だけで考えていたことに気づきました。

そこから永井さんは、ターゲットを「島外に住む淡路島出身者」と「一度旅行で島を訪れた人」に絞り込みました。商品も玉ねぎを使った加工品の定期便ひとつに集中させ、観光で島に来た人がその場で登録できる導線を現地の協力店に置かせてもらいました。

対象と商品を一つに絞ってから注文が安定し、12ヶ月目には永井さんの定期便は月収20万円ほどで推移するようになりました。今は神戸の勤めを続けながら、週末に島へ通う二拠点の形を保っています。

永井さんが立て直せたのは、特別な才能があったからではありません。「広げる」のをやめて「絞る」に切り替えただけで、島の食という素材が初めて商品になりました。

ポイント 淡路島で起業を始めるなら、今日できること

基礎を整えてから制度と現地に動き出す順番

淡路島

淡路島は、観光・農業・食という太い資源と、神戸・大阪からの近さを併せ持つ島です。だからこそ「移住してから考える」のではなく、「通いながら方向性を固めてから動く」順番が向いています。

まずやるべきは、土地探しでも会社設立でもありません。起業18フォーラムの動画やセミナーで、起業の基礎と全体像をつかむことです。「自分は何で食べていくのか」「淡路島の動線のどこに立つのか」をはっきりさせるのが先決です。

方向性が見えてきたら、そこで初めて3市の創業セミナーや特定創業支援等事業、移住相談の窓口が役に立ちます。制度は行き先が決まった人にとって強力な後押しになります。

そして、いきなり生活の拠点を移す必要もありません。関係人口として週末に通うところから始め、手応えを確かめながら段階的に島との距離を縮めていけば十分です。

淡路島で起業したいと考えているなら、今日できることは、勤めを続けながら「島のどの流れに自分の商品を置くか」を一つ書き出すだけで十分です。そこから一歩ずつ進めていきましょう。

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淡路島という島は、待っているだけで仕事が生まれる場所ではありません。すでに流れているお金の動線に、自分の小さな商品をどう差し込むか。その問いに向き合うことが、島で長く続く起業の第一歩になります。

ポイント よくある質問

淡路島での起業準備でよく出る疑問を整理しました

起業前質問集

Q.淡路島に移住しないと起業できませんか?

  • 神戸・大阪から日帰りで通える距離にある
  • 通いながら関係人口として始める形が現実的

移住は前提ではありません。淡路島は明石海峡大橋で本州とつながり、高速バスを使えば大阪方面から淡路ICまで約67分、神戸方面からもアクセスできます。電車は通っていませんが、舞子バスストップや高速船を使った通い方が定着しています。

まずは勤めを続けながら週末に通い、関係人口として島と関わるところから始めるのが現実的です。手応えを確かめてから移住を判断すれば、収入のない期間を最小限にできます。

Q.淡路島で起業するのにどんな支援が使えますか?

  • 特定創業支援等事業の証明で登録免許税が半額
  • 商工会・商工会議所の窓口相談や創業セミナー

淡路市は創業支援等事業計画の認定を受けており、淡路市商工会が創業セミナーや個別相談を行っています。一定の要件を満たして市の証明を受けると、株式会社設立時の登録免許税が15万円から7万5,000円に軽減されます。

洲本市・南あわじ市にもそれぞれ商工会・商工会議所の相談窓口があります。ただし制度は「何を売るか」が決まってから使う道具なので、先に事業の方向性を固めることをおすすめします。

Q.パソナの移転は個人の起業に関係ありますか?

  • 観光施設の開業で島に人の流れが生まれた
  • 増えた来島者の動線が個人事業の追い風になる

関係します。パソナグループの本社機能移転で、関連勤務者を含めた約2,000人規模の人が島に関わるようになり、ニジゲンノモリやHELLO KITTY SMILEなどの観光施設が開業しました。閑散としていた西海岸に人の流れが生まれたことで、観光客向けの小さな事業が成り立ちやすくなっています。

大企業の動きそのものより、その結果として太くなった観光の動線を、個人がどう活かすかが大切です。すでに流れているお金の近くに商品を置く発想が、島での起業を後押しします。

Q.淡路島ではどんなビジネスが始めやすいですか?

  • 島の食材を使った加工品のECや体験事業
  • 会社員スキルを活かした事業者の販路支援

淡路島は観光・農業・食という資源が重なる島です。玉ねぎなどの農産物や海産物を使った加工品をオンラインと現地で売る、観光客向けの体験プログラムを企画するといった事業が始めやすい入口になります。

また、事務・広報・Webマーケティングといった会社員スキルは、島の生産者や店舗にとって不足しがちな部分です。島の事業者の販路づくりを手伝う形なら、本州に勤めながらでも無理なく始められます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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