准看護師は訪問看護で独立できる? 資格の範囲とできる仕事の見分け方

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

准看護師として働いてきました。いつかは訪問の仕事で独立したいと考えているのですが、准看の資格だと業務範囲が限られると聞いて不安です。

訪問看護ステーションは自分では持てないのでしょうか。資格の範囲で、どこまでできるのか教えてください。

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● 回答

その不安、よくわかります。資格の範囲という言葉が、自分の可能性に最初から枠をはめているように感じてしまいますよね。まず安心していただきたいのは、准看護師の資格でも、訪問の領域で動ける道はちゃんと残されています。ただ、「どこまでできるか」を正確に知らないまま進むと、後で立ち止まることになります。だからこそ、線をはっきり引いてからスタートしましょう。

結論を先にお伝えすると、准看護師の資格は「医師・歯科医師・看護師の指示の下で看護の仕事をする」資格です。ここが正看護師との一番の違いになります。だからこそ、独立の形を考えるときも、この前提から組み立てる必要があります。

准看護師の資格でできること・できないことの線

制度の話なので、ここは正確に押さえておきます。准看護師は、保健師助産師看護師法という法律で「都道府県知事の免許を受けて、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて看護を行う者」と定められています。つまり、自分の判断だけで看護の仕事を完結させる立場ではありません。

これを訪問看護ステーションに当てはめると、線がはっきり見えてきます。訪問看護ステーションでは、保健師・看護師・准看護師が常勤換算で2.5人以上必要ですが、管理者になれるのは保健師か看護師に限られ、准看護師は管理者になれません。さらに、訪問看護計画書や報告書は看護師等が作成・記載する書類で、准看護師が単独の責任者として作成する前提ではありません。

准看護師の資格で「できる/できない」の整理

  • できる:
    医師・看護師の指示の下で、訪問看護ステーションの看護スタッフとして働く
  • できる:
    介護・生活支援・同行支援など、医療行為ではない領域のサービスを自分で立ち上げる
  • できる:
    資格や経験を活かし、自費の生活支援や同行支援など医療行為ではない領域で仕事を請け負う
  • できない:
    准看護師の資格だけで訪問看護ステーションを開設し、管理者として独立運営する
  • できない:
    訪問看護計画書・報告書を自分の名義で作成する

ここまで読んで、肩を落とさないでくださいね。「ステーションを一人で持つ」という入口は確かに准看の資格では閉じています。けれど、訪問という領域には、もっと手前から始められる道がいくつもあります。

資格の範囲で始められる現実的な道

独立というと、いきなりステーションを構える姿を思い浮かべがちです。でも、それだけが独立ではありません。まずは「医療行為かどうか」で自分のやりたい仕事を仕分けし、医療行為に当たらない領域から組み立ててみてください。准看護師の資格と現場経験は、その土台になります。

たとえば、高齢の方の通院に付き添う同行支援、買い物や家事を含む生活支援、体調の変化に気づける目を活かした見守り。これらは医療行為そのものではないため、資格の指示下要件に縛られずに、自分のサービスとして設計しやすい領域です。看護の現場で培った「異変に早く気づく力」は、医療の外でこそ重宝されます

もう一つの道が、既存の訪問看護ステーションや介護事業所と関係を持ちながら、非常勤・登録スタッフ・医療行為ではない自費サービスなどの形を探ることです。

ここで大事なのは、指定訪問看護の看護業務を、個人事業として外から丸ごと請け負えると考えないことです。指定訪問看護は、ステーションの管理体制と勤務体制の中で提供されるものだからです。

公表値では、指定訪問看護ステーション数は2026年4月1日現在で2万51カ所まで増えています。働き方や連携先を探す受け皿そのものは、年々広がっているのです。

起業18フォーラム会員・万谷さんの歩み

起業18フォーラムにいた万谷さん(仮名・40代後半・女性・准看護師として20年勤務・夫と高校生の子1人)も、最初は同じところでつまずいていました。「准看だから独立は無理」と、何度も自分で答えを出しては引っ込めていたそうです。一人で求人サイトと開業情報を行き来するだけで、半年が過ぎていました。

きっかけは、起業18フォーラムの個別相談でした。資格でできる範囲と、医療行為ではない自費の生活支援・同行支援として請け負う形を一つずつ整理してもらううちに、「ステーションを持つ」以外の入口がいくつもあることに気づいたのです。准看護師は指示の下で働く資格だという制度の事実を、不安の材料ではなく設計の出発点として受け止め直せたことが、万谷さんにとっての転機でした。

そこから万谷さんは、いきなり手を広げず、知り合いの紹介で高齢のご夫婦の通院同行を1件だけ引き受けるところから始めました。4カ月目に、その方が「来週もお願いできますか」と続けて頼んでくれたのです。最初の一人が定期利用になった瞬間が、万谷さんの独立を現実に変えました。現在は同行・生活支援を中心に月7万円ほど、会社に勤めながら受けています。

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に、起業のネタを判断する「3つのチェック」という考え方が出てきます。一人で始められるか、一人で続けられるか、大きなお金がかからないか。万谷さんの同行支援は、この3つをすべて満たしていました。准看護師の資格と現場経験があれば、特別な設備も大金もいりません。だからこそ、最初の一歩を軽くできたのです。

大切なのは、できないことを数えて止まるのではなく、できることの線を正確に知ったうえで、その内側で小さく始めることです。まずは、自分の資格でできる業務の範囲を、所管の保健所や都道府県の窓口、あるいは近くの訪問看護ステーションに問い合わせて確認してみてください。範囲がはっきりすれば、不安は具体的な計画に変わっていきます。

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● 質問 看護師として病院に勤めていますが、将来は独立して訪問看護や健康相談のサービスを始めたいと考えています

資格の枠は、可能性を閉じる壁ではありません。どこまでできるかを知ることは、どこから始められるかを知ることでもあります。あなたが現場で積み上げてきた目と手は、訪問という領域で、まだまだ求められています。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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