記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:
● 質問
退職して起業の準備を始めようとしていますが、健康保険と国民年金の切り替えがまったくわかりません。退職後、いつまでに何の手続きをすればいいのか、順番と期限を教えてください。(42歳・大手メーカー営業・退職まで3ヶ月)

● 回答
退職後には、健康保険と国民年金それぞれに手続き期限があります。この期限を知らずに後回しにすると、無保険期間や未加入期間が生じ、本来受けられる給付を損なうことがあります。順番と期限をあらかじめ把握して、退職後の手続きを一度で終わらせましょう。
厚生労働省の資料および日本年金機構の案内に基づき、2026年度の最新情報を確認しています。
退職後の健康保険、3つの選択肢と期限
退職して会社の健康保険を脱退した後、次の保険に入るまでに選べる選択肢は3つあります。
- ① 任意継続被保険者制度:
退職前の会社の保険をそのまま最長2年間継続する。申請期限は資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内が基本。期限を1日でも過ぎると原則申請できなくなる。 - ② 国民健康保険への加入:
市区町村の国保に加入する。手続きの目安は退職日の翌日から14日以内(各市区町村の窓口)。遅れても加入自体はできるが、未加入期間の保険料は後から請求される。 - ③ 家族の被扶養者になる:
配偶者など家族の健康保険に入れてもらう。年収130万円未満等の収入要件を満たす必要がある。
任意継続か国保か、保険料で選ぶ判断基準
どちらが得かは、在職中の標準報酬月額によって変わります。
任意継続の保険料は、会社と折半していた分の全額を自己負担します。ただし計算には保険者ごとの上限があります。現役時代の報酬が高かった方は、上限付きの計算になるため、任意継続のほうが保険料を抑えられるケースがあります。
一方、国保の保険料は市区町村ごとに異なり、前年の所得をもとに計算します。退職後に収入が大幅に下がる場合は、翌年の国保保険料が安くなる可能性があります。まず任意継続で手続きをして、翌年度に国保へ乗り換えるという選択肢も取れます。任意継続には資格喪失を申し出る手続きもあるため、切り替え時期は加入している保険者に確認しましょう。
国民年金の切り替え手続きと期限
退職すると、翌日から国民年金第1号被保険者になります。切り替え手続きの期限は退職日の翌日から14日以内(日本年金機構の規定)です。
手続き先は、住所地の市区町村窓口です。持参するものは、年金手帳(またはマイナンバーカード)と、退職を証明する書類(離職票・退職証明書など)です。
国民年金の保険料は月額17,920円(令和8年度)です。支払いが一時的に難しい場合は免除・猶予制度を利用できます。「払えないから手続き自体をしない」は避け、免除申請を選ぶほうが将来の年金受給額を守れます。
手続きの順番:退職後2週間でやること
- 退職日当日〜翌日:
健康保険の選択肢(任意継続・国保・家族の扶養)を決める。任意継続を選ぶ場合は資格喪失日から20日以内の申請が必要なため、退職前から準備しておく。 - 退職日翌日〜14日以内:
市区町村窓口で国民年金の種別変更手続きを完了させる。 - 資格喪失日から20日以内(任意継続の場合):
勤務先が加入していた健康保険の保険者へ申請する。
健康保険・国民年金いずれも「退職後14〜20日以内」に動くことが基本です。手続きを後回しにする理由は何もありません。
100階段カリキュラムで段階を整理する
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』では、大きな目標を階段に分けて一段ずつ上がる「100階段カリキュラム」を紹介しています。退職後の手続きも、この考え方がそのまま使えます。
「健康保険の選択」「国民年金の手続き」「開業届の提出」「青色申告承認申請書の提出」。これを一気にやろうとすると圧倒されますが、退職後2週間のうちにやることを絞れば、一段ずつ確実に上がれます。順番を間違えなければ、手続きは怖くなく起業準備に集中できる土台が整います。
ねんきんネットで将来の受給見込み額を確認する
退職後の年金切り替え手続きが終わったら、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で、現時点の年金受給見込み額を確認しておくことをお勧めします。ねんきんネットでは、これまでの加入記録と将来の見込み受給額を試算できます。
起業後の生活設計を立てるうえで、将来の公的年金がどの程度になるかを把握しておくことは、事業計画の前提条件になります。ねんきんネットにアクセスして、受給見込み額を一度確認してみてください。起業後の収入設計の根拠になります。
北川さんの体験談
大手メーカーで営業を12年続けた北川さん(42歳)は、退職まで3ヶ月というタイミングで起業18フォーラムに参加しました。
「社会保険の切り替えが全くわからなくて、退職を後回しにしていました。手続きが怖くて、起業の準備に集中できていなかった」と北川さんは当時を振り返ります。
転機になったのは、起業18フォーラムの勉強会で、同じ大企業を退職して独立した先輩会員の話を聞いたときです。「健康保険も年金も、期限と順番さえ知っていれば半日で終わります。怖くない」という一言を聞いて、北川さんは翌週に市区町村窓口と勤務先の健康保険の保険者への手続きを一度で済ませました。
フォーラムの個別相談では、手続きの段取りを整理したうえで「次は開業届、その次は青色申告承認申請書」と順番を確認しました。一段ずつ上がればいいという感覚をつかんだ北川さんは、退職後の準備を着実に進め、起業から12ヶ月目には取引先から名指しで「北川さんにお願いしたい」と声がかかるようになりました。手続き不安が解消したことで、起業準備そのものに集中できた結果でした。
よくある質問と回答(退職後の社会保険切り替え)
Q.退職後すぐに開業届を出す場合、健康保険はどうすればいいですか?
個人事業主として開業しても、自動的に国民健康保険に切り替わるわけではありません。退職後の健康保険は、任意継続・国保・家族の扶養のいずれかを自分で選んで手続きする必要があります。開業届の提出とは別の手続きです。
Q.国民年金の保険料が払えない期間はどうすればいいですか?
退職後に収入が下がる時期は、国民年金の免除・猶予制度を利用できます。所得が一定以下の場合、全額免除・半額免除・4分の1免除・4分の3免除から選べます。免除を受けた期間は将来の年金額に一部反映されるため、「未加入」よりも「免除申請」を選ぶほうが合理的です。市区町村の年金窓口または日本年金機構の事務所で申請できます。
Q.任意継続の申請を20日以内に忘れた場合はどうなりますか?
任意継続の申請期限(資格喪失日、つまり退職日の翌日から20日以内)を過ぎると、原則として任意継続は選べなくなります。その場合は国民健康保険への加入か、家族の扶養に入る選択肢を検討してください。

退職後の手続きは、期限と順番を押さえれば一度で終わります。ねんきんネットで受給見込み額を確認するところから始めてみてください。それが、起業準備を前に進める最初の一歩になります。
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