記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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「小笠原で起業したい」という夢は、現実的でしょうか? 竹芝桟橋から船で約24時間、6〜7日に1便という「日本でもっとも遠い有人島」である小笠原諸島は、移住起業の難易度が最も高い場所のひとつです。
一方で、世界自然遺産・手つかずの自然・観光と移住人気の高まり。この条件を持つ島だからこそ、特定のビジネスは成立します。あらかじめ準備できる現実的な手順を整理します。
住民基本台帳によると、小笠原村の人口は2024年4月時点で約2,493人(父島約2,072人、母島約421人)です。2024年には転出超過が続いており、人口の維持が課題になっています。東京都と国はこの状況を受けて、島への移住・起業支援策を複数整備しています。
小笠原諸島で起業するための前提を知る

小笠原諸島(父島・母島)は、東京都に属しながら、竹芝桟橋から定期船おがさわら丸で約24時間かかる場所にあります。飛行機の定期便はなく、6〜7日に1便という運航スケジュールが、島での生活とビジネスの基本条件を決めます。
小笠原での起業は「物流・仕入れの遅延・本土への帰省コスト」を前提に設計する必要があります。在庫を抱えるビジネスより、知識・スキル・サービスを商品にするノウハウ型が成立しやすい理由がここにあります。
島のインフラは整っており、インターネット環境もあります。観光業・飲食・ダイビング・ガイド業などが島内の主要産業です。移住者向けの賃貸物件は少なく、住む場所の確保が最初の課題になります。
小笠原で成立しやすいビジネスと難しいビジネス

小笠原での起業を検討する際、まずビジネスの適性を確認しましょう。
- 成立しやすいビジネス:観光ガイド・ダイビング・シーカヤック・民宿・体験型観光/島特産品(島レモン・ラム酒・観光加工品)の島外販売/オンライン提供できる知識サービス(教える系・コンサル)
- 難しいビジネス:在庫を大量に必要とする小売業・仕入れに鮮度が求められる飲食(食材の船便依存)・頻繁な本土移動が前提のサービス業
小笠原に来る観光客は年間約2万4,000〜2万5,000人(コロナ前2019年度実績)で、旅行者1人あたりの滞在期間と消費単価が高いのが特徴です。この高単価層に向けた体験型・滞在型のサービスは、島の特性を最大限に活かせます。
起業18フォーラムの会員さんで、オンライン完結の英語指導サービスを育て、小笠原移住後も同じクライアントと継続できた例があります。島に渡る前から「本土に依存しない収入の柱」を作っておくことが、移住起業を安定させる核心です。
利用できる支援制度・補助金

小笠原諸島での起業には、利用できる支援制度が複数あります。
東京都 TOKYO ISLANDHOOD with STARTUPS
東京都による島しょ地域スタートアップ支援プログラムで、父島・母島も対象です(2025年度採択情報あり)。専門人材による伴走支援とネットワーク構築支援を提供しており、支援期間は採択から令和8年3月まで。移住前の準備段階から申請を検討できます。
小笠原敏晶記念財団 インキュベンチャー助成
インキュベーション助成(申請日より3年以内に起業を目指す個人・グループ)は最大500万円、ベンチャー企業助成(設立5年以内)は最大2,000万円。財団名の「小笠原」は設立者(小笠原敏晶氏)の名前に由来するもので、小笠原諸島とは直接の関係はありません。日本全国の起業家・ベンチャー企業を広く対象とした民間助成制度であり、島内事業に限定されていませんが、要件を満たせば小笠原で起業する際にも申請可能です。
小笠原諸島振興開発特別措置法に基づく支援
小笠原諸島は「特定有人国境離島地域」には指定されていないため、有人国境離島法に基づく内閣府の輸送コスト支援や雇用機会拡充支援の対象外となります。ただし、小笠原諸島には独自の「小笠原諸島振興開発特別措置法」があり、国土交通省が策定する振興開発計画のもと、インフラ整備・産業振興・定住促進のための事業が推進されています。起業・事業展開に活用できる補助金・支援制度の詳細については、小笠原村役場(産業観光課)または東京都島しょ振興公社に直接問い合わせることをお勧めします。
在職中からできる準備の手順

拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』の「受け皿先行の発想」を、小笠原移住起業に当てはめるとわかりやすくなります。島に渡ってから「さあ何をしよう」では遅すぎます。島に渡る前に「自分は何屋さんか」という受け皿を作っておくことが、最初の挫折を防ぎます。
- STEP 1:年に1〜2回の短期滞在で島を体験し、どのビジネスが成立しそうかを確かめる
- STEP 2:島へ渡る前にオンラインで収入を得られるサービスを小さく始め、島に渡った後も収入が続く状態を作る
- STEP 3:小笠原村役場・東京都島しょ振興公社・TOKYO ISLANDHOODに問い合わせ、支援制度の最新情報を確認する
- STEP 4:住む場所の情報収集(賃貸物件は限られるため、島の知人を作って情報を得る)
「島に渡ってから考える」より「島に渡る前から準備する」方が成功率は上がります。小笠原での起業で最も大切なのは、本土に依存しない収入の柱を事前に作ること。それが整ってから移住を判断するのが、低リスクで夢を実現する順番です。
よくある質問

Q.小笠原の物件情報はどこで調べればよいですか?
小笠原村役場・東京都島しょ振興公社(東京愛らんど)・小笠原村観光局に問い合わせるのが確実です。民間不動産サービスでの情報は限られており、現地のネットワーク(島の人からの紹介)が最も有効です。
Q.島内の通信環境はどの程度ですか?
父島にはインターネット環境が整っており、リモートワークやオンラインサービスの提供は可能です。ただし本土と比べると通信速度の差がある場合があるため、渡航前に現地在住者のブログや移住者コミュニティで最新情報を確認することをお勧めします。
まとめ:夢より先に、受け皿を作る

小笠原諸島での起業は、日本でもっとも挑戦的な移住起業のひとつです。だからこそ、あらかじめ準備できることはすべて準備してから渡航する計画が重要です。

島での体験を重ねながら、本土に依存しない収入の柱を移住前から育て、準備が整ってから移住を判断する。この順番が、夢を現実に変える最も確実な道です。
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