役職定年を迎えた50代、定年後の起業準備は何から始めればいい?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

商社で長く管理職をしてきましたが、先日役職定年を迎え、給与も役割も大きく変わりました。定年まで残り5年ほどあり、子どもも独立したので、定年後は自分の経験を活かして何かやりたいと考えています。

ただ、役職を外れて気力も落ち気味で、この年齢から起業準備を始めても間に合うのか不安です。今から何を始めればいいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

残り5年あるなら、起業準備は十分に間に合います。むしろ、いまのあなたは「間に合うか」を問うべき時期ではありません。本当の問いは「間に合うか」ではなく、「役職という肩書きを外したあとに、何が自分の手元に残っているか」を確かめることのほうにあります。ここがはっきりすれば、残りの5年は焦る時間ではなく、整える時間に変わります。

日本政策金融公庫の新規開業実態調査では、開業時の中心層は40代前後ですが、50代以上で開業する人も一定の割合を占め続けています。年齢は障害ではなく、長く積み上げた経験そのものが、若い世代には出せない価値になります。

「役職」ではなく「自分の力」を切り分ける

役職定年で気力が落ちる方の多くは、自分の力と役職の力を一緒にしてしまっています。部下が動いてくれたこと、会社の看板で話が通ったことは、役職の力です。それとは別に、自分自身が培った判断力や人脈がある。この両者をいま一度切り分けて見ることが出発点になります。肩書きを外しても残るものこそ、定年後に持ち出せる本当の資産です。

起業18フォーラム会員の勅使河原(てしがわら)さん(仮名・57歳・総合商社の部長から役職定年・子は独立)も、最初は「役職を外れた自分には何も残っていない」と感じていました。けれど勉強会で経験を棚卸ししたところ、長年の海外取引の立ち上げ経験は、これから海外に出ようとする中小企業にとって喉から手が出るほど欲しいものでした。

会社の看板ではなく、勅使河原さん個人の経験そのものに値段がついたのです。中小企業の海外取引立ち上げを顧問として月20万円で3社に提供する形へ広げていき、14ヶ月目の収入は月60万円まで伸びていきました。

残り5年を「4つの段階」で設計する

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』にも書きましたが、起業準備は行き当たりばったりで進めるものではありません。自分を知り、事例を知り、形を作り、小さく試すという段階を順に踏んでいきます。残り5年あるなら、この段階を急ぐ必要はありません。

最初の1年は、肩書きを外した自分の経験の棚卸しに充てる。次の1年で、その経験を欲しがる相手が誰かを見極める。さらに次の期間で、小さく試して反応を確かめる。退職を待たず、いまの人脈の中で「相談に乗れそうな相手」を1社だけ思い浮かべてみてください。

退職前にこの順番を一通り通っておけば、定年を迎えたときには「これから探す人」ではなく「すでに動いている人」として立てます。

  • 会社の看板を外しても残る経験を書き出す
  • その経験を欲しがる相手の顔を具体的に思い浮かべる
  • 退職を待たず、小さく試せる相手を1人見つける

役職定年は、キャリアの終わりの合図ではありません。会社という枠の中での役割が一区切りしただけで、あなた個人が積み上げてきたものは何ひとつ減っていないのです。

今週は「役職を外した自分が、後輩に頼られて答えてきたこと」を5つ書き出してみてください。その5つの中に、定年後にあなただけが提供できる価値の芽が眠っています。

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● 質問 来年、役職定年を迎えます。役職も給料も下がると聞いていて、このまま定年まで会社にいるだけでいいのかと

気力が落ちるのは、力を失ったからではなく、力の置き場所が見えなくなっているだけです。置き場所さえ定まれば、残り5年はもう一度走り出すための助走期間になります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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