費用負担のある出版依頼や取材は効果があるか? 商業/自費/中間/ペイドパブの4類型で判断する

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

アメブロのメッセージから、聞いたことのない出版社の方から電子書籍の出版依頼が届きました。費用負担があるようなのですが、本当に効果があるものでしょうか?

出版社は自費出版ではないと言っているのですが、判断する基準を教えていただけますか?

起業前質問集

● 回答

起業準備中の方が費用負担型の出版・取材オファーを受けたときは、まず「商業/自費/中間/ペイドパブ」の4類型に分けて、自分が買おうとしているのは何かを言語化するのが安全です。「自費出版ではない」という出版社側の説明をそのまま信じても、後で広告効果がほぼないと気づくケースが多いからです。

日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)の用語定義では、ペイドパブリシティ(有料パブリシティ)は「メディア社にお金を払って広告枠を確保し、記事・番組の体裁で情報を発信するもの」と整理されています。記事や番組の体裁を取りながら商品やサービスを紹介する手法で、自然に情報を届けられる半面、出稿代金が高額になりやすい点がデメリットです。

出版4類型の見分け方

出版のオファーが来たら、まず以下の4類型のどれに該当するかを確かめてください。「自費出版ではない」と言われても、中間出版・ペイドパブ型に該当することは多々あります。

類型 費用負担 ブランディング効果
商業出版 著者ゼロ・出版社が全リスク 高い(書店流通・紙の本)
自費出版 著者が全額(数十万〜数百万円) 限定的(記念出版・名刺代わり)
中間出版(共同出版) 著者と出版社が分担 中程度(書店流通あり・初版部数に影響)
ペイドパブ型 著者が広告料を支払う 薄い(二次利用での名刺効果のみ)

「自費出版ではない」という言葉は、中間出版型でも使えますし、ペイドパブ型でも形式上は使えます。大切なのは類型ラベルではなく「総額いくら払って、書店流通は何冊で、自分の見込み客に届く確率はどれくらいか」を出版社側に書面で出してもらうことです。

電子書籍の出版依頼で起きやすいこと

電子書籍の場合、紙の流通が発生しないので、書店配本や見栄えのある書影による「物理的なブランディング効果」がほとんど期待できません。「私は出版したよ」と二次利用でアピールするための名刺代わりにはなりますが、見込み客が増える効果は限定的です。

また、ブログやSNSのメディアを持っている方には、いろいろな雑誌・メディアから似たような売り込みが入りやすくなります。表紙にいわゆるBクラス芸能人を使った雑誌で、広告で紙面を埋めるペイドパブはたくさんありますが、広告効果はほぼなく「私は雑誌に取材されましたよ」という二次利用のブランディングで使えるかどうかが争点です。

その雑誌や表紙の有名人が、ご自身の見込み客層に知られていない場合、効果は見込めません。費用対効果を出すための判断材料として、過去に同じ枠で出した方の反応・流入・問い合わせ件数を必ず聞くようにしてください。

起業準備中の方が踏みたい判断基準

拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』にも書いたのですが、お客様が買っているのは「商品」ではなく「自分の課題が解決すること」です。マーケティングの古典『ドリルを売るな、穴を売れ』の考え方で、出版オファーも同じように「これは穴(=見込み客の獲得や信用構築)を本当に空けてくれるドリルか」と問い直してみてください。

判断基準は次の3つで十分です。

  • 総額と回収シナリオが明示されているか:
    費用と期待効果の数字が書面で出てくるか
  • 過去事例の固有名で実績が示せるか:
    匿名で「効果がありました」ではなく社名・人名で出せるか
  • 自分の見込み客が読む媒体かどうか:
    媒体の読者層・配本ルートが見込み客と重なるか

この3つのうち1つでもグレーなら、その出版・取材オファーは見送って構いません。同じ金額を自社ブログ・自社SNS・自分のメルマガに投じたほうが、半年後の見込み客リストが厚くなることがほとんどです。

会員Tさんの判断事例

起業18フォーラムの会員Tさん(仮名・48歳・元IT系メーカーで法人営業22年・埼玉県在住)は、起業準備の2年目にちょうど同じ営業を受けています。当時のTさんは、自社ブログを月3000PVほどに育てた段階で、聞き覚えのない電子書籍出版社から「あなたのブログが目に止まり、出版のお誘いです」と費用負担型の依頼が届きました。

Tさんは自己流で乗りそうになりましたが、起業18フォーラムの勉強会で出版4類型を学び、提示された30万円弱の費用を「同じ額を自社サイトの記事制作・LP制作に投じる」方向に振り替えました。

12ヶ月後、自社サイトからの問い合わせが月5件まで増え、独立後10ヶ月目には月収32万8千円で安定し、24ヶ月目には月45万円超で推移しています。「あの出版社に払っていたら、書影をSNSに貼って終わっていたと思う」というのがTさんの振り返りです。

自己流のまま乗ってしまうと、出版した本を読んでもらえないまま、書影をSNSに貼って満足するパターンに陥りがちです。出版・取材の話が来たら、必ず信頼できる第三者(先輩起業家・所属コミュニティの先輩)に判断材料を見てもらってから返事を出すようにしてください。

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起業18フォーラムでは、有料の出版・取材オファーを受けた段階で勉強会で類型分けと判断を行う会員さんが少なくありません。同じ予算を投じるなら、自社の発信媒体を厚くする方向から検討してみてください。本日のご回答が、目の前のオファーに対する判断材料として役立てば幸いです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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