記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
来年、上の子が高校受験を迎えます。塾の送り迎えや面談で平日も週末も予定が埋まりがちで、正直、自分の起業準備にまとまった時間を取れる気がしません。
前から温めてきた準備を始めたい気持ちはあるのですが、教育費が一番かかるこの時期に自分のことにお金や時間を回すのは、家族に対して身勝手な気もします。
子どもの受験が落ち着くまで、起業準備は待ったほうがいいのでしょうか?

● 回答
ローンもあって、子どもの学費もこれからかさむ。だからこそ動けない。その重さを軽んじるつもりはありません。お金も時間も子どもに集中させたいこの時期に、自分の準備を進めることへ後ろめたさを感じるのは、むしろ家族を大事にしている証拠だと思います。
そのうえで申し上げると、「落ち着くまで待つか、いま始めるか」の二択で考えると、たいてい判断を先延ばしにして終わります。受験が落ち着く頃には次の進学費用や下の子の番が見えてきて、「落ち着いたとき」は案外やって来ないからです。おすすめしたいのは、待つでも全力で走るでもなく、先に期間と撤退ラインだけを仮決めして、細切れの時間でも積み上がる準備から始めるやり方です。
「落ち着いたら」が来にくい理由
受験期に重なる40代は、起業準備を始める年代として実はめずらしくありません。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業時の平均年齢は43.9歳で、年代別では40代が36.9%と最も多くなっています。つまり、子育てや教育費の負担と起業準備が重なる人は、あなただけではないということです。
そのうえで現実を直視すると、教育費の山はひとつではありません。文部科学省「子供の学習費調査」(令和5年度)では、公立中学校に通う子ども1人あたりの学習費総額は年間で約54万2千円でした。これが高校、大学と続いていきます。受験が「落ち着いた」と思った頃には、次の出費の山が見えてくる。だからこそ、出費の谷間を待つのではなく、いまの制約のなかで動ける形を先に決めるほうが現実的なのです。
「予算・期間・出口」を先に仮決めする
では、走り出すのが怖いときはどうするか。拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、始める前に「予算・期間・出口」の3つを仮決めしておくことを紹介しています。なかでも受験期の方にお伝えしたいのは、「いつまで」「どこまで」という期間と出口を、走り出す前に先に区切っておくという点です。
出口を先に決めておくと、「ずるずる家計を圧迫し続けるのでは」という不安に歯止めがかかります。そのぶん、後ろめたさが減って手を動かしやすくなります。たとえば次のように仮決めします。
- 期間:
受験が終わる来年3月までを「下準備の期間」と区切る - 出口(撤退ライン):
持ち出しが月5千円を超えたら、その月は手を止めて見直す - かける時間:
平日は子どもが寝たあとの30分まで、と上限を決める
金額や期間は家庭ごとに変えてかまいません。大事なのは、始める前に「ここまで」を自分で線引きしておくことです。撤退ラインは毎年見直すものと考えれば、いったん仮で置いておけば十分です。
細切れ時間でも「積み上がる準備」を選ぶ
受験期の時間は、まとめて何時間も取れません。送り迎えの待ち時間や、寝かしつけのあとの30分が現実です。この細切れ時間と相性が悪いのが、その場で消えてしまう準備です。逆に、やった分がストックとして残っていく準備なら、短い時間を積んでいけます。
具体的には、毎回ゼロから集客する単発の作業よりも、書けば資産として残る発信や、一度作れば使い回せる教材・テンプレートづくりのほうが、受験期には向いています。15分書いた記事も、半年後には30本のストックになっているからです。
- イベントや対面販売など、その都度ゼロから集める作業に偏る
- 連絡が来たらすぐ対応が必要な、時間に縛られる請負仕事から始める
- 準備の成果が手元に何も残らない、流れて消える作業を続ける
起業18フォーラムにいた大鳥さん(仮名・40代前半・女性・メーカーの品質管理職・中学生と小学生の母)は、上の子の受験が近づくなか、独学で週末にハンドメイドの対面マルシェへの出店を試していました。ところが土日が受験のサポートで埋まり、出店のたびに在庫や搬入の準備で消耗して、半年たっても手元には何も積み上がらない状態でした。
きっかけは、起業18フォーラムの個別相談で「いつまで・どこまで」の出口の期限を一緒に仮決めしたことです。受験が終わる3月までを下準備の期間と区切り、家族との予定を見ながら「平日の夜30分だけ」を準備に充てる枠として確保しました。そのうえで、毎回消える対面販売をいったん止め、作り方のコツを記事と型紙テンプレートにまとめて少しずつ公開する、積み上がる準備に切り替えたそうです。
細切れの30分でも記事と型紙は確実に残っていき、12ヶ月目には公開した型紙が60点を超えました。検索から問い合わせが入るようになり、いまでは月に8千円ほどのテンプレート販売が会社員のお給料に上乗せされています。「土日をまるごと空けなくても進められると分かって、受験のサポートに専念できた」と話してくれました。
家族と「時間帯」をすり合わせてから始める
最後に、走り出す前にやっておきたいことがひとつあります。準備に充てる時間帯を、自分一人で決めず、家族と先にすり合わせておくことです。受験期はあなたの時間だけでなく、家族全体の予定が子どものリズムで動きます。「平日の夜のこの30分は準備に使うね」と一言伝えておくだけで、後ろめたさはぐっと減ります。
- 受験が終わる時期までを下準備の期間と区切る
- 持ち出しの上限と、止めて見直す撤退ラインを置く
- 細切れでも積み上がる、ストック型の準備を選ぶ
受験期だからこそ、まとまった時間を前提にしないやり方を選べば、家族のサポートと準備は両立できます。待つことが安全とは限りません。期間と出口を先に区切っておけば、いつでも引き返せる状態のまま、無理のない範囲で前に進めます。

今日できることは、家族と来週の予定を見ながら、準備に充てられる時間帯を一つ決めてすり合わせるだけで十分です。
よくある質問

Q.受験期に起業準備を始めると、子どもの教育費を圧迫しませんか?
圧迫が不安なら、月々の持ち出し上限を先に決めておくのが有効です。「この額を超えたら手を止める」と線を引いておけば、家計を崩さない範囲で続けられます。元手のかからない発信やテンプレートづくりから始めれば、教育費とぶつかりにくくなります。
- 持ち出しの上限と撤退ラインを先に決めれば歯止めになる
- 初期費用をかけないストック型の準備から始める
Q.受験が終わってから一気に始めるほうが効率的ではないですか?
気持ちはわかりますが、出費の山はひとつではありません。受験が終わっても進学費用や下のお子さんの受験が控えていることが多く、「完全に落ち着く時期」は来にくいのが実情です。細切れでも少しずつ手を動かしておけば、勘とストックが残り、本格的に動ける時期が来たとき立ち上がりが早くなります。
- 受験後は進学費用や下の子の番が控え、谷間が来にくい
- 準備の勘やストックはゼロからだと立ち上げに時間がかかる
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