記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
50代前半、地方銀行の支店長代理です。週末に同期と話すたびに「辞めるならいまだ」と言われ、独立を迷っています。ただ、金融保険業界で長く働いてきた人ほど独立に向かないという話も耳にします。
経験は本当に独立で活かせるのでしょうか?

● 回答
金融保険の業界で長く働いた人ほど、独立には向かないと思っていませんか。実際には逆で、地方銀行で支店長代理まで務めた方の業務知識は、独立後の活かし方を間違えなければ、最初の半年で月数十万円規模の継続契約につながりやすい資産です。
起業18フォーラムでは、地方銀行・信用金庫・損保・生保の現場経験者からの相談が毎月のように届きます。「金融経験は独立に向かない」と言われる多くは、本人がBtoCの個人投資家向けFP事業に直接ジャンプしようとするからで、業界の中で培った業務知識を必要としている相手は、実はもっと近くにいます。
「金融経験は独立に向かない」が誤解になりやすい理由
銀行員さんが独立を考えるとき、多くの方が「FP資格を取ってBtoC向けに個人相談を始める」というルートを思い浮かべます。ところが、このルートは競合が多く、新規参入で月10万円に届くのに2年以上かかる業界です。さらに「銀行を辞めた人」という肩書きは、個人向け市場では信頼の決定打になりません。
一方で、支店長代理として中小企業の融資稟議・資金繰り相談・補助金書類のチェックを長年やってきた経験は、まさに地方の中小企業経営者が「相談料を払ってでも欲しい」と思っている資産です。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査でも、開業者の97.6%に勤務経験があり、81.1%に現在の事業に関連する仕事の経験があります。銀行員さんの業務知識は、その伴走者の役割と非常に相性が良いのです。
同期ではなく、業界の外の1人に話してみる
起業18フォーラム会員の井ノ口さん(仮名・52歳・地方銀行支店長代理・既婚・夫婦のみ・地方都市在住)も、同じ悩みで相談に来られました。最初の半年は同期会で話すたびに「辞めるべきか」「残るべきか」の議論で終わっていました。
転機は、大学同窓会で再会した中堅メーカー経営者から「月1回でいいから資金繰りを一緒に見てほしい」と頼まれたことでした。同期に話していたあいだは選択肢の比較で時間が過ぎたのに、業界の外の1人に話したら、自分の経験は具体的な依頼として返ってきたのです。井ノ口さんは現在、銀行に在籍しながら週末に個人事業主向けの資金繰り相談を引き受け、継続クライアント3名・月15万円まで届いています。
STAGEを区切って、最初は本業を絶対に辞めない
拙著『会社員が働きながら月30万円を稼ぐ起業法』に「STAGE I〜IV」という考え方が出てきます。最初のSTAGE Iは、業界外の知人1人から有料相談を受け取る段階です。金融保険業界の方が間違えやすいのは、いきなりSTAGE IIIの法人化・専業独立を考えて、そこから逆算して動こうとすることです。順番を守れば、銀行員の経験は外で売れる資産になります。
同期会で議論するエネルギーがあるなら、業界の外の知人1人に「自分の業務知識の中で何が役に立ちそうか」を聞きに行く方が、半年後の景色がまったく違ってきます。
最初のSTAGE Iでは、業界外の知人1人と「自分の業務知識を相手にどう翻訳するか」を書き出す時間を週末に30分だけ確保してください。独立の判断は、その書き出しが1枚に整った後で十分間に合います。

次の同期会の前に、銀行の外にいる大学の同期や趣味のつながりに「最近の仕事の悩みを聞かせてもらえないか」とメッセージを送ってみてください。業界外の生の悩みのほうが、業界内の議論よりも、あなたの経験の値段を確かに教えてくれます。
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