記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
57歳の会社員です。先日、役職定年で管理職を外れ、給与も下がりました。あと数年で定年だと思うと、このまま会社にぶら下がっているだけでいいのかと急に焦りはじめています。
定年後に少しでも自分で稼げるようになりたいのですが、何十年も会社の中だけで働いてきたので、自分の経験が社外で売り物になるのか、まるで自信がありません。
こんな私でも商品になるものを持っているのでしょうか?

● 回答
ご安心ください。何十年も会社の中だけで働いてきた人ほど、社外で売り物になる経験を持っています。足りないのは経験ではなく、その経験を「外の誰かの役に立つ形」に翻訳する視点だけです。役職定年で立ち止まった今が、その翻訳を始める一番いいタイミングです。
私はこれまで延べ6万人以上の会社員と向き合ってきました。その中で、あなたと同じ「自分の経験なんて社外では通用しない」という思い込みで足踏みする50代を、本当にたくさん見てきました。共通しているのは、能力が足りないのではなく、自分の当たり前を低く見積もりすぎているという点です。
役職定年は「終わり」ではなく準備の合図
まず、いま起きている変化を数字で見ておきましょう。人事院の令和5年「民間企業の勤務条件制度等調査」によると、役職定年制度を導入している企業の割合は16.7%です。大企業ほど割合は高く、従業員500人以上の企業では27.6%にのぼります。
つまり、ある年齢で役職を外れて給与が下がるのは、あなた個人の評価が落ちたわけではなく、制度として組み込まれた変化です。そのぶん、ここで湧いてくる焦りや喪失感を「自分の力不足」と受け取る必要はありません。むしろ、会社の肩書きが軽くなる今こそ、肩書き抜きで通用する自分の中身を点検する合図だと考えてください。
- 肩書きが軽くなって落ち込む:
役職という看板で自分の価値を測っていると、外れた瞬間に空っぽになった気がする - 残り年数で逆算して諦める:
あと数年しかないと考え、何も始めないまま定年を迎えてしまう - 大きな事業を構想して動けない:
管理職時代の感覚で立派な計画を描き、準備が重すぎて一歩も出せない
この3つは、私が現場で繰り返し見てきた50代後半のつまずき方です。どれも能力の問題ではなく、視点の置き場所がずれているだけなのです。
「才能のない人は一人もいない」という出発点
拙著『会社を辞めずにあと「5万円!」稼ぐ』に、才能のない人は一人もいない、という考え方を書きました。離婚や事業の失敗、引っ込み思案といった、一見マイナスに思える経験すら、同じ悩みを持つ誰かにとっては価値ある切り口になる、という話です。
会社人生で積み上げてきた経験なら、なおさらです。あなたが22年やってきた判断、調整、後輩への教え方。社内では当たり前すぎて誰も褒めてくれなかったことが、外に出ると「お金を払ってでも教わりたい」と言われる知識になっていることが珍しくありません。
同じ本の中で、0.1%×0.1%という考え方も紹介しています。日本の人口を約1億2,300万人と見ると、その0.1%でも約12万人、さらにその0.1%でも約120人です。あなたの経験を必要とする人は、全員でなくていいのです。あなたと同じ業界で同じ壁にぶつかっている、たった一人を見つければ、そこから始められます。
河野さんが「教えられない」から抜け出すまで
起業18フォーラム会員の河野さん(仮名・58歳・電機メーカー勤務)も、あなたとよく似た状態でした。役職定年で部長職を外れ、後進育成という名ばかりのポジションに移って、「自分はもう用済みなのか」と毎晩のように感じていたそうです。
最初に話を聞いたとき、河野さんは「自分には人に売れるものなんて何もない」と繰り返していました。長く生産管理一筋だったので、特別な資格も会社の外で稼いだ経験もありません。最初は手当たり次第に資格講座のパンフレットを集め、簿記やキャリアコンサルタントを取ろうとして、どれも中途半端なまま半年が過ぎていました。これが、自己流で空回りしていた時期です。
転機は、勉強会で過去の仕事を一つずつ棚卸ししたときでした。河野さんが何気なく話した「若手が辞めない工場ラインの組み方」に、同じ製造業の参加者が一斉に食いついたのです。本人が当たり前だと思っていた現場の調整術が、人手不足に悩む中小工場にとっては喉から手が出るほど欲しいノウハウだった。そこで初めて、自分の経験が外で売り物になると実感できたといいます。
そこからの河野さんは早かったです。勉強会で学んだ通り、まず知り合いのつてで中小メーカーの現場リーダー3人に無料で相談に乗りました。手応えを確かめてから、1回90分の現場改善アドバイスを有料に切り替えていきました。起業準備から1年たった今、河野さんは会社に勤めながら月に5万円ほどの相談収入を得ています。定年後はこれを本格的な仕事にする算段が立ったと、表情が明るくなりました。
残り数年でも間に合う、棚卸しの始め方
あと数年しかない、と焦る気持ちはよくわかります。ただ、起業準備は大きな事業計画から始めるものではありません。自分の経験を一つずつ言葉にして、社外の誰に役立つかを確かめる。この小さな作業から始めれば十分です。
- 頼られた仕事を書き出す:
社内で「これは君に聞こう」と何度も頼まれてきた仕事を1つ思い出す - 困っている相手を想像する:
その仕事を、社外のどんな立場の人が欲しがるかを一人だけ具体的に思い描く - 無料で試す:
知り合いのつてでその一人に近い相手に相談へ乗り、反応を確かめる
大切なのは、完璧な準備が整うのを待たないことです。河野さんも最初の一歩は、無料で3人に話を聞いてもらうことでした。20点の出来でいいので、まず外の人に触れてみる。そこで返ってくる反応が、あなたの経験のどこに値段がつくかを教えてくれます。
役職定年は、会社という看板を一度下ろして、自分という中身だけで何ができるかを試せる貴重な時期です。残り数年を「ぶら下がる時間」にするか「翻訳を始める時間」にするかは、今日の一歩で変わります。
まず今夜、会社人生で一番多く人から頼まれてきた仕事を、ノートに一行だけ書き出してみてください。それがあなたの最初の売り物の種です。

自分の経験を低く見積もっているのは、たいてい本人だけです。社外の誰かは、あなたが当たり前にやってきたことを心から欲しがっています。
さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
★【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!
★【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!
