起業準備で最初に作るのは事業計画書ですか? 順序を見直したい人はどうすれば?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

30代後半のメーカー勤務会社員です。起業準備の本を読むと「まず事業計画書を書きましょう」と書いてあります。でも数字も顧客像もまだ何もないのに、どう書けばいいのでしょうか? 最初に作るのは事業計画書で本当に正しいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「事業計画書から始めるべき」と思っていませんか? 実はその順序が、在職のまま起業準備を進める方の停滞要因として、起業18フォーラムでは頻繁に話題に上がります。精緻な事業計画書が特に必要になりやすいのは、融資を申し込む段階や、複数人で事業を立ち上げる段階です。本業を続けながら小さく始める場合、最初に作るのは事業計画書ではなく「1人に聞く時間」です。

事業計画書を先に書くと止まる3つの理由

3ヶ月目の試行錯誤期に事業計画書から入ると、次のような行き詰まりに必ず出会います。

計画書先行の典型的な詰まり

  • 顧客像が架空のままで具体化しない:
    ペルソナを書こうとしても、本物の顧客に会っていないので推測が積み重なる
  • 売上予測の根拠が「希望」だけになる:
    月10万円・20万円という数字を置いても、誰が払うのかが空白のまま埋まらない
  • 競合分析が机上の整理で終わる:
    他社サイトを見て差別化点を書いても、実際の顧客がその違いに気づくかわからない

計画書を仕上げた満足感だけが残り、肝心の「最初の1人」に手が届かない時間が半年・1年と過ぎていきます。

先に「1人に聞く」が機能する理由

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に「最初の客を捕まえれば、それで9割は成功している」という考え方があります。これは、顧客が1人いれば、計画書のすべての数字に裏付けが入る、という意味です。誰が・なぜ・いくらで支払ったかが具体的にわかれば、ペルソナも価格も需要も、推測ではなく事実から書き直せます。

「1人に聞く」とは、立派なインタビュー設計をするという意味ではありません。30分の壁打ちでよいので、想定する顧客像に近い知人1人に「こういうサービスがあったら使うか」を聞くだけ。すると、計画書では出てこなかった「こういう場面でなら使うけど、これがネックでお金は払いにくい」という生の反応が、たった30分で手に入ります。

3ヶ月目の試行錯誤期に動く順序

起業18フォーラム会員の藤原さん(仮名・30代後半・大手メーカー設計職・妻と小学生の子2人)は、起業準備3ヶ月目に同じ悩みを抱えていました。事業計画書のテンプレートを3種類ダウンロードしたものの、ペルソナ欄が埋まらず、半年間ノートだけが厚くなっていきました。

転機は、勉強会で「事業計画書の前に、想定顧客に近い知人1人と30分話してください」という助言を受けたことです。社内で隣の部署にいた40代男性に「メーカー設計者向けの図面チェック代行があったら使うか」を聞いたところ、「使う場面はあるが、競合との比較資料がないと社内決裁が通らない」という具体的な指摘が返ってきました。

その壁打ちから4週間で、藤原さんは「比較資料の作成代行」という別商品を仮設計し、再度同じ知人に提案。3件の試験案件を受注後、半年後には事業計画書を改めて書き直し、現在は本業に在職したまま月収7万円の継続案件を保有しています。事業計画書は「最初に書くもの」ではなく、最初の顧客が現れたあとに書き直すもの、と順序を入れ替えるだけで動き始めます

事業計画書を埋めようとして手が止まっている方は、今夜、想定顧客に近い知人を1人だけ思い浮かべてください。来週その方と30分話す予定を入れた瞬間に、計画書の空白の理由が見え始めます。書くより先に、聞くこと。順序を入れ替えるだけで、起業準備は静かに動き出します。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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