本業の繁忙期に入るたびに起業準備が止まります。止めずに続ける方法はありますか?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

金融機関に勤めており、年に2〜3回ほど繁忙期があります。繁忙期に入るたびに起業準備が完全に止まってしまいます。終わった後に再スタートしようとしても気持ちが冷めていて、また同じことの繰り返しです。

何年もこれを繰り返しています。繁忙期でも起業準備を続ける方法はありますか?

起業前質問集

● 回答

起業18フォーラムの会員Kさん(仮名・52歳・金融機関勤務・親の介護と兼任)が、まったく同じ悩みを持っていました。Kさんは決算期と年度末の繁忙期で毎年止まり、気づけば3年が過ぎていました。「このまま定年まで同じことを繰り返すかもしれない」という焦りが増す一方で、何かが変わる気もしないという状態でした。

Kさんが変えたのは、「繁忙期には全部止まっていい」という発想から「繁忙期でもゼロにしない最低ラインを決める」という発想への切り替えでした。通常期には週末2〜3時間の準備をしていたところを、繁忙期には「週1回、5分だけ顧客候補にLINEで一言送る」だけにしたのです。「繁忙期に止まる」のは意志の弱さではなく、設計の問題です。ゼロになる設計をしているから毎年ゼロになります。

なぜ繁忙期後の再スタートが難しいのか

拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』の中で書いた「4500日理論」の話をさせてください。80歳まで自分のペースで動ける時間は、平均すると約4,500日しかありません。繁忙期のたびに準備がリセットされる状態が続くと、この4,500日が静かに減っていきます。40代でこの問題に気づいた方は、まだ設計を変えられる時間があります。

繁忙期後の再スタートが難しい理由はシンプルです。「完全に止まった状態」から動き始めるのは、「少し動いている状態」から続けるより、はるかにエネルギーが要るからです。停止した車を動かすには大きな力が必要ですが、動いている車を維持するのは少ない力で済みます。この物理の法則は、起業準備にも当てはまります。

繁忙期を想定した設計を最初に作る

繁忙期対策は、繁忙期が来てから考えるのでは間に合いません。通常期に「繁忙期用の最低ライン行動」を決めておくことが重要です。

  • 最低ライン行動の決め方:通常期の準備のうち、最も少ない工数でできる「これだけはゼロにしない」1行動を決める
  • 例:週1回5分で顧客候補にLINE1通 / 月1回30分でメモを見返す / 週1回SNSへのシェアだけ行う
  • 再開時の仕掛け:繁忙期終了の翌朝カレンダーに「再スタートの日」を繁忙期に入る前にセットする
  • 記録を残す:繁忙期中に動いた記録を1行でもメモしておくと、終了後の熱が戻りやすい

繁忙期用の最低ライン行動は、「頑張ればできる量」ではなく「頑張らなくてもできる量」に設定することが重要です。週1回5分が守れれば、繁忙期明けに「ゼロから戻す」苦労がなくなります。

Kさんが変わった1年後

Kさんは「繁忙期用の最低ライン」を持ってから、1年間で繁忙期を3回挟みましたが、一度もゼロにしませんでした。通常期の準備は以前と同じく週末2〜3時間ですが、繁忙期は「週1回のLINE」だけ。それだけで、繁忙期明けに「あの人からの返信を確認する」という小さな動機が残り続けました。繁忙期を「止まる期間」から「最小で続ける期間」に変えるだけで、定年前に一歩踏み出せる状態が整います。

10ヶ月目に初めての業務委託収入が入ったときのKさんのメッセージは、「5分で続けていたことが、ここまでつながるとは思いませんでした」というものでした。まず今日、繁忙期でもゼロにしない「最低ライン行動」を1つ決めてください。

通常期の準備をゼロにしなかった人が、定年前の最後のチャンスをものにしています。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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