記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「自分が温めてきた試作品を、一度Makuakeで世に問うてみたい」。勤め先で商品企画をしている方から、そんな相談を受けることがあります。気持ちはよく分かります。ただ、その次に必ず聞かれるのが「でも、自分の試作品なんかで、あの審査を通るんでしょうか」という不安です。
Makuake(マクアケ・株式会社マクアケが運営する応援購入サービス)には、掲載の前に運営側の審査があります。この「目利き」があるからこそ、支援する側は安心して先にお金を払える。裏を返すと、出す側にとっては最初の関門になります。
この記事では、勤め先で働きながらMakuakeへの挑戦を考えている方に向けて、いきなり審査に申し込む前にやっておく順番を整理します。審査を通しやすいプロジェクトの組み立て方と、終わったあとに支援者を定番のお客さんへ変えていく設計まで、ひと続きで見ていきます。
派手なアイデアはいりません。Makuakeは「困りごと」を先払いで確かめる場です

Makuakeに挑む、と聞くと、世界をひっくり返すような大発明を用意しなければいけない気がします。けれど、長く支援を集めているプロジェクトを見ていると、出発点は意外なほど身近な不満です。「市販品のここが惜しい」「自分が欲しかったのに、どこにも売っていなかった」。その小さな引っかかりが種になっています。
これまで起業を志す人を長く見てきて、私が確信していることがあります。商売の種になるのは、世界を変えるような着想ではなく、むしろ生活のなかでこぼれ落ちた小さな不便のほうだ、ということです。Makuakeはまさに、その不便を形にした試作品に、世の中の人が先にお金を払ってくれるかを確かめられる場所です。
なぜ先払いという形が成り立つのか。そこに目利き審査が効いています。運営が一定の基準でプロジェクトを確認しているからこそ、支援する人は「まだ手元にない商品」にお金を出せます。
Makuakeは2013年のサービス開始以来、累計の応援購入総額が1,100億円以上、累計のプロジェクト数は4万7,000件以上にのぼります(株式会社マクアケ公式・2025年時点)。これだけの先払いが動いているのは、審査という関所が信頼の土台になっているからです。
だからこそ、最初に考えるべきは仕掛けの大きさではなく、誰のどんな困りごとを解くのかという一点です。その輪郭がはっきりしている試作品ほど、審査でも支援者の前でも伝わりやすくなります。
- 誰のための商品かが曖昧で、よさを言葉で説明しきれていない
- 試作品の完成度ばかり上げて、買う人の反応を一度も確かめていない
- プロジェクトが終わったあとに、商品をどう続けるかを決めていない
3つに共通するのは、つくる側の都合が先に立ち、買う人の顔が後回しになっている点です。順番を入れ替えるだけで、同じ試作品でも見え方は大きく変わります。
メーカー型の量産と「達成したら成立」の方式を、先に頭へ入れておく

Makuakeで多いのは、できあがった在庫を売りさばく形ではなく、試作の段階で支援を募り、集まった分だけ量産に進むメーカー型の進め方です。この順番だと、売れるかどうか分からない在庫を先に抱えずにすみます。勤めながら挑む人にとって、この身軽さは大きな利点になります。
もう一つ、必ず先に知っておきたいのが目標金額の方式です。Makuakeには、目標に届いて初めて成立する「All or Nothing」と、支援が集まれば達成に関わらず成立する「All in」があります。会社員が初めて試作品を世に問うなら、まずはAll or Nothingで考えると、判断がはっきりします。
| 確かめること | 仕組みのポイント | 勤めながらの意味 |
|---|---|---|
| 掲載できるか | 運営の目利き審査を通る必要がある | 誰の困りごとかを言葉にする準備が要る |
| つくる量 | 支援が集まった分だけ量産に進める | 売れ残り在庫を先に抱えずにすむ |
| 成立の条件 | All or Nothingは目標達成で成立 | 未達なら不成立で手数料も発生しない |
費用の面も整理しておきます。Makuakeの手数料は応援購入総額の20%(税抜・決済手数料込み)で、成功報酬制のため、目標に届かず不成立になった場合は手数料も発生しません(Makuake公式料金ページ・2025年時点)。掲載や相談そのものは無料です。つまり、All or Nothingで挑んで届かなかったとしても、金銭的に大きく傷つく場面は少ない設計になっています。
大切なのは、どちらの方式が得かではありません。All or Nothingは「この値段で、この数だけ欲しい人が本当にいるか」を、はっきりした合否で教えてくれる仕組みだということです。机の上の自信ではなく、支援者の財布が答えを出してくれます。
無料の段から有料の段へ。100段の階段で段差をならす
ここで一つ、組み立て方の話をさせてください。拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、やることを100の階段に分けて、低い段から順に上がっていく考え方を紹介しています。一段が高すぎると人は足を止めるので、段差をなるべく小さくならしておく、という発想です。
Makuakeに当てはめると、いきなり「先にお金を払ってください」という有料の段に人を立たせるのは、段差が大きすぎます。その手前に、無料で受け取れる段をいくつか置いておく。試作の様子を発信で見せる、開発の裏側を語る、サンプルの感想をもらう。
無料の段で「この人なら任せたい」と思ってもらえてはじめて、先払いという有料の段に自然と足がかかります。審査の前から、この段差を少しずつ組んでおくことが効いてきます。
プロジェクトを単発で終わらせず、支援者を定番のお客さんに残す

では、無事に目標を達成できたとして、それで終わりかというと、ここからが本番です。私が会員さんによくお伝えしているのは、Makuakeを一度きりの花火にしないことです。
応援購入で集まった人たちは、ただの買い手ではありません。商品ができる前から、あなたの試作品を信じて先にお金を払ってくれた、いちばん濃い応援者たちです。この人たちを、プロジェクトが終わった瞬間に手放してしまうのは、もったいない話です。応援してくれた人へ完成後のお礼を丁寧に届け、次の改良や定番販売の相談を持ちかける。それだけで、単発の支援が定番購入のファンへと変わっていきます。
この発想が効いてくる背景には、買いものの場が広がっている事実もあります。経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の物販系BtoC-EC市場規模は15兆2,194億円で、前年から3.7%伸びています。ネットで買うことが当たり前になった分、一度つながった支援者と、自分のショップやSNSで関係を続けやすくなっています。
大きな打ち上げ花火を毎回上げ直すのは、火薬も体力も尽きていきます。それよりも、消えずに灯り続ける常夜灯のような売上を一灯だけ確保しておく。その一灯があると、次の挑戦に踏み出すときの足元が、ずいぶん明るくなります。
- 連絡先を残す:
完成報告のついでに自分のSNSやショップへ案内し関係を切らさない - 声を集める:
届いた支援者に使い心地を聞き次の改良の材料として記録する - 定番をつくる:
プロジェクト限定で終わらせず通常販売できる一品に育てる
勤めを続けながらなら、給料という後ろ盾があるぶん、この定番化を急がずに進められます。一度の達成額に気を取られて次の大型企画へ飛びつくのではなく、目の前の支援者一人ひとりとの関係をていねいに太くしていく。生活費を稼ぐ切迫感に追われずに、関係づくりへ時間を回せること。これが、勤めながら始める人だけに許された立ち位置です。
一発の達成額に満足しかけ、リピーターの少なさに気づいた大門さん

起業18フォーラムの会員さんに、大門さん(仮名・40代)がいます。雑貨メーカーで企画の仕事をしている方で、社内では通らなかった自分のアイデアを、いつか自分の名前で世に出したいと考えていました。
最初の挑戦は、独学で組み立てたMakuakeのプロジェクトでした。試作品の写真を整え、説明文を練り上げて申し込み、無事に審査も通って公開にこぎつけます。ふたを開けてみると、目標金額をしっかり上回る支援が集まり、大門さんは大きな手応えをつかみました。
ところが、プロジェクトが終わったあとが、なんとなく寂しかったのです。達成額は立派でも、支援してくれた人たちとのつながりは、終了とともにぷつりと切れていました。次に何か出すときは、また一から知らない人を集め直さなければいけない。一発勝負を毎回繰り返している感覚に、だんだん疲れていきました。
ある夜、大門さんは過去の支援者名簿をぼんやり眺めていました。ずらりと並んだ名前を一つずつ目で追ううちに、ふと指が止まります。「この人たちと、もう一年近く一言も交わしていない」。誰に言われたわけでもなく、その事実が静かに胸に刺さりました。自分が次に手を伸ばすべきは見知らぬ次の市場ではなく、すでにお金を払ってまで応援してくれた、この名前の一人ひとりではないか。大門さんはそう考え直したのです。
そこで大門さんは、過去の支援者へ完成後のお礼の便りを送り、感想を聞くところからやり直しました。前回までは達成のたびに支援者がほぼ入れ替わっていたのが、関係を続けるようにしてからは、次のプロジェクトを最初に支えてくれる顔なじみが少しずつ増えていきました。限定品で終わらせていた雑貨を、通常でも買える定番に育て、感想をくれた人へ先に案内するようにもなりました。
今の大門さんは、Makuakeを新作のお披露目の場として使いながら、定番商品を顔なじみのお客さんに買い続けてもらう形を土台にしています。勤めはまだ辞めていません。あなたも、もし達成額の大きさだけを追いかけているなら、終わったプロジェクトの支援者へ、お礼の一言を送るところから始めてみてください。
よくある質問

Q.目利き審査では、どんなところを見られるのですか?
掲載にあたって運営の審査がある、というのが公式に示されている点です。細かな合否の基準は公開されていないため、ここで断定はできません。確実なのは、誰のどんな困りごとを解く商品なのかが、ページを読んだ人にきちんと伝わる状態にしておくことです。あいまいなまま申し込むより、まず一文で言い切れるところまで磨いておくと安心です。
Q.勤め先に知られずに挑戦することはできますか?
仕組みのうえでは、勤めを続けながらでも挑戦できます。ただし、勤め先の就業規則で事業が制限されていないかは、先に確認しておくほうが安心です。あわせて、プロジェクトの実行者名やプロフィールをどう出すかも、申し込み前に決めておくとよいでしょう。判断に迷う部分は、自分で決めつけず、勤め先の規定や窓口で確かめてください。
Q.目標金額に届かなかったら、お金や手数料はどうなりますか?
All or Nothingで挑んで目標に届かなかった場合は、プロジェクト自体が不成立となり、支援者への請求も実行者への入金も発生しません。Makuakeの手数料は成功報酬制で、不成立なら手数料もかかりません(Makuake公式・2025年時点)。掲載や相談自体も無料なので、挑んで届かなかったときの金銭的な痛手は小さい設計になっています。
今日の一歩は、テスト販売の告知を1つ出してみること

商品が完全に固まっていなくても、テスト販売の告知を1つだけ出してみてください。「こんな試作品を考えています」と手元のSNSやブログで投げてみる。反応がゼロでも、それはそれで立派なデータです。まずは、つくっている試作品の写真と、解こうとしている困りごとを一文添えて、テスト販売を考えている旨の告知を1本出してみましょう。
「知らない人が、自分の試作品に先払いしてくれるだろうか」。この問いに、机の前で何時間うなっても答えは出ません。答えを持っているのは自分ではなく、告知を見た誰かだからです。一人でも「欲しい」と手を挙げてくれた瞬間、漠然とした不安は、検証すべき次の課題へと姿を変えます。審査を通る言葉も、その反応を見てから整えるほうが、ずっと的を射たものになります。
完成度を待つ気持ちと、まず出してみる気持ちのバランスについては、こちらの記事でも紹介しています。

いつか、会社の名前ではなくあなた自身の名前を信じて、見知らぬ誰かが「応援したい」と先にお金を預けてくれる。そんな日のことを、今日は少しだけ想像してみてください。その光景へ近づく一歩は、立派な達成画面ではなく、手元で出してみる小さな告知から始まります。
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