記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
平日はメーカーで事務をしている30代です。休みの日だけ、頼まれてお宅へ伺い、パソコンの設定やデータ整理を手伝っています。移動は通勤で使っている自分の車です。任意保険の使用目的は通勤・通学のままなのですが、仕事で走っている途中の事故でも保険は使えるのでしょうか。
ガソリン代や保険料を経費にしていいのかも分かりません。何から確かめればいいですか?

● 回答
あくまでも一般論で回答します。保険の区分をどうするかと、ガソリン代を経費にできるかどうかは、まったく別の基準で決まります。同じ「車をどう使っているか」から出発するのに、答えを出す相手は保険会社と税務署に分かれます。
保険料は使用目的の区分で決まる
使用目的は、契約するときに保険会社へ伝える告知事項のひとつです。どの区分で契約するかによって保険料が変わるため、実際の使い方に合ったものを申告することになっています。
損害保険各社の説明では、年間を通じて月15日以上その用途で車を使うかどうかを目安に、3つの区分が置かれています。それぞれの中身は、次のとおりです。
- 業務使用:
仕事のための運転が、年間を通じて月15日以上ある場合の区分。保険料は3つの中でいちばん高い設定 - 通勤・通学使用:
仕事では月15日に届かないが、通勤や通学の運転が月15日以上ある場合の区分 - 日常・レジャー使用:
仕事にも通勤にも月15日以上は使わず、買い物や旅行が中心の場合の区分
約款どおりに届け出ていなかった場合の扱い
使用目的は、契約したあとに変わることがあります。自動車保険の契約では、被保険自動車の使用目的の変更は、契約者から保険会社へ通知すべき事項として扱われます。
通知が正しくされていなかった場合、契約を解除されたり、保険金が支払われなかったりすることがあります。通知しなかった事実と事故との間に因果関係がないときは支払われる扱いですが、因果関係の有無は約款と事故状況に沿って判断されます。
脅かしたいわけではありません。危ないのは、約款を読まないまま「月15日には届かないから平気だろう」と自分で結論を出してしまうことです。判定の線引きは、会社や商品によって違います。
ケース別に見た使用目的の目安
同じ「自家用車を仕事にも使う」でも、走り方によって答えが変わります。
週末だけ、月に2〜3回訪問先へ向かうケースでは、業務での運転が月15日に届きません。多くの会社の基準では、通勤・通学使用のままで足ります。
平日の帰りに毎日1軒ずつ寄るようになると、話が変わります。業務での運転が月15日を超えるため、業務使用への変更が必要になる可能性が高くなります。
繁忙期の2か月だけ毎日走る、というケースもあります。一時的な増加をどう扱うかは会社ごとに違うため、自己判断せず、契約先に事情を伝えて聞くのが確実です。
税務のルールは保険とは別
ここから税金の話に移ります。保険の区分を変えていなくても、業務で使った分の費用は経費に入れられます。反対に、業務使用へ変えたからといって、車にかかる費用が全額経費になるわけでもありません。
国税庁のタックスアンサー『必要経費の知識』(No.2210)では、家事と業務の両方に関わる家事関連費のうち必要経費になるのは、業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できるものに限られる、と示されています。2026年7月時点でも、この考え方が土台です。
区分のしかたは、申告の種類で道が分かれます。青色申告をしている人は、取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要だったと明らかにできる部分が対象になります。
それ以外の人は、所得税基本通達に沿って、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで主たる部分を判定します。50%以下でも必要な部分を明らかに区分できるなら、その分は経費に入れて差し支えないとされています。どちらの道でも、割合の大小より、分けて説明できるかどうかが問われます。
たとえば年間の走行距離が8,000キロ、そのうち訪問先への行き来が1,600キロだったとします。業務の割合は20%です。年間の任意保険料が6万円なら12,000円、ガソリン代が9万円なら18,000円が、経費に入れられる目安になります。
今夜、車のメーターの数字を手帳かスマホに1度だけ控えておいてください。月末ごとに同じことをするだけで、按分の根拠になる記録が手元に残ります。
訪問の手伝いを始めた塩見さんがつまずいた点
会員の塩見さん(仮名・40代後半)は、生活協同組合の配送を20年続けてきた方です。休みの日に、配送先で顔なじみになった方から頼まれて、部屋の片づけを手伝うようになりました。掃除機や収納ケースを自分の車に積んで、依頼先を回る形です。
当初は料金を決めておらず、お礼として受け取る金額もばらばらでした。ひとりの依頼者がご近所の3人を続けて紹介してくれてから、依頼先が市内に散らばり、走る距離が伸びていきました。
ある晩、塩見さんは車検証入れに挟みっぱなしだった給油レシートを半年分そろえ、片づけで受け取った金額と突き合わせてみました。給油した量から逆算すると、走った距離は前年の同じ時期より2,000キロ増えていました。1か月あたりに直すと、ガソリン代と駐車場代で7,000円ほどになります。受け取っていた金額は月に2万円前後でしたから、3分の1が移動で消えていた計算です。
そこからは、起業18フォーラムの勉強会で扱う価格の考え方を自分の仕事に当てはめ、距離をどう料金に反映させるかを整理しました。訪問先までの距離に応じた出張費を料金表に足し、ここから先は受けないという範囲も決めています。保険の使用目的も、同じ時期に契約先へ電話で確かめました。
11か月目に、受け取る金額が初めて月5万円を超えました。現在も同じペースが続いています。塩見さんにとっては金額よりも、片づけのあとに「来月もお願いね」と言われる回数が増えたことのほうが手応えだったそうです。
車を買い足さないと先に決めておく
ここで役に立つのが、拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』で紹介している劣後順位リストです。やることリストの裏側に、やらないことリストを1枚つくっておきます。先に手放すものを決めるほうが、限られた時間とお金は残ります。
訪問する仕事を始めると、荷物がたくさん積める車に買い替えたくなる場面が必ず来ます。そこを先に「買い足さない」と決めておくと、いまの車で回せる範囲に仕事の設計が収まります。車が1台のままなら、保険の区分も経費の割合も、考えることが少なくて済みます。
今日かける1本の電話
ここまでの話は、窓口に聞けば片がつくものばかりです。聞く内容を先に決めておけば、通話は数分で終わります。
- いまの契約の使用目的:
証券に書かれている区分の口頭確認 - 変更が必要になる線引き:
仕事で月に何日走ると業務使用になるのかという会社ごとの基準確認 - 変更したときの差額:
業務使用に切り替えた場合の年間差額の試算
保険証券を手元に出して、契約している保険会社の窓口に電話をかけ、いまの使用目的と、仕事で月に何日走ると変更が必要になるのかを聞いてみてください。上の3点で十分です。
切り出し方は「休みの日に、人のお宅へ伺う仕事を始めました」の一言でかまいません。自分から先に伝えた事実は記録に残るので、後から食い違う余地が減ります。
電話をかけるのも、メーターの数字を控えるのも、費用はかかりません。いまの車のまま確かめられる範囲の話ですから、思っていたのと違っても引き返せます。
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