記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
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● 質問
30代後半のメーカー営業事務、独身です。最初はクローゼットの不用品をメルカリで月1〜2万円分売る範囲で始めましたが、半年経った頃から仕入れた商品も出品し始めて、最近は月8万円ほどの売上が安定してきました。
本人としては「不用品販売の延長」のつもりですが、知人から「これはもう継続販売だから開業届を出すべき」と言われ、判断がつきません。どこに境目のサインが出るのでしょうか?

● 回答
「自分はまだ不用品販売の範囲だから関係ない」と思っていませんか? 実はその思い込みが、開業届の提出時期と特商法表示の整備を後ろ倒しにする最大の理由です。不用品販売と継続販売の境目は、売上金額より「転売目的で仕入れた商品を、反復継続して販売しているかどうか」のほうで判断されます。
境目のサインは売上額より仕入目的と反復継続性
消費者庁の「特定商取引法ガイド」では、インターネットで通信販売を行う場合、個人でも「販売業者」に該当すると、広告表示や誇大広告の禁止などの義務が発生すると整理されています。販売業者かどうかの判断は売上額の閾値ではなく、「営利の意思を持って、反復継続して取引を行っているかどうか」という考え方です。そして営利の意思の有無は、本人の意思にかかわらず客観的に判断されます。
具体的には、消費者庁の「インターネット・オークションにおける『販売業者』に係るガイドライン」では、「転売目的で商品の仕入れを行っている場合は、営利の意思があると判断される」と明記されています。出品数の数値目安(全カテゴリー共通で過去1ヶ月に200点以上など)を下回っていても、転売目的の仕入れを行いながら不用品処分の頻度を超えて出品を繰り返している場合は、販売業者に該当する可能性が高いとされています。月8万円の売上が安定している状況で、かつ仕入れた商品を継続出品しているという事実がある以上、売上額の多寡にかかわらず開業届と特商法表示の準備を進めるタイミングと考えてよい段階です。
- 転売目的で仕入れた商品を継続的に出品している
- 同一カテゴリの新品商品を反復出品している
- 営利目的で商品を仕入れ、継続的に利益を得ている
- 副業による年間所得(売上から経費を引いた額)が20万円を超える見込みがある
- 仕入れ用の口座と生活用の口座が混ざっている
起業18フォーラムで境目を見極めた友里さん
起業18フォーラムの友里さん(仮名・30代後半・女性・メーカー営業事務・独身・本業勤続8年)も、同じ局面で迷ったかたです。本業の月収は28万円、家賃と生活費を引いて手元に残るのが5万円程度の状況でした。最初の半年は「クローゼットの不用品販売」で月1万円台の収入があり、特に手続きの必要性も感じていませんでした。
転機が訪れたのは7ヶ月目です。友人の引っ越しに同行して「ついでに自分のサイトで売ってあげる」と引き受けたところから、仕入れて売る行為が始まりました。8ヶ月目には月5万円、10ヶ月目には月8万円に届きましたが、本人は「不用品販売の延長」と認識していたため、開業届も特商法表示も後回しでした。
そこで起業18フォーラムの勉強会で「継続販売の境目」を学び、自己流の判断を一度ゼロから見直しました。境目を判断する指標として「①売上額」より「②仕入目的の有無」「③販売の反復継続性」のほうが重要だと知り、自分の出品履歴を半年分振り返ったところ、転売目的の仕入れを継続していた事実が明らかになり、継続販売の領域に踏み込んでいたことが見えてきました。
そこから開業届を税務署に提出し、特定商取引法の表示は、消費者庁のQ&Aに基づき住所・電話番号の表示要件を満たせる連絡体制(一定の要件を満たすプラットフォームやバーチャルオフィスの活用を含む)を確認したうえで整えました。本業の勤務先に説明できるよう、就業規則と住民税の扱いも確認し、給与以外の所得について選択できる場合は確定申告で「自分で納付」を選ぶ形にしました。境目を見極めて整備したあとは、運営が落ち着いて、18ヶ月目には月12万円の安定売上に届いたとのことです。
境目を見極めるための4つの判断
拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』の中で、勤務先に活動が知られないようにするには「自分で話してしまうこと」と「住民税の経路」の2つに気をつけるべき、という考え方を紹介しています。継続販売に踏み込んだ瞬間にやるべき手続きは、この2つを土台に進めると整理しやすくなります。
具体的な判断は次の4つです。①開業届を税務署に提出する、②特商法表示の住所・電話番号要件を満たせる販売場所や連絡体制を確認する(消費者庁のQ&Aに基づき、一定の要件を満たす場合はプラットフォームやバーチャルオフィスの住所・電話番号での表示も認められます)、③仕入用の口座を生活費の口座と分ける、④給与以外の所得に対する住民税の納付方法を確定申告時に確認する、という順番で進めていきます。これらの手続きを早めに整えておくことで、売上規模が拡大した段階での運営が安定します。
- 開業届を税務署に提出する(転売目的の仕入れ販売を継続しているタイミング)
- 特商法表示は住所・電話番号要件を確認し整備する(一定の条件を満たすプラットフォームやバーチャルオフィスの活用も可)
- 仕入用の口座を生活費と分ける(家計の混在を避ける)
- 給与以外の所得に対する住民税は、確定申告時に納付方法を確認する
- 本名でなくビジネスネームを使う運用に切り替える

不用品販売と継続販売の境目は、自分から見えにくい場所に出ます。今夜、過去半年の出品履歴を見返して、「転売目的で仕入れた商品を継続的に出品している月があるかどうか」を確認してみてください。出品数の多寡より、仕入れ目的と反復継続性の有無が判断の核心です。
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