記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
働きながらいくつか資格を取ってきました。いざ起業準備を始めようとすると、資格はあるのに「で、何を売ればいいんだろう」となってしまい、商品が決まりません。
有資格者が、自分の資格を起業の商品に変えるには、どんな手順で考えればいいのでしょうか?

● 回答
資格があるのに商品が決まらない。これは有資格者にとても多い悩みです。原因ははっきりしています。資格を「商品そのもの」だと思ってしまっているからです。資格は商品ではなく、商品を作るための材料の一つにすぎません。
ここで一つ整理しておきます。資格には、その仕事を有資格者しかできない業務独占資格(弁護士や公認会計士など)と、名前を名乗れるだけの名称独占資格(社会福祉士など)があります。名称独占の資格は、資格がなくてもその業務自体はできるものが多くあります。
実際、日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業動機に「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」を挙げた人が46.0%にのぼりました。資格は経験と一緒に生かされるもので、資格そのものより何を提供するかのほうが大事だということです。
STEP1:資格を「強み」の一つに格下げする
拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、商品は「好きなこと」「強み」「求められていること」の3つが重なるところで生まれると紹介しています。資格は、このうち「強み」の一部分でしかありません。
まず、資格を主役の座から下ろしてください。「○○の資格を売る」ではなく、「○○の資格も使って、誰かの何を解決するか」と問い直します。主役は資格そのものではなく、お客さんの困りごとのほうです。ここを取り違えると、何を売ればいいか永遠に決まりません。
STEP2:3つのゾーンで自分の位置を見る
本書では、重なり方によって3つのゾーンができると説明しています。「好き」と「強み」だけが重なって需要がないのは自己満足ゾーン。「強み」と「需要」だけが重なって好きでないのは生き地獄ゾーンです。資格を取っただけで好きでも需要もない仕事を始めると、稼げても続かない生き地獄ゾーンに入ってしまいます。
たとえば、簿記の資格を持つAさんと、同じ簿記資格のBさんがいたとします。Aさんは「資格があるから記帳代行をやる」と決めました。けれど数字仕事が好きではなく、半年で疲れ果てました。これが生き地獄ゾーンです。
一方Bさんは「数字が苦手な個人事業主の、確定申告の不安をほぐす」ことが好きでした。同じ資格を持っていても、好きが重なっているBさんの商品だけが長く続きます。稼げるかどうかより、続けられるかどうかで商品を選んでください。
STEP3:好き・強み・需要が重なる一点を言葉にする
3つが重なる場所が、本書でいう起業可能ゾーンです。資格という「強み」に、自分が苦にならない「好き」と、お客さんの「求めていること」を掛け合わせます。資格の名前を一度紙の端に追いやり、真ん中に「自分が助けたい人」を書いてから、その人の悩みを3つ書き出してみてください。
会員さんの飯田さん(仮名・40代後半・人材会社の営業職・既婚)は、キャリアコンサルタントの資格を取ったものの「資格を活かして何を売るか」で1年止まっていました。自己流で資格講座の延長のような相談メニューを作っては、誰にも響かず空回りしていたそうです。資格の説明から事業を考え始める癖が、空回りの原因でした。
フォーラムの勉強会で3つのゾーンの話を聞き、飯田さんは2点を資格に重ねました。「人の話を聞くのが昔から好き」という点と、「営業で転職者を多く見てきた」という点です。出来上がったのが、40代で転職に迷う会社員向けの相談サービスでした。
12ヶ月目には、会社に勤めながら月7万円になりました。あなたの資格に「自分が苦にならず続けられること」と「目の前の誰かが困っていること」を一つずつ書き足して、三つが重なる一文を作ってみてください。
資格は、その一文を支える材料として初めて力を発揮します。資格の数を増やすより、今ある資格を誰の何に重ねるかを決めるほうが、商品はずっと早く決まります。

あなたの資格は、誰のどんな困りごとと重ねれば商品になりますか。その問いに一文で答えられたとき、売るものはもう決まっています。
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