友達と起業はやめとけ? 現場でわかった失敗パターンと唯一成功した分岐点

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

友達との共同起業は離脱リスクが28.6%増。それでも60,000人の現場で唯一成功した稀少パターンがあります

「親しい友達に『一緒に起業しよう』と誘われた」「先輩から共同経営の話が来て断れない」。起業18フォーラムの相談窓口にも、このご相談が毎月のように届きます。結論からお伝えする前に、まずある研究データをご紹介します。

米国の起業研究者ノアム・ワッサーマンが400のスタートアップを調査した結果、社会的関係性のあるメンバーが1人増えるごとに、共同創業者の誰かがチームを去る可能性は28.6%増えると判明しました。(出典:Coral Capital「なぜ友人同士で創業したチームが最も壊れやすいのか?」2019年

つまり、知らない人同士のチームよりも、友達同士のチームの方が壊れやすい。それが世界的な調査で示された事実です。

今日は、起業18フォーラム代表として10,000人の起業相談を受けてきた現場から、友達との起業がなぜ高確率で失敗するのか、そして唯一成功した稀少パターンには何があったのかをお話しします。

ポイント 友達との共同起業は本当に失敗しやすいのか?データで見る現実

研究データと公的統計が示す共同創業の壊れやすさ

怒られている女性

「友達と起業 やめとけ」と検索する人が多いのは、すでに「うっすら不安」を感じているからだと思います。その感覚は、データの裏付けがあります。

中小企業庁が公表した「2025年版中小企業白書(第8節 開業、倒産・休廃業)」によれば、2023年度の廃業率は3.9%で前年から上昇し、2024年の倒産件数は10,006件と2021年を底に増加傾向にあります。共同経営の場合、この廃業リスクに「人間関係の不和」というリスクが乗ってくるわけです。

共同創業の難しさは、4つの典型パターンに集約されます。

  • 意思決定の遅れ
    意見が割れると決断が鈍り、重要な局面でチャンスを逃す
  • 責任の所在の曖昧化
    損失や赤字が出たとき、相手に責任を求めたくなる心理が働く
  • 温度差の発生
    家庭の事情・本業の繁忙度の違いで「相手は仕事をしていない」と感じやすい
  • 出口の不在
    撤退・売却・分割のルールを決めずに始めるため、関係悪化時に逃げ場がない

「あなたとなら大丈夫だと思う」という言葉ほど、危ない兆候はありません。

ポイント 共同起業で起こる典型的な失敗パターン3つ

10,000人の現場で繰り返し見た決裂のかたち

オフィス二人でいる

10,000人を超える起業相談を受ける中で、共同経営の失敗には驚くほど同じ構造が現れます。代表的な3パターンをご紹介します。

パターン①:会社員と独立組のスピード差

会社員のAさん(妻子持ち・残業多め)が、すでに起業しているBさん(独身)と共同事業を始めました。Aさんは平日の夜と土日しか動けず、Bさんは「Aさんは仕事が遅い」とイライラを募らせます。やがてBさんは「起業はやっぱり一人で進めないとダメだ」と口癖のように言うようになり、Aさんは「Bさんは自分勝手だ」と感じるようになりました。最終的に二人は決裂し、共通の知人を巻き込んだ気まずい関係が今も続いています。

パターン②:講師と受講生という上下関係

起業の勉強会で出会ったCさん(講師)とDさん(受講生)が、講座ビジネスを共同で立ち上げました。役割分担はCさんが講師、Dさんが段取りでしたが、Dさんの本職は料理人。セミナー運営の経験がなく、結局すべての段取りをCさんが一人で抱え込むことになります。講座中にDさんが30分遅刻して登場し講義中ずっとあくびをしていたことで、講座後に大喧嘩となりDさんが「友人の前で恥をかかされた」とCさんに損害賠償を請求するに至りました。Cさんはトラブル処理に3ヶ月以上を費やし、本業にも大きな影響が出てしまいました。

パターン③:信頼で出口設計を省略

知人同士で各200万円ずつ出資して合同会社を設立したものの、半年後に方向性の相違から一方が撤退を希望。しかし会社の口座・印鑑・連帯保証のすべてが2人の名義になっており、「撤退したくても出口がない」状態になってしまいました。連帯保証は撤退しても消えず、感情的なやり取りが半年続き、最終的に弁護士費用だけで80万円を超えました。「友達だから書面はいらない」が、最も高くつく判断だったのです。

ちなみに、メンタリストDaiGoさんも友達同士の起業について「主導権がはっきりしていないと絶対喧嘩します」と語り、ひろゆきさんも「どんなに仲良い人でも揉めますよね」と同意されています。

ポイント 唯一成功した稀少パターン:商品力×発信力×信用力の役割分担

10年続いた共同経営に共通する3つの条件

仲良し雀

10,000人を見てきた中で、共同経営で10年以上続いた組み合わせは、私の知る範囲でほぼ1件だけです。経営者向け講座の元生徒と元先生のコンビで、社長と副社長として会社を作りました。

彼らの組み方には、はっきりとした特徴がありました。同じ会社の中で「全く別の事業」をそれぞれが担当し、お互いの仕事に一切口出ししないルールを徹底したのです。社長は営業と資本金、副社長は戦略と仕組みづくり。事業領域が違うので、衝突する場面がそもそも生まれませんでした。

拙著『稼ぐ言葉の法則』では「商品力×発信力×信用力」という考え方を取り上げています。一人で全部を担うのは難しいので、共同経営はこの3軸の補完関係で組むのが理にかなっています。

担当軸 必要なスキル 向いている人
商品力 商品開発・品質設計・専門技術 職人・研究者・専門家
発信力 マーケティング・コピー・SNS運用 ライター・SNS運用者・営業
信用力 資金調達・取引先関係・財務管理 経営経験者・士業・投資家

友達同士で「同じスキルセットの人と組む」のは最悪手です。役割が違うほど、お互いを尊敬し合える関係が長く続きます。

ポイント 友達と組むなら必ず決めておく「出口設計」5つの項目

関係悪化時に逃げ場を残す契約と書面の作り方

「友達だから書面はいらない」と言いがちですが、出口設計は信頼を疑うためではなく、信頼を守るために行うものです。

  • ①出資比率と決定権
    社長を1人決め、持株比率51%以上(投資家視点では67%超が理想)を確保する
  • ②撤退条項
    退職時の株式買取価格・買取義務・連帯保証解除のタイミングを書面化する
  • ③役割分担と評価基準
    「営業◯件/月」「開発◯機能/月」など定量目標で書く(「頑張る」は禁句)
  • ④報酬・利益配分のルール
    役員報酬と利益配当を分けて、根拠を文書に残す
  • ⑤決裂時の事業分割方法
    事業領域ごとに分割する/一方が買い取る/第三者に売却するの3案を準備

出口設計には、創業株主間契約という弁護士の協力を得て作る書面があります。費用は10万円〜30万円ほど。この30万円を惜しんで弁護士費用80万円のトラブルに巻き込まれるのは、本当によくある話なのです。

ポイント 会員Mさんの事例:自己流共同経営で行き詰まり、起業18で学び直して月収32万円に

共同起業の失敗から単独再起までのV字回復

起業18

起業18フォーラムの会員Mさん(30代後半・元印刷会社営業)は、専門学校時代の友人とWebマーケティング支援会社を共同設立しました。書面なし・口約束・出資比率50:50という、典型的な「やめとけ」パターンです。

1年目はクライアントを4社獲得し順調に見えましたが、Mさんは新規開拓担当、友人は制作担当という分担のはずが、いつの間にか友人が「営業もしてほしい」と要求してくるようになります。Mさんが「役割分担を整理しよう」と提案しても「いまさら何を言うんだ」と聞き入れられない状態が3ヶ月続きました。

「もう自分一人でやるしかない」と感じたMさんは、当時参加した起業18フォーラムの個別相談で、自分の失敗が「役割の言語化を省略した結果」であることに気づきます。勉強会で「商品力×発信力×信用力」の考え方を学び、自分は発信力に強みがあり、商品力は外部パートナーに任せる方が向いていると判断。

友人との会社は弁護士を交えて事業分割し、Mさんは単独で再スタート。起業準備17ヶ月目に月22万8千円、24ヶ月目に月収32万円を達成しました。「あのとき書面を作っていなかった代償は大きかったが、学び直して一人で立てた感覚は、何にも代えがたい」とMさんは語ります。

共同経営を考える前に、まずは「一人で始められますか? 一人で続けられますか?」この2つに「はい」と答えられる形を設計してください。その上で、補完関係としての共同経営を検討する順番が安全です。

夫婦で一緒に起業する場合、最初に話し合っておくべきことは何ですか?

● 質問 夫婦で一緒に起業することを検討しています。うまくいっている夫婦起業の事例では、どんなことを最初に話し

ポイント よくある質問:友達と起業する前に確認しておきたいこと

共同起業の疑問を現場視点で解説

起業前質問集

Q.出資金はどう取り決めればトラブルを防げますか?

  • 出資比率・返還条件・撤退時の取り扱いを株主間契約書に明記する
  • 「贈与」とみなされないよう「出資証明」の形を整える(議事録・送金記録)
  • 共同口座の管理権限と引き出しルールも事前に決めておく

「信頼しているから書面は不要」と思う関係こそ、書面が最も力を発揮します。トラブルは感情が絡むほど解決が難しくなるので、感情が動く前に仕組みを整えるのが原則です。

Q.友達に誘われて断りにくい場合、どう伝えればいいですか?

  • 「一緒にやりたい気持ちはある。でも今の自分にできる役割を確認させてほしい」と役割整理から始める
  • 「まず単独で試してから協力し合う形にしたい」と提案する
  • 「今一緒にやると友達関係を守れない可能性がある」と正直に伝える

断ることは友情を壊すことではありません。むしろ長い目で見ると、安易に乗らなかったことで関係が続くケースの方が多いのです。

Q.持株比率は何%が安全ですか?

  • 最低でも社長が51%以上を確保(重要決議の単独通過が可能)
  • 投資家が望ましいとする水準は67%超(特別決議も単独通過可能)
  • 50:50は意思決定が止まるリスクが高く、避けるべき

「対等に組みたい」気持ちは理解できますが、対等な持株は対等な責任ではなく、対等な停止ボタンになります。誰がハンドルを握るのかを最初に決めておきましょう。

Q.バンドやお笑いコンビが解散するのと似てますか?

  • 音楽性・方向性の違い → 事業領域の違い
  • ソロでやりたい → 単独経営への移行希望
  • 売れなかった → 売上未達による疲弊

解散の構造はほぼ同じです。バンドが解散する確率の高さを考えると、共同経営も同じくらい慎重に設計する必要があるとわかります。

ポイント まとめ:友達と起業するなら「出口設計」から始めよう

信頼を守るための書面と役割分担の手順

ビジネスウーマン

友達や仲間と起業すること自体が悪いわけではありません。大切なのは、スタートラインで「出口設計」と「役割の文書化」を済ませておくことです。それができている関係なら、一緒に進む力は本物です。

私の起業塾のセミナーに参加する人たちを見ていても、友達同士で来てなにやら相談し合っている人たちで、その後本気で起業をすると決めた人はこれまで一人もいません。今の世界で仲良くなった人たちは、当然ですが世界を今のままキープすることを望むので現状が変わらない方を選択するのです。

出典:大和書房『朝晩30分 好きなことで起業する』新井一(P130)

あなたの人生は、あなたがハンドルを握るものです。友達と組むかどうかは、その後の話で十分間に合います。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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