シングルマザーが子育てしながら起業準備を進めるには、何から手をつければいい?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

シングルマザーで、小学校に上がる前の子どもを育てながらパートで働いています。今の収入だけでは将来が不安で、自分のスキルで稼げる柱をもう1本持ちたいと思うのですが、朝から晩まで子育てと仕事で手一杯です。

子どもとの時間は減らしたくないのに、起業準備の時間なんてどこにあるのでしょうか。何から手をつければいいのか、どう動けばいいですか?

起業前質問集

● 回答

時間がない、という感覚は痛いほどわかります。お子さんとの時間も、今の仕事も削れない。その前提のままで動こうとするから、最初の一歩がどこにも見つからないのだと思います。

そこで順番を変えてみてください。時間を新しく「作る」のではなく、いま使っている時間の中からやめてもいいことを先に「削る」のです。起業準備の予定をねじ込む前に、手放せる予定を3つ見つける。これがシングルマザーの起業準備でいちばん効きます。

まず知ってほしい、ひとり親家庭の収入の現実

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の母の86.3%がすでに働いています。それでも母の平均年間就労収入は236万円にとどまり、「パート・アルバイト等」で働く人が38.8%を占めます。

この数字は、あなたが怠けているという話ではありません。むしろ逆です。多くのひとり親は、働く時間をすでに限界まで使ったうえで、それでも収入の天井に当たっているのです。だからこそ、時間をさらに増やす方向ではなく、限られた時間で単価の上がる「自分の商品」を育てる方向に切り替える意味があります。私のこれまでの起業支援の経験でも、ここで発想を変えられた方ほど続いています。

時間を「作る」より、やらないことを先に決める

では、どうやって準備の時間を捻出するのか。拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、やることリストと並べて「やらないことリスト(劣後順位リスト)」を作る方法を紹介しています。優先順位を上から決めるのではなく、捨てるものを下から決めていく考え方です。

たとえば子どもの急な発熱や送り迎えは、何があっても守る予定です。起業準備は、急ぎではないけれど将来に効く予定として残す。そのうえで、急ぎでも大事でもない予定から順に下へ落とし、消していく。こうして空けた場所に、準備の時間を置いていきます。

  • やめてもいいことの例:
    なんとなく開くSNSの巡回、惰性で見ている録画番組
  • 減らせることの例:
    完璧にこなしている家事の一部、毎日でなくてもいい作り置き
  • 守ること:
    子どもと向き合う時間、自分の睡眠と健康

削って空いた30分を、起業準備にあてる。最初はそれで十分です。子どもが寝たあとの30分でも、通勤や送り迎えの移動中でも構いません。今夜のうちに、1週間の時間の使い方を紙に書き出して、やめてもいいことを3つだけ選んでみてください。

在宅・スキマ時間で進められることから始める

準備の中身は、家の中で完結することから選びます。場所を移動する事業や、まとまった営業時間が必要な事業は、今のあなたには向きません。お子さんが小さいうちは、在宅でできて、中断しても再開しやすいものが現実的です。

たとえば、あなたが普段の仕事や暮らしの中で人から頼まれたこと、感謝されたことを書き出してみる。それが商品の種になります。資格やスキルがないと感じていても、これまで会社や家庭で積み上げてきた段取り力や対応力は、誰かにとっての価値になります。

医療事務のパートから、月3万円の柱を育てた安西さん

起業18フォーラムの会員さんに、安西さん(仮名・30代)という方がいます。医療事務のパートをしながら、保育園に通うお子さんを一人で育てていました。最初の頃は、収入を増やしたい一心で、夜中まで物販の情報を集めては手を出し、続かずにやめる。それを自己流で繰り返していたそうです。睡眠を削った分だけ日中に疲れが出て、お子さんに笑顔を向けられない日が増えていました。

転機は、お子さんの保育園で知り合ったママ友からの一言でした。「うちの開業準備中の歯科の、保険の事務まわりを手伝ってもらえない?」という依頼です。安西さんには息をするように片づけられる事務でしたが、開業したばかりの相手にとっては、お金を払ってでも任せたいスキルだったのです。

起業18フォーラムの個別相談で、安西さんはまず時間の棚卸しから始めました。やらないことを先に決め、夜中の情報収集をやめて、空いた時間を「自分が教えられること」の整理にあてたのです。レセプト業務の進め方を小さな個人クリニック向けにまとめ、オンラインで相談に乗る形に変えたところ、起業準備から1年半で月3万円ほどの収入が安定して入るようになりました。

  • 夜中の情報収集をやめ、削った時間を強みの整理にあてた
  • 手慣れた事務仕事の中にあった、自分の商品の種に気づいた
  • 移動の要らない在宅・オンラインの形に絞り込んだ

安西さんがうまくいったのは、新しいスキルをゼロから身につけたからではありません。すでに持っていた力を、削った時間の中で言葉にし直しただけです。月3万円は小さく見えるかもしれませんが、ご本人いわく「自分の力で稼げた最初の3万円で、将来への怖さが半分になった」とのことでした。

焦らなくていい、続けられる速さで進める

収入の柱をもう1本持ちたいという思いの奥には、子どもとの時間を守りながら、将来の不安を少しでも軽くしたいという願いがあるはずです。その願いを叶えるのに、自分を追い込む必要はありません。お子さんが小さい今は、進む速さを落としても構わない時期です。

大事なのは、方向を変えないこと。やめてもいいことを削り、空いた小さな時間で自分の強みを育てていけば、半年後、1年後の景色は確実に変わります。

起業18フォーラムでは、こうした時間の棚卸しから商品の種の見つけ方まで、一人ひとりの暮らしに合わせて一緒に設計しています。

今日できることは、寝る前に1週間の予定を紙に書き出して、やめてもいいことに線を引くだけで十分です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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