記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
内勤中心の仕事で、社外の人とほとんど接点がありません。異業種交流会も苦手で、SNSも見るだけです。脈もコネもない自分に、起業なんて本当にできるのでしょうか?
同じ職場で長く働いてきたので、独立している人が眩しく見えます。

● 回答
内勤の午後、部署から一歩も外に出ない一日を過ごし、ふと「自分には人脈もコネもない」と感じる。この不安から相談を受ける場面は月に何度もあります。人脈「ゼロ」の多くは、事実誤認から来ています。
日本政策金融公庫総合研究所の2024年度新規開業実態調査では、開業者の97.9%に勤務経験があり、83.1%には現在の事業に関連する仕事の経験がありました。ただし、この調査は最初の顧客を誰から得たかまでは示していません。職歴があることと、人脈経由で受注したことは分けて読みます。
- 連絡先:
勤務先の名簿や記録を使わず個人的な関係だけを対象にする区分 - 人数:
人数の多さを受注の保証とみなさない確認 - 目的:
顧客候補を数えるのではなく自分が助けた場面を思い出す棚卸し
弱い紐帯研究を参考に身近な関係を見直す
社会学者マーク・グラノヴェッターは1973年の論文「The Strength of Weak Ties」で、マサチューセッツ州ニュートン近郊の専門職・技術職・管理職の転職者282人を調べ、そのうち100人に面接しました。人的接触で仕事を見つけた54人では、その相手に「頻繁に会う」が16.7%、「時々」が55.6%、「まれ」が27.8%でした。
この研究は、頻繁に会わない相手が異なる情報へ橋をかける可能性を示す古典的な研究です。ただし、1970年代の特定地域における転職研究であり、現代日本の起業顧客を直接調べたものではありません。身近な相手へ連絡すれば最初の受注が出る、と保証する数字ではありません。
- 強い紐帯:
家族・親友など頻繁に関わり、支えや率直な意見を得やすい相手 - 弱い紐帯:
元同僚・元上司など頻繁には会わず、異なる情報への橋になり得る相手 - 偶発縁:
交流会やSNSで新しく知り合い、関係づくりから情報交換が始まる相手
瀬戸さん(40代・内勤)の12ヶ月と件数で見るつながり
瀬戸さん(40代・内勤の会社員)は、起業準備を始めた当初「異業種交流会にも行かないと」と焦っていました。最初の一歩は、過去の仕事で助けた相手と内容を書き出すことでした。そこから、名刺の束を作るのではなく、守秘義務や勤務先との関係に問題がない元同僚へ、近況確認から連絡する動きに切り替えています。
結果として、3ヶ月目に業務相談が月1件、6ヶ月目に月4件、12ヶ月目には月12件の相談が入る流れに変わりました。金額よりも件数の積み上がりで信頼が固まっていく感覚が定着した点が、瀬戸さんが自分で振り返った変化です。相手の側でも「あの人に頼めば同じ現場感覚で話が通じる」という認知が広がったことが、件数増の実務的な理由でした。
身近な10人の名前を書き出すだけで十分
不安をひとまず横に置くために、まず個人的な関係として連絡できる知人や元同僚を10人まで紙に書き出してみてください。肩書きや連絡先まで詳しく書かなくて構いません。名前を書き出す目的は、その人たちを顧客候補と数えることではなく、自分がどんな場面で役に立ってきたかを思い出すことです。
- ステップ1:
個人的な関係として連絡できる元同僚・元上司の名前 - ステップ2:
友人・地域活動や公開勉強会の知人・元研修同期を含む10人以内の一覧 - ステップ3:
勤務先情報を使わず自然に話せる1人への短い近況連絡
今日できることは、身近な10人の名前を書き出すだけで十分です。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』でも、人のチカラは数ではなく「電話で仕事を紹介してもらえる仲」の質だと紹介しています。名刺の総数ではなく、身近な10人がすでに橋になり得るという捉え直しから始めれば、内勤で交流会が苦手な立場でも起業準備は前に進みます。

定期収入を保ちながら準備すれば、収入中断のリスクは抑えられます。ただし、費用、契約、勤務先の規則、時間や健康への負担は残ります。身近な10人の名前を書き出した紙を、連絡先一覧ではなく、経験を棚卸しする出発点にしてください。
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