起業準備中の会社員にインボイス制度は関係ある? 年商の壁を正確に理解する

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

「インボイス制度が複雑そうで、起業準備に踏み出す前に理解しないといけないのでは…」そう感じていませんか?

その不安はよくわかります。でも少し待ってください。インボイス制度が「あなたに関係するかどうか」を判断するポイントは、実はひとつだけです。

今日はそれをシンプルに解説します。

ポイント インボイス制度の基本をまず整理する

インボイスは「消費税の届け出制度」

インボイス

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除に関連する制度です。売り手が買い手に適格請求書(インボイス)を発行し、買い手がその消費税を正確に控除できるようにするための仕組みとして2023年10月から導入されました。

インボイス制度の対象となるのは、「消費税の課税事業者」として登録した事業者です。課税事業者になるかどうかの主な判定ラインは、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかです。ただし、もう一つ「特定期間」というルールもあります。特定期間とは個人の場合「前年の1月-6月」の6か月間のことで、この期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超えた場合は、基準期間の売上が1,000万円以下であっても課税事業者になります(国税庁 No.6531)。

これが基本のポイントです。基準期間・特定期間のいずれの課税売上高も1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が発生しない「免税事業者」のままでいられます。そして免税事業者は、インボイス登録の義務がありません。

なお、起業直後で売上がほとんどない段階では特定期間の要件を満たすことはまずありませんが、事業が軌道に乗り前年前半の売上が増えてきたタイミングでは注意が必要です。

ポイント 起業準備中の会社員は、ほぼ全員「今は関係ない」

年商1000万円未満は免税事業者で構わない

インボイス

起業準備を始めたばかりの会社員で、初年度から年商1,000万円を超える人はほとんどいません。最初は月に数万円〜数十万円の収入から始まることが圧倒的に多いのです。

月収30万円のサービス売上があっても、年商は360万円。インボイス制度が関係してくる1,000万円の水準には、まだまだ遠い話です。

起業準備を始めた最初の数年間は、インボイス登録を気にする必要はありません。気にするのは「年商が1,000万円に近づいてきたころ」で十分です。その段階が来たら、税理士と相談して登録するかどうかを検討しましょう。

インボイス登録が必要になるケース(参考)

  • 年商1,000万円を超えた場合(原則として消費税課税事業者になる)
  • 自分の取引先(BtoB中心)から「インボイス登録してほしい」と要請がある場合
  • 自ら進んで課税事業者になりたい場合(インボイスを発行して取引先の負担を減らす)

ポイント 2026年10月に何が変わるのか

経過措置が縮小されるが免税事業者には直接影響なし

インボイス

2026年10月に、インボイス制度の経過措置が変わります。現在(2025年10月〜2026年9月)は免税事業者からの仕入れについて80%を控除できるという経過措置がありますが、2026年10月以降は70%に変わります。その後も段階的に縮小され、最終的には控除不可になる予定です(令和8年度税制改正後のスケジュール:2026年10月〜2028年9月→70%、2028年10月〜2030年9月→50%、2030年10月〜2031年9月→30%、2031年10月以降→控除不可)。

また、国税庁の「2割特例」は2026年9月30日で終了します。ただし令和8年度税制改正により、後継として「3割特例」が新設されました。個人事業主は令和9年・令和10年分(2027・2028年)の確定申告について3割特例を適用できます(国税庁 2割特例特設ページ)。2割特例が「完全に終わる」わけではなく、軽減措置は形を変えて継続する点を押さえておきましょう。

この変化が影響するのは、「BtoB取引で免税事業者として取引しているフリーランスや個人事業主」です。起業準備を始めたばかりで、まだ売上がほとんどない会社員には、直接的な影響はありません。

ただし「起業準備がある程度進んで取引先が法人中心になってきた場合」は注意が必要です。取引先から「インボイス登録してほしい」という要請が来ることがあります。そのときに慌てないよう、「登録するかどうかの判断基準」を事前に税理士と整理しておくといいでしょう。

ポイント インボイスを「起業しない理由」にしてはいけない

制度への不安が行動を止める最大の落とし穴

カウンセラー起業

インボイス制度を理解しようとするほど、「複雑で大変そう」という印象が強くなります。税制は確かに複雑です。でも、起業準備を始めた初期の段階で深く理解する必要はありません。

26年間で60,000人以上の起業準備をサポートしてきた経験から言えば、「制度を完全に理解してから動こう」と待ち続けた人の多くが、気づいたら数年後もまだ待っていた。そういうケースを何度も見てきました。

インボイスより先に気にすべきこと(起業準備初期)

  • 何を売るか(商品・サービスの内容)
  • 誰に売るか(ターゲット顧客の明確化)
  • 最初の顧客をどこから見つけるか
  • 開業届の提出タイミング

インボイスの問題は「年商が伸びてから考える」で十分です。起業準備の初期に最も大切なのは、「売れる商品を作ること」と「最初の1円を稼ぐ体験をすること」です。制度の不安を先に取り除こうとして行動が遅れるより、まず動いてみることを私はお勧めします。

ポイント まとめ|インボイスへの不安は起業準備の後半でいい

初期は無視してOK、年商が伸びたら税理士へ相談

point

インボイス制度を起業しない理由にしないでください。年商1,000万円を超えるまでは、免税事業者として問題なく事業ができます。最初の数年間でその水準に達したなら、そのときに税理士に相談すれば十分です。

今あなたに必要なのは、「インボイスの完全理解」より「起業準備の最初の一歩」です。まず動き始めることで、制度の問題も自然と具体的になってきます。一緒に進んでいきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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