記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「沖縄はのんびりした土地だから、ビジネスにはあまり向かない」と、那覇市で起業を考え始めた会社員から聞かされることがあります。那覇市の人口は311,965人(那覇市人口統計・2026年6月時点)です。沖縄県全体では年間1,093万人を超える入域観光客があり、那覇市は空港と国際物流拠点の那覇港を持つ主要な玄関口です。
のんびりした空気と、観光や物流が生む現実の需要は、矛盾するものではありません。むしろその両方を知っている人ほど地元の需要に合わせて事業を組み立てやすくなり、那覇で仕事を作る方法を地域の強みから順に見つけられます。
那覇市はどんな街か 観光と国際物流が交わる県都

那覇市は沖縄県の県都で、人口311,965人(外国人10,031人を含む・那覇市人口統計・2026年6月時点)を抱えています。県内でもっとも人が集まる街で、住民の中には転勤や移住で那覇に来た人も含まれています。
観光の面では、沖縄県全体で2025年度の入域観光客数が1,093万5,800人となり、過去最高を更新しました(沖縄県公表・2025年度実績・前年度比9.9%増)。外国客は294万1,300人で前年度比28.4%増となり、那覇市内の商店街や国際通り周辺には海外からの客も日常的に行き交っています。
加えて、那覇港は東アジアのネットワークと国内輸送をつなぐ国際物流拠点として機能しており、那覇港総合物流センターが県内外の貨物を仲介しています(那覇港管理組合公表)。観光と物流という異なる二つの流れが同じ市内で重なっているのが、那覇市の特徴です。
この二つの流れがあるからこそ、「沖縄はのんびりしている」という印象だけで那覇の商圏を判断すると、実際の需要を見誤ります。那覇市で起業を考えるなら、観光・物流・多様な人の流れという三つの層のどこに自分の商品を置くかを、最初に見極めることが欠かせません。
那覇だからこそ狙える事業の切り口

那覇市は沖縄県内でもっとも人口が多く、観光客も国際物流関係者も行き交う、広い商圏を持つ街です。だからこそ「那覇の観光客全体」「那覇市民全体」のような大きすぎる客層を狙うと、埋没しやすくなります。
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、広い市場の中でも特定の客層に絞り込み、その客層の中で一番の存在になる考え方を紹介しています。那覇のように商圏が広い街ほど、この絞り込みが効いてきます。
- 観光客特化型:
リピーターや特定国からの旅行者など、絞り込んだ客層向けの商品・サービス - 地元密着型:
商店街や地域住民との関係を軸にした那覇市内の生活需要への対応 - 物流・法人向け型:
那覇港・那覇空港の利用企業や国際物流関連法人向けのサービス
まず「観光客特化型」「地元密着型」「物流・法人向け型」のどれに軸足を置くかを、ひとつだけ決めてみてください。三つを同時に狙うと、どの客層にも響かない発信になりやすくなります。
会員事例 香取さんが商店街で見つけた強み

香取さんは、那覇市内の建設会社で経理を担当する30代後半の女性です。休日に国際通り周辺を歩くたびに、観光客向けの土産物店が軒を連ねる一方で、地元の常連客しか知らないような店も点在していることに気づいていました。
最初は「観光客向けに何か作れないか」と漠然と考えるだけで、なかなか商品の形にはなりませんでした。転機になったのは、休日によく立ち寄る惣菜店の店主から「結局、誰に売りたいわけ」と聞かれ、うまく答えられなかったことでした。客層を絞り込むほど値段の話がしやすくなると気づいたのは、そのやり取りがきっかけです。
持ち帰った香取さんは、商店街の店主に自分から声をかけて回ることを決めました。2週間ほどかけて、国際通り裏の商店街で店を構える10軒ほどの店主に、「観光客に何を聞かれることが多いか」を1軒ずつ尋ねて回りました。
見えてきたのは、外国人観光客からリピーターになった客ほど「地元の人が実際に使っている店」を知りたがっているという傾向でした。香取さんは、そうした声を店主から預かり、外国語対応の簡単な案内シートを作って店先に置いてもらう活動を始めました。
最初は数店舗に無償で置いてもらう程度でしたが、取材・翻訳・レイアウトをまとめて引き受ける形にしたところ、依頼が少しずつ増えていきました。3ヶ月目には月3万円ほどの受注になり、半年を過ぎたころには1店舗あたりのセット単価を3,000円から1万2,000円に見直しました。値段は、扱う情報の範囲を広げてから決め直すと、驚くほど通りやすくなります。
香取さんの例でわかるのは、那覇のような広い商圏でも、対象を絞り込むところまで踏み込んで初めて値段が変わるということです。次に、那覇市や沖縄県が実際に用意している創業支援の窓口を見ておきます。
那覇市と沖縄県で使える創業支援窓口

那覇市の創業支援等事業計画は、中小企業庁が所管する産業競争力強化法に基づく国の認定を受けています。証明書の対象になる特定創業支援等事業は、那覇商工会議所など市が案内する実施機関で、経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野について、原則4回以上かつ1か月以上の継続支援を受ける仕組みです(那覇市公式ホームページ公表)。
相談を経ると、那覇市が「認定特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書」を発行し、法人設立時の登録免許税の軽減など、いくつかの優遇に使えます。那覇商工会議所の支援や沖縄県の創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)も、居住地・創業地・対象業種・自己資金などの要件を満たし、金融機関等の審査を経ることで利用を検討できます。
那覇のように支援窓口が複数ある街では、どこに何を聞けばいいか迷いがちです。最初の相談先を決めかねているなら、なはし創業サポートセンターに、自分が考えている事業の方向性だけをひとまず話してみてください。窓口同士のつなぎ方も含めて案内してもらえます。
移住者や多様な人の流れがつくる需要

那覇市の人口311,965人のうち、外国人住民は10,031人を占めています(那覇市人口統計・2026年6月時点)。観光で訪れる人だけでなく、暮らしのベースを那覇に置く外国人住民も一定数いるのが、この街の客層の特徴です。
沖縄県は移住応援サイト「おきなわ島ぐらし」を運営し、住む・働く・支援・子育て・医療の情報をまとめて発信しています(沖縄県公式)。県外から那覇に移り住む人にとっても、相談窓口が整っている土地といえます。
那覇市で事業を考えるなら、地元で長く暮らす人・観光で訪れる人・移住してきた人という三つの層が同じ商圏に重なっていることを、商品設計の前提に置くと動きやすくなります。
ここまで、那覇市の観光・物流・人の流れという三つの切り口を見てきました。もう一つ、那覇に隣接する浦添市も、那覇とは違う強みを持つ街です。合わせて読むと、那覇との違いが見えてきます。

よくある質問

Q.那覇市で観光客向けのビジネスを始めるとき、何から手をつければいい?
まずは、観光客の中でもどんな層に向けるかを決めることから始めます。国際通り周辺は競合が多いため、特定の客層(リピーター客・特定の国からの旅行者など)に絞り込むと、発信する言葉が定まりやすくなります。
Q.那覇市の創業支援は、どこに相談すればいい?
まずは、なはし創業サポートセンター(那覇市銘苅2-3-1)に一般的な創業相談や証明申請の流れを問い合わせるのが分かりやすい入口です。証明書に必要な継続支援は、那覇市が案内する特定創業支援等事業の実施機関と支援内容を確認して受けます。
Q.那覇港や那覇空港の国際物流は、個人の起業にも関係がある?
直接、貨物を扱う事業でなくても関係します。国際物流に関わる企業やその関係者を相手にしたサービス、外国語対応の案内業務など、間接的に物流の需要とつながる事業は個人でも始めやすい分野です。
Q.那覇はのんびりしたイメージがあるが、起業しても大丈夫?
イメージと実際の商圏規模は別のものです。沖縄県全体では年間1,093万人を超える入域観光客があり、那覇市は主要な玄関口です。市内には国際物流の拠点と10,031人の外国人住民もいます。のんびりした空気を保ったまま、現実の需要に応じて商品やサービスを形にしていくことは十分に可能です。
次のステップ 起業18フォーラムでまず基盤を整える

那覇市は、観光・国際物流・多様な住民という複数の需要が重なる、選択肢の多い街です。選択肢が多いからこそ、最初にやることは地元の窓口を訪ねることではなく、自分がどの客層に向けて何を売るかを、起業18フォーラムの勉強会で一度整理することです。
那覇市内の創業相談窓口や商工会議所は、方向性が固まってから使うと効果を発揮します。まずは起業18フォーラムの勉強会に参加し、自分の強みと客層の絞り込みを一度言葉にしてみてください。
那覇の商店街や観光客の中に、自分にしか見えない小さな需要をひとつ見つけられたなら、それはもう、事業の芽を手にしたということです。
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