カフェ起業の準備ガイド|在職中から始められる手順と資金の考え方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「いつかカフェを開きたい。」会社員の方からこの言葉を聞く機会は、どんな職業よりも多いかもしれません。コーヒーが好き、人が集まる居心地のよい空間を作りたい、自分の城を持ちたい。その気持ちは本物です。

日本フードサービス協会の調査によると、2023年の喫茶店・カフェの市場規模は1兆1,892億円で前年比20%増。コロナ禍からの回復を超えた成長を見せています。

ただ、「カフェ起業=店舗を持つこと」と思い込んで準備を始めると、入口でつまずく方が非常に多いのも事実です。

この記事では、在職中からカフェ起業を進める手順を、資金・経験・準備の順番から具体的にお伝えします。

カフェ起業

ポイント カフェで磨かれた力がビジネスになる理由

接客・空間設計・体験づくりという価値資産

カフェ起業

「カフェを開きたいけど、私には何の強みもありません」 この相談を受けるたびに、少し不思議に感じます。コーヒーが好きで、そこに何年も時間と情熱を使ってきた方に、強みがないはずがありません。

問題は、カフェにまつわる経験を「ビジネスの言葉」に変換できていないだけです。バリスタとして働いてきたなら、コーヒーの産地や焙煎の違いを説明できる知識と言語化力がある。カフェマネージャーを経験したなら、仕入れ交渉、シフト管理、クレーム対応、売上分析を一手にこなしてきた経営感覚がある。「ただコーヒーが好きな人」でも、どのカフェの空間が居心地よいかを言語化できる体験設計のセンスがある。

私はこれを「名もなき強み」と呼んでいます。資格や職歴には書けないけれど、現場や日常の中で育まれた本物の力です。カフェ起業は、この「名もなき強み」を整理するところから始まるのです。

カフェ経験のどの部分がどのビジネスにつながるか、整理してみます。

  • バリスタ経験 → コーヒー豆販売・焙煎ワークショップ・出張バリスタ
  • 接客・ホスピタリティ経験 → コミュニティカフェ・体験型イベント企画
  • 店舗管理・発注経験 → カフェコンサルタント・開業サポート
  • SNS・写真スキル → カフェ集客代行・食のコンテンツ制作
  • 空間づくりのセンス → インテリアアドバイス・ホームカフェ講座

ポイント カフェ起業準備の4つのステップ

在職中から無理なく進める手順

カフェ起業

カフェ起業の相談を受けると、ほぼ全員が同じ罠にはまっています。「まず物件を探し始める」「内装のイメージを固める」「厨房機器を見て回る」。どれも重要な作業ですが、最初にやると、資金が尽きた段階で一度も売上を立てていないという状況になります。

準備の順番を変えるだけで、失敗のリスクは大きく下がります。

ステップ1:自分の「カフェの強み」を棚卸しする

最初にやることは物件探しではなく、書き出しです。コーヒーに関してどんな知識があるか。カフェでの仕事経験は何年か。自分が提供できる体験や価値は何か。「コーヒーが好き」という気持ちの背景に、どんな具体的な知識や経験があるかを言語化していきます。

この棚卸しで必ず確認してほしい「3つのチェック」があります。

  • 一人で始められるか?
  • 一人で続けられるか?
  • 大きなお金がかかりませんか?

この3つを満たすアイデアから動き始めることが、カフェ起業準備の鉄則です。「スタッフを雇って店を開く」「高家賃の路面店を借りる」といったプランは、売上が安定するまでの間にキャッシュが底をつくリスクがあります。

ステップ2:小さくテストして「売れる感覚」をつかむ

棚卸しでアイデアが出てきたら、店舗を持つ前に小さく試します。マルシェへの出店、週末の間借りカフェ、知人宅でのホームカフェ体験会。「自分のコーヒーにお金を払ってもらえる」という体験を最初に積むことが、起業準備として最も重要な一歩です。

ミニマムスタートは、ミニマム努力ではありません。小さな舞台でも本気で提供するから、お客さんの反応が見えて、次に何をすべきかがわかります。起業18フォーラムでも、間借りカフェやマルシェ出店から始めた方のほうが、最初から店舗を構えた方と比べて1年後の継続率が明らかに高い傾向にあります。

ステップ3:数字の現実を直視する

テストを重ねながら、収支計画を作ります。日本政策金融公庫の「2024年度 新規開業実態調査」によると、飲食店の開業費用の平均は985万円(中央値580万円)。自己資金の平均は開業総額の約3割にあたる309万円です。

この数字は、在職中から逆算して準備を始めることの重要性を示しています。「辞めてから考える」では間に合いません。月にいくら貯められるか、いつまでに自己資金を用意するか、補助金や融資をどう組み合わせるかを、在職中に設計しておく必要があります。

ステップ4:資格・物件・資金調達を並行して整える

収支の見通しが立ったら、食品衛生責任者の資格取得と物件探しを並行して進めます。カフェ開業に必要な許可は「飲食店営業許可」(保健所)と「食品衛生責任者」の2本柱。食品衛生責任者は1日の講習で取得できるため、在職中に済ませておくことが可能です。

物件は「最初から理想の場所」を探さないことが重要です。間借りカフェ、シェアカフェ、小規模な路面店と段階を踏むほうが、資金リスクを分散できます。

ポイント カフェ起業のアイデア|経験別に選ぶ出発点

経験とリスクで逆算する起業スタイル

カフェ起業

「カフェ起業=実店舗を開く」という思い込みが、多くの方の挑戦を止めています。経験と準備資金に合わせて出発点を選ぶことで、リスクをコントロールしながら進めることができます。

キッチンカー・移動カフェ

初期費用を抑えたい方の最初の選択肢です。車両費込みで100万〜500万円程度が相場で、実店舗に比べて固定費が格段に低い。イベント出店で需要を試しながら、常連客と売上の実績を積むことができます。バリスタ経験のある方はコーヒーの質で差別化しやすく、比較的取り組みやすい出発点です。

間借りカフェ・シェアカフェ

既存の店舗スペースを曜日や時間帯で借りて運営するスタイルです。家賃リスクがほぼなく、在職中の週末だけ営業することもできます。お客さんの反応を見ながら商品とサービスを磨く期間として、非常に有効な起業準備の場になります。

コーヒー豆販売・ホームロースター

焙煎やブレンドの知識がある方に向いています。オンラインショップとSNSを組み合わせれば、在職中から始めることができます。店舗をまったく持たずに月数万円の売上を作ることも難しくなく、将来的にサブスクリプション販売や焙煎ワークショップへと発展させているケースも出てきています。

経験別の出発点一覧
  • バリスタ経験あり → コーヒー豆販売・キッチンカー・出張バリスタ
  • カフェ勤務経験あり → 間借りカフェ・イベント出店・ホームカフェ体験会
  • カフェ管理職経験あり → 開業コンサルタント・スタッフ研修・カフェ起業スクール
  • コーヒー好き・SNS発信経験あり → カフェ情報メディア・コーヒーブログ運営
  • 食の資格(調理師・製菓衛生師)保有 → フードカフェ・焼き菓子販売との複合型

差別化は「小さな違いの掛け合わせ」で生まれます。「カフェ経験」×「産後ケアの知識」×「子育て中」のように、自分ならではの組み合わせを見つけてください。大きな差別化を最初から狙う必要はありません。

ポイント カフェ起業でありがちな失敗パターン

カフェ好きだからこそ陥りやすい罠

失敗

カフェ起業には、他の業種とは違う失敗パターンがあります。飲食店は3年以内に約60%が閉店するというデータがあります(飲食店ドットコム調査)。この数字に驚く方も多いですが、実際に閉めた方の話を聞くと、同じ原因が繰り返されています。

「好き」が「売れる」と勘違いする

カフェ起業で最も多い失敗です。自分がおいしいと思うコーヒーを出せば売れる、自分が好きな空間を作れば来てくれる、という思い込みです。「好き」と「ビジネスとして成立する」の間には、大きな距離があります。

お客さんが求めているのは、あなたのコーヒーへの愛情ではなく、「来てよかった」という体験です。その体験をお客さんの言葉で定義できているかどうかが、カフェ起業の明暗を分けます。

開業前に予算を使いすぎる

内装に凝る、厨房機器に投資する、立地のよい高家賃物件を契約する。理想のカフェを作ろうとするほど、開業前の固定費が膨らみます。開業してしばらくは売上が安定しないのに、家賃と返済だけが毎月出ていく状況になります。カフェ起業の資金計画で重要なのは「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら余裕を持って返せるか」を先に決めることです。

在職中に「試せること」をしない

「会社を辞めてから本気でやる」という考え方が、カフェ起業では特に危険です。退職後に初めてコーヒーを売ってみて、思ったように売れないとわかっても、後戻りはできません。在職中にできるテスト(マルシェ、間借り、オンライン販売)を一切しないまま資金を全投入するパターンが、最も取り返しのつかない結果につながります。

  • 「好き」ではなく「お客さんが求めること」を起点に商品を作る
  • 開業資金は「余裕を持って返せる額」を上限にする
  • 在職中に必ず一度は「お金をもらって売る」体験をする
  • 食品衛生責任者の取得と収支計画は在職中に完了させる
  • 店舗より先に「最初のお客さん」を作る

ポイント カフェ起業は「箱」ではなく「体験」を作ること

一杯のコーヒーが持つビジネスの可能性

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カフェ起業の本質は、店舗を構えることではなく、「あなたがいるから来たい」と思われる体験を作ることです。物件や内装が揃う前から、その体験の種は今日から育てることができます。

一杯のコーヒーを誰かに喜んでもらった経験は、どんな起業準備よりも強い確信をもたらします。マルシェでも、間借りでも、自宅でも、その体験を先に積んでください。

カフェへの愛は、起業の動機としては十分すぎるほど強いものです。その気持ちを、準備の手順と組み合わせることができれば、夢は現実に近づきます。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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