住宅ローンと教育費がある40代、起業の失敗で家族の生活を壊さないか不安。準備はどう進める?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

40代の会社員です。住宅ローンがあと20年残っていて、子どもの教育費もこれからピークを迎えます。起業に少し興味はあるのですが、もし失敗したら家族の生活ごと崩れてしまうのではと考えると、準備の一歩すら踏み出せません。

この年代でもリスクを抑えて起業準備を進める方法はあるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

「失敗したら家族の生活が崩れる」と思っていませんか。実は、その怖さの正体は起業そのものではなく、最初から大きなお金をかける起業を想像してしまっていることにあります。準備のやり方しだいで、ローンや教育費を抱えたままでもリスクはかなり小さく抑えられます。

これまで数多くの会社員の起業準備に立ち会ってきました。40代で家計の固定費が重い方ほど、この「全部を賭ける」イメージから自由になれず、入口で止まってしまいます。順番に解きほぐしていきましょう。

怖いのは起業ではなく「危険な状態を知らないこと」

拙著『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』に「本当のリスクは、危険な状態を知らないことだ」という考え方が出てきます。勢いよく会社を辞めて全財産を注ぎ込み、それから初めて市場の反応を知る。これがいちばん危ない進め方です。

逆に言えば、危険な状態をあらかじめ見えるようにしておけば、起業は急に怖いものではなくなります。会社員のうちに、辞めずに小さく試して反応を確かめる。ここで「いける」「まだ早い」を判断してから次へ進めば、家計の土台が崩れる前に方向修正できます。

住宅ローンや教育費という固定費は、たしかに重荷です。ただ、その重荷は「だから動けない」理由ではなく、「だから大きく賭けない」設計を選ぶ理由になります。怖さを消すのではなく、怖がるべき場所を正しく知ることが先です。

3つのチェックで起業ネタを最初にふるいにかける

同書では、起業ネタを次の3点でふるいにかける方法を紹介しています。準備の入口でこれを通すだけで、家計を脅かす危ない案がほぼ落ちます。

起業ネタを通す3つのチェック

  • 一人で始められるか:
    人を雇ったり仲間と共同で立ち上げたりせず、まず自分ひとりで動き出せる規模かどうか
  • 一人で続けられるか:
    会社員を続けながら、夜や週末の時間で無理なく回せる作業量かどうか
  • 大きなお金がかからないか:
    店舗・在庫・設備など、失敗したら取り返しのつかない先行投資が必要ないかどうか

この3つ目が、ローンと教育費を抱えた40代にとっていちばん大事な関門です。気になる起業アイデアが浮かんだら、「これは大きなお金がかかるか」をまず自問してください。かかると感じた案は、設備のいらない形に作り替えるか、いったん横に置きます。

実際の開業費用は、思っているより小さい

「起業にはまとまった資金が要る」という前提も、数字で見ると印象が変わります。日本政策金融公庫の「2024年度新規開業実態調査」では、開業費用の中央値は580万円で、500万円未満で開業した人が41.1%を占めました。そのうち250万円未満が20.1%です。

もちろん飲食店や製造業のように設備が必要な業種は別です。ただ、会社員の経験や知識を商品にするノウハウ型・サービス型なら、開業費用はこの中央値よりさらに小さく収まります。先ほどの「大きなお金がかからないか」を満たす案を選べば、家計に与える影響は数万円から十数万円の世界に収まることも珍しくありません。

家族の生活が崩れるほどのお金を、起業準備に投じる必要はありません。むしろ会社員でいるうちは、毎月の給与という土台がある状態で試せます。この恵まれた条件を使わない手はないでしょう。

浜田さんが踏み出せた転機

起業18フォーラム会員の浜田さん(仮名・40代後半・メーカー勤務)も、まさに同じ不安を抱えていました。住宅ローンが残り、中学生と高校生の教育費がこれから重くなる時期で、相談に来た当初は「失敗したら家族を路頭に迷わせる」と顔をこわばらせていました。

最初は自己流で動こうとして、商品開発の本を何冊も読み、いきなり数十万円の在庫を仕入れる計画を立てていました。けれど一歩も進めず、半年が過ぎていたそうです。転機は、勉強会で「大きなお金がかからないか」のチェックを知り、自分の計画が真っ先にそこで引っかかると気づいたことでした。

そこから浜田さんは在庫を持たない方向に切り替えました。長年の品質管理の経験を活かし、中小メーカー向けに改善の相談に乗るサービスを、勤務を続けながら週末だけで始めたのです。開業にかけたお金は名刺とオンライン会議ツールの数千円だけでした。最初の依頼は知人からの1件でしたが、起業準備から10ヶ月目には月収8万円の副収入が安定し、今も無理のないペースで続けています。

家計を崩さずに済んだのは、賭ける金額を最初に小さく設計し直したからでした。

家計を守りながら進める準備の型

  • 会社員の給与という土台を残したまま、辞めずに小さく試す
  • 設備・在庫・先行投資のいらないノウハウ型・サービス型から入る
  • 知人1人を最初の客と想定し、反応を見てから広げる
  • かけてよい上限金額を先に決め、その範囲だけで動く

こうして上限を先に決めておけば、たとえうまくいかなくても、失うのは決めた範囲の金額と時間だけで済みます。家族の生活そのものが揺らぐことはありません。起業準備に出してよい上限金額を、月々のお小遣いの範囲で先に決めてください。

40代は、職業人としての経験が最も厚くなる年代です。その経験は、設備をそろえなくても売れる立派な商品になります。怖さで止まってしまうのは、いちばんもったいない選択でしょう。

起業の失敗が怖い人へ|辞める前に決めておく3つの撤退ライン
起業に興味はあるけれど、失敗したら家族の生活まで巻き込んでしまう。そう考えると、どうしても最初の一歩が踏み出せ

今日できることは、気になる起業アイデアを一つ書き出して、「これは大きなお金がかかるか」と自問してみるだけで十分です。そこから家計を守る設計が始まります。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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