起業に向く人・向かない人はどう見分ける?|性格より順番で決まる理由

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

性格診断で「起業に向かない」と出て落ち込んでいます。慎重で内向的で、リーダー気質でもありません。こういう性格でも起業準備は進められるものでしょうか?

起業前質問集

● 回答

起業に「向いている性格」があるという考えは、部分的にしか当たっていません。診断結果で気持ちが沈むのはよく分かります。ただ、フォーラムで長く会員さんを見てきて言えるのは、続いている人の共通点は性格ではなく「準備の順番を守れたかどうか」だという事実です。性格の議論の前に、まず順番の話から一緒に見ていきましょう。

会員の円城寺さんも同じ入口でした。40代の総務職で、自己申告では「慎重すぎて動けないタイプ」。MBTIで内向型・計画型と出て、起業講座に申し込むかどうかで半年悩んだ方です。見えてきたのは、フォーラムの勉強会で同じく慎重派の先輩会員が、性格を変えずに月商を伸ばしていた事実でした。「性格を直さなくていい」と分かった瞬間、翌週から動き始めています。

「性格で起業の成否が決まる」というエビデンスは実は薄い

まず前提を1つ整理させてください。MBTIやその他の性格類型で「ESTPが起業家型」「INFJは向かない」といった解説はネット上に溢れています。ただ、これらは診断サービスの解説ページや個人ブログの見立てが多く、性格タイプと起業の継続率・売上を統計的に結びつけた学術的な根拠はほとんど示されていません。

心理学の分野ではMBTIそのものへの再現性の指摘もあります。数週間から数か月の間隔で再受検すると、4割から7割の人が違うタイプに分類されるという報告があるほどです。つまり「あなたは起業に向かないタイプ」という診断結果自体が、そもそも安定した判定ではありません。

一方で、日本政策金融公庫が2025年12月に公表した「2025年度新規開業実態調査」では、開業者の97.6%が勤務経験者で、平均年齢は43.9歳、女性の割合は25.7%と過去最高でした。派手なリーダー気質の若者だけが開業しているわけではなく、勤め人としての経験を積んだ慎重な人たちが、多数派として実際に開業している姿が見えてきます。

「向く/向かない」より「準備の順番」で見る4ステージ

拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、起業準備を性格でなく時間軸で分けて考えることを紹介しています。半年(180日)を4つのステージに区切り、順番どおりにこなせばリスクを最小化できる、という考え方です。ステージが飛ぶと、性格が合っていても壁にぶつかります。逆に順番さえ守れば、性格はほとんど関係なくなります。

  • ステージ①(1カ月目)マインド:
    自分の強みを洗い出し、生活ログをつけ、周囲のドリームキラー(否定してくる人)と距離を置く時期です。慎重な人はここが得意です
  • ステージ②(2カ月目)商品づくり:
    100点を狙わず20点でお客様1人に届ける仮商品を作り、最初の1円を受け取る時期です。内向型でも一歩ずつ試せます
  • ステージ③(3〜4カ月目)マーケティング:
    価格を決め直し、誰に届けるかを絞る時期です。分析が好きな慎重派に向く工程です
  • ステージ④(5〜6カ月目)販売力・信用力:
    リピートと紹介の設計、信用の蓄積に切り替える時期です。人前で目立たなくても回せます

この順番を見てもらうと分かるとおり、ステージ①〜③のうち3ステージは「1人でこつこつ」の作業です。人前でプレゼンする力や強いリーダーシップが要る場面は、実は6カ月のうち最後の1〜2カ月に限られます。「性格が向かない」と感じている多くの人は、まだ着手していないステージ④の姿を先取りして自分に不合格を出してしまっています。

慎重派だった円城寺さんの8カ月=単価が変わった話

円城寺さんの話に戻します。動き出してからの半年は、勉強会で聞いた4ステージをそのまま順番に踏みました。1カ月目は生活ログと本屋リサーチ、2カ月目に元同僚1人へ月3千円の「総務書類整理サポート」を提供して最初の売上を受け取っています。ここまでは自宅で完結する作業ばかりで、性格的な負荷はほとんどありませんでした。

問題は3〜4カ月目の価格設定でした。円城寺さんは「安いほうが選ばれる」と考え、書類整理1件を5千円に据え置いていました。手数だけが増えて、月末の請求書を書きながらため息をつく日が続いたそうです。フォーラムの個別相談で「安売りは慎重派の逃げ場になりやすい」と指摘され、価格帯を月額の顧問契約型に組み替えたのが6カ月目でした。

8カ月目に入ったとき、単価は1件5千円から月額2万5千円へと変わっていました。お客様の数は3人のまま、売上は月7万5千円に到達しています。円城寺さん本人は「性格は何も変わっていないのに、値づけの前提が変わった」と話してくれました。慎重に組み立て直したことが、そのまま数字に反映された形です。

「向いている性格」を探す前に確認したい3つの質問

ここまでの話を、あなた自身の判断材料に落とし込みます。性格診断の結果に振り回される代わりに、次の3問を自分に投げてみてください。

  • 質問1:
    今の自分は4ステージのどこにいるか。ステージ①(マインド)にすら入っていないなら、性格の話は早すぎます
  • 質問2:
    ステージ①〜③(3人以下・自宅で完結)の工程に耐えられないと感じているか。ここが無理なら性格の問題です。ここが平気なら性格の問題ではありません
  • 質問3:
    ステージ④(販売・信用)の恐れを、まだ来ていない段階で先取りしていないか。多くの人がここで止まります

3問とも「ステージ①なら平気」と答えられたなら、あなたは性格に関係なく準備を始められる位置にいます。逆に「ステージ①のマインド整理すらつらい」と答えるなら、それは性格の問題ではなく生活サイクルの問題かもしれません。睡眠と生活リズムを整えてから戻ってきて構いません。

ポイント よくある質問

性格と起業の関係をめぐる代表的な4つの疑問

起業前質問集

Q.MBTIで「起業家型」でないと不利ですか?

不利にはなりません。ESTP・ENTJが「起業家型」と紹介されがちですが、性格タイプと事業の継続率を結びつけた学術的な根拠はほとんど示されていません。5年以上事業を続けている方のタイプ分布は幅広く、INFJ・INTP・ISTJが専門領域で続けている例も珍しくありません。

Q.内向型は営業が苦手だから不利ですよね?

内向型でも1対1の深い関係づくりは得意な方が多く、リピート型・顧問契約型のビジネスと相性がいい傾向があります。派手な広告や飛び込み営業でなく、既存顧客を深く支えるスタイルなら、内向型は強みに変わります。

Q.慎重すぎて決められないのですが、どう克服しますか?

克服する必要はありません。決断できないのは情報が足りない証拠ですから、ステージ①(マインド)で自分の強みを言語化し、ステージ②で最初の1円を受け取ることを先に済ませます。手を動かした後は、慎重さは検証力に変わります。

Q.リーダー気質でなくても事業は回せますか?

1人事業なら回せます。人を雇わない前提で仕組み化すれば、リーダー気質は要りません。拙著でも「知・人・金」の3チカラのうち「人」は「引っ張るリーダー」でなく「深い1対1の関係を10人持つこと」で紹介しています。

ここまでの話を「今日の一歩」に落とし込みます。性格タイプを気にする代わりに、次の一歩をどこに置くかを1つだけ決めてください。今日できることは、4ステージのうち「自分は今どこにいるか」を1つ選ぶだけで十分です。選び終わったら、そのステージの作業を来週から始めればいいだけです。

不安を感じているのは、それだけ真剣に自分の人生を考えている証拠です。その慎重さは、起業準備において強みになります。

診断結果に上書きされる前に、順番のほうを先に決めておきましょう。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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