記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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Makuake(マクアケ・株式会社マクアケが運営する応援購入サービス)は、掲載前に運営側の目利き審査があります。この一段があるから、支援する側は手元にない商品にも先払いができます。出す側にとっては最初の関門です。
この記事では、勤めながらMakuakeへの挑戦を考えている方に向けて、申し込みより手前でやっておく順番を整理します。審査を通しやすいプロジェクトの組み立て方と、終わったあとに支援者を定番のお客さんに残していく設計まで、ひと続きで見ていきます。
Makuakeは「困りごと」を先払いで確かめる場

長く支援を集めているプロジェクトを並べて見ると、出発点は意外なほど身近な不満です。「市販品のここが惜しい」「自分が欲しかったのに、どこにも売っていない」。その小さな引っかかりが種になっています。
これまで起業相談を受けてきて確信していることがあります。商売の種は壮大な着想ではなく、生活の中でこぼれ落ちた小さな不便のほうです。Makuakeはその不便を形にした試作品に、世の中の人が先にお金を払ってくれるかを確かめる場所です。
なぜ先払いが成り立つのか。そこに目利き審査が効いています。運営が一定の基準で確認しているから、支援する人は手元にない商品にお金を出せます。
Makuakeは2013年8月のサービス開始以来、累計応援購入金額が1,100億円を超え、累計プロジェクト数は4万6,000件以上、総応援購入回数は1,000万回を突破しています(株式会社マクアケ公式発表・2025年8月・サービス開始12周年時点)。これだけの先払いが動くのは、審査が信頼の土台になっているからです。
だからこそ、最初に考えるべきは仕掛けの大きさではなく、誰のどんな困りごとを解くのかという一点です。その輪郭がはっきりしている試作品ほど、審査でも支援者の前でも伝わりやすくなります。
- 誰のための商品かが曖昧で、よさを一文で言い切れていない
- 試作品の完成度ばかり上げて、買う人の反応を一度も確かめていない
- 終わったあとに、商品をどう続けるかを決めていない
共通するのは、つくる側の都合が先に立ち、買う人の顔が後回しになっている点です。順番を入れ替えるだけで、同じ試作品でも見え方が変わります。
メーカー型の量産と「達成したら成立」の方式を、先に頭に入れる

Makuakeで多いのは、できあがった在庫を売りさばく形ではなく、試作の段階で支援を募り、集まった分だけ量産に進むメーカー型の進め方です。売れるかどうか分からない在庫を先に抱えずにすむため、勤めながらの方には負担の少ない進め方になります。
もう一つ、必ず先に知っておきたいのが目標金額の方式です。Makuakeには、目標に届いて初めて成立する「All or Nothing 型」と、目標金額の達成有無にかかわらずサポーターの応援購入申込時点で成立する「All in 型」があります(Makuake公式ヘルプページ)。会社員が初めて試作品を世に問うなら、まずはAll or Nothing 型で考えるのが現実的です。
| 確かめること | 仕組みのポイント | 勤めながらの意味 |
|---|---|---|
| 掲載できるか | 運営の目利き審査を通る必要がある | 誰の困りごとかを言葉にする準備が要る |
| つくる量 | 支援が集まった分だけ量産に進める | 売れ残り在庫を先に抱えずにすむ |
| 成立の条件 | All or Nothing 型は目標達成で成立 | 未達なら不成立で手数料も発生しない |
費用面も整理します。Makuakeの手数料は応援購入総額に対して20%(税抜・決済手数料込み)で、成功報酬制のため目標金額が集まらなかった場合は手数料も発生しません(Makuake公式・料金ページ)。プロジェクトの相談や掲載自体は無料です。All or Nothing 型で挑んで届かなくても、金銭的に大きく傷つく場面は少ない設計になっています。
どちらが得かではなく、All or Nothing 型は「この値段で、この数だけ欲しい人が本当にいるか」を、はっきりした合否で教えてくれる仕組みだという点が大事です。
無料の段から有料の段へ、小さく刻んでおく
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、やることを100の階段に分けて、低い段から順に上がる考え方を紹介しています。一段が高すぎると人は足を止めるので、低い段を先に置く、という発想です。
Makuakeに当てはめると、いきなり「先にお金を払ってください」という有料の段に人を立たせるのは無理があります。その手前に、無料で受け取れる段をいくつか置きます。試作の様子を発信で見せる、開発の裏側を語る、サンプルの感想をもらう。無料の段で「この人なら任せたい」と思ってもらえてはじめて、先払いという有料の段に足がかかります。審査の前から、この刻みを少しずつ組んでおくと効いてきます。
プロジェクトを単発で終わらせず、支援者を定番のお客さんに残す

無事に目標を達成できたとしても、本番はここからです。応援購入で集まった人たちは、ただの買い手ではなく、商品ができる前から試作品を信じて先払いしてくれた濃い応援者です。プロジェクトが終わった瞬間に手放してしまうのはもったいない話です。
完成後のお礼を丁寧に届け、次の改良や定番販売の相談を持ちかける。それだけで、単発の支援が定番購入のファンに変わっていきます。
この発想が効いてくる背景には、買いものの場が広がっている事実もあります。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)によると、2024年の物販系分野のBtoC-EC市場規模は15兆2,194億円で、前年比3.70%の増加、EC化率は9.78%となっています。ネットで買うことが当たり前になった分、一度つながった支援者と、自分のショップやSNSで関係を続けやすくなっています。
毎回ゼロからの新規集客で売上をつくり直すよりも、続けて買ってくれる支援者を一握りでも持っておくほうが、次の挑戦の負担はずっと軽くなります。
- 連絡先を残す:
完成報告のついでに自分のSNSやショップへ案内し、関係を切らさない - 声を集める:
届いた支援者に使い心地を聞き、次の改良の材料として記録する - 定番をつくる:
プロジェクト限定で終わらせず、通常販売できる一品に育てる
勤めを続けている方は、毎月の給料という土台があるぶん、定番化を急がずに進められます。一度の達成額に気を取られて次の大型企画へ飛びつくのではなく、目の前の支援者一人ひとりとの関係を太くしていくことに時間を回せます。これが、勤めながら始める人ならではの進め方です。
一発の達成額に満足しかけ、リピーターの少なさに気づいた大門さん

起業18フォーラムの会員さんに、大門さん(仮名・40代)がいます。雑貨メーカーで企画の仕事をしている方で、社内では通らなかった自分のアイデアを、いつか自分の名前で世に出したいと考えていました。
最初の挑戦は、独学で組み立てたMakuakeのプロジェクトでした。試作品の写真を整え、説明文を練り上げて申し込み、無事に審査を通って公開しました。結果は目標金額をしっかり上回る支援が集まり、達成額の数字には大きな手応えがありました。
ただ、終わったあとに気になることが残りました。達成額は立派でも、支援してくれた人たちとのつながりは終了と同時に途切れていて、次に何か出すときはまた一から知らない人を集め直さなければいけません。毎回ゼロからの一発勝負を繰り返している感覚に、だんだん疲れていきました。
そこで大門さんは過去の支援者名簿を見直し、ほぼ全員と一年近く連絡を取っていないことに気づきました。次に手を伸ばすべきは見知らぬ市場ではなく、すでに先払いしてくれたこの名前の一人ひとりだと考え直し、過去の支援者へ完成後のお礼の便りを送り、使い心地の感想を聞くところからやり直しました。
前回までは達成のたびに支援者がほぼ入れ替わっていたのが、関係を続けるようにしてからは、次のプロジェクトを最初に支えてくれる顔なじみが少しずつ増えていきました。限定品で終わらせていた雑貨を通常でも買える定番に育て、感想をくれた人へ先に案内するようにもなりました。
今の大門さんは、Makuakeを新作のお披露目の場として使いながら、定番商品を顔なじみのお客さんに買い続けてもらう形を土台にしています。勤めはまだ辞めていません。あなたも、もし達成額の大きさだけを追いかけているなら、終わったプロジェクトの支援者へ、お礼の一言を送るところから始めてみてください。
よくある質問

Q.目利き審査では、どんなところを見られるのですか?
Makuake公式の料金・手数料ページによれば、審査は薬機法や景表法等の法的観点、およびトラブル予防の観点で行われるとされています。細かな合否の基準までは公開されていないため、ここで断定はできませんが、確実に言えるのは、誰のどんな困りごとを解く商品なのかが、ページを読んだ人にきちんと伝わる状態にしておくことです。あいまいなまま申し込むより、まず一文で言い切れるところまで磨いておくと安心です。
Q.勤め先に知られずに挑戦することはできますか?
仕組みのうえでは、勤めを続けながらでも挑戦できます。ただし、勤め先の就業規則で事業が制限されていないかは、先に確認しておくほうが安心です。あわせて、プロジェクトの実行者名やプロフィールをどう出すかも、申し込み前に決めておくとよいでしょう。判断に迷う部分は、自分で決めつけず、勤め先の規定や窓口で確かめてください。
Q.目標金額に届かなかったら、お金や手数料はどうなりますか?
All or Nothing 型で挑んで目標に届かなかった場合は、プロジェクト不成立(会員間契約の不成立)となり、支援者へお支払いいただいた応援購入金額は全額返金されます(Makuake公式ヘルプページ)。Makuakeの手数料は成功報酬制で、不成立なら手数料もかかりません(Makuake公式・料金ページ)。プロジェクトの相談や掲載自体も無料なので、挑んで届かなかったときの金銭的な痛手は小さい設計になっています。
今日の一歩は、テスト販売の告知を1つ出してみること

商品が完全に固まっていなくても、テスト販売の告知を1つだけ出してみてください。「こんな試作品を考えています」と手元のSNSやブログで投げてみる。反応がゼロでも、それはそれで一つの結果です。
「知らない人が、自分の試作品に先払いしてくれるだろうか」。この問いの答えを持っているのは自分ではなく、告知を見た誰かです。一人でも「欲しい」と手を挙げてくれた瞬間、漠然とした不安は次に確かめる課題に変わります。審査を通す言葉も、その反応を見てから整えたほうが、的を射たものになります。
完成度を待つ気持ちと、まず出してみる気持ちのバランスについては、こちらの記事でも紹介しています。

今日できることは、つくっている試作品の写真と、解こうとしている困りごとを一文添えて、テスト販売の告知を1本出してみるだけで十分です。
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