ボーナスを起業準備の元手にしてよい? 退職金と別の判断軸が必要な理由

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

会社員ですが、夏のボーナスを起業準備の元手に充てようか迷っています。退職金は手をつけない方がいいと聞きますが、ボーナスも同じように温存したほうがよいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

ボーナスは退職金と性質が違うため、同じ判断軸で扱うと使い方を誤ります。ボーナスは「半年後にまた入る前提の収入」、退職金は「人生で一度きりの大きな備え」です。性質が違えば、起業準備に回せる金額の基準も違います。順番に整理していきます。

ステップ1:ボーナスと退職金の性質の違いを把握する

日本経済団体連合会「2025年夏季賞与・一時金大手企業業種別妥結状況」によれば、大手企業の夏季賞与の平均は1人当たり95万8,103円と公表されています。一方で、厚生労働省「就労条件総合調査」の最新版では退職金の平均は大学卒で約2,000万円規模です。ボーナスは半年に1回入ってくる継続前提の臨時収入、退職金は人生で1度しか入ってこない一括の備え、という性質の違いがあります

退職金は老後の生活資金・住宅ローン残債・医療備えなど、長期間にわたって使う「土台のお金」です。ボーナスは住宅ローンのボーナス払いや教育費の臨時出費に充てる家計が多く、定常家計の一部として組み込まれているケースも珍しくありません。

ステップ2:ボーナス全額投入の典型的な落とし穴
ボーナスを「全額起業に」と決めた人がはまりやすい罠

  • 住宅ローンのボーナス払いが残っているのに先に起業塾代に使う
  • 家計に伝えずに動いて配偶者と争いになる
  • 「半年後にまた入るから」と支出感覚が緩む
  • 2回目のボーナスで業績悪化により減額され計画が狂う
  • 当面の生活費が足りなくなり結局カードで補塡する

ボーナスは「半年後にまた入る前提」と書きましたが、それは過去の数年間がそうだっただけで、来期も同じとは限りません。経営状況の変化でボーナス額が変動するリスクは、退職金にはない不確実性です

ステップ3:起業準備に回してよい上限の決め方
ボーナスから起業準備に充てる安全な配分の目安

  • 住宅ローンのボーナス払いを先に確保する
  • 家計の臨時出費(家電・教育費)枠を先に残す
  • 残った金額の3分の1以下を起業準備の上限にする
  • 使い道は学びより試走(モニター価格での実施・小規模出店)に回す
  • 配偶者と「今回のボーナスのうち◯円までを使う」と事前に合意する

例えばボーナス手取り60万円の場合、住宅ローン20万円・家電貯蓄10万円・教育費10万円を残し、残り20万円の3分の1=約7万円が起業準備に回せる上限の目安になります。多くの会社員にとって、これくらいの規模で十分に最初の試走は可能です。

起業18フォーラム会員・木村さんのV字復活

起業18フォーラム会員の木村さん(仮名・40代前半・男性・電子機器メーカー設計・既婚で子2人)は、夏のボーナス全額70万円を起業塾に投じてしまい、半年通っても売上ゼロのまま冬のボーナス時期を迎えました。家計に内緒だったため、配偶者と衝突しました。起業18フォーラムに参加して、勉強会で「ボーナスの3分の1ルール」と「家計に共有してから動く」考え方を学び、組み直しに入りました。

木村さんはまず家計の月次会議を始め、「次の夏ボーナスから7万円を試走予算に回す」と配偶者と合意。前職の業務改善経験を活かして、中小製造業向けの業務改善コンサルを月額18,000円から始めたところ、現在16ヶ月目で月額継続契約が5社に到達しました。本人は「家計に共有してから動くようになったら、家でも仕事でも風通しがよくなった」と話してくれました。

拙著『副業で月20万稼ぐ!』に「初期投資を抑えてから始める」という考え方が出てきます。木村さんが立ち直る入口になったのも、この考え方を支援現場で実践に落とし込んだ瞬間でした。

次のボーナスが出たら、明細を見ながら家計の固定出費を先に書き出し、残った金額の3分の1を起業準備の上限と決めてください。金額の決定を配偶者と一緒にやることで、後の衝突が8割減ります。

会社員のまま起業準備する場合の手元資金の目安はいくら?
● 質問 会社員のまま起業準備をしていますが、いずれ退職する場合に備えて手元資金をいくら貯めておけばよいかわか

今夜、過去2年分のボーナス額を表に並べてみてください。変動幅が見えるだけで「半年後にまた入る前提」という思い込みが整理され、安全な配分が自然に決まります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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